沖縄民謡グループ「うないぐみ」と坂本龍一がコラボレーション|MUSIC
MUSIC|沖縄民謡グループ「うないぐみ」と坂本龍一がコラボレーション
辺野古への想いを込めたチャリティソング「弥勒世果報(みるくゆがふ)-undercooled」
坂本龍一と沖縄民謡グループ「うないぐみ」がコラボレーション。2004年に坂本が発表した「undercooled」に歌詞をつけたチャリティソング「弥勒世果報(みるくゆがふ)-undercooled」が10月7日(水)にリリースされ、配信は9月16日(水)からスタート。アーティスト収入はすべて「辺野古基金」へと寄付される。
Text by YANAKA Tomomi
Coccoはアートワークで、UAも“つぶやき”で参加
「弥勒世果報(みるくゆがふ)-undercooled」の原曲は、坂本龍一が2004年に発表したアルバム『CHASM』のなかに収録された「undercooled」。9.11アメリカ同時多発テロやその後のイラク戦争、そして世界各地で頻発する軋轢に「いまの世界はまるで頭に血が上った状態」と憂い、平和を願う教授が“冷やしたりない”という想いを込めて制作したものだ。
そして数年前、坂本龍一のアルバム『ONE GEO』や『BEAUTY』、さらにワールドツアーなどにも参加してきた旧知の古謝美佐子が「『undercooled』に沖縄の歌詞をつけて唄いたい」と教授に依頼。坂本の病気療養を経て、コラボレーション作品が完成した。
「『undercooled』という曲は2003年、アメリカが大量破壊兵器があるという虚偽の理由でイラクに攻め入ったころ、もっと頭を冷やせ、という気持ちを込めて作った曲です。昨年、この曲に歌詞がついた録音が送られてきました。何度もそれを聴き、ぼくになにができるかを考えはじめていたころ、ガンに罹患していることがわかりました。1年が過ぎ体力も少し回復してきたので、歌を引き立たせる最小限の音を入れることにしました。また、UAさんには『つぶやき』を、Coccoさんには、カバーのためにご自身の絵を快く提供していただきました。ぼくも、うないぐみのみなさんもアメリカ軍基地の辺野古移設で沖縄の海と貴重な生態系が壊されることに反対ですので、この曲の売上げからレーベルサイドの手数料や諸経費をのぞいたアーティストの収入を寄付することにします」と、坂本氏は語る。
歌うのは古謝を中心に、おなじく初代ネーネーズの宮里奈美、比屋根幸乃にくわえ、かねてから親交のあった島袋恵美子の4人が2014年に結成した「うないぐみ」。「うない」とは沖縄語で“姉妹”を指す言葉だという。
あらたに沖縄語の歌詞が取り入れられた楽曲は、「弥勒世果報(みるくゆがふ)」と命名。沖縄古来の信仰である「弥勒神がもたらす理想的で平和な世の中」という意味が込められている。
1番のボリュームが5小節あまりと短く、それゆえに長年のキャリアをもつ4人の歌声が遺憾なく発揮されている本作。12番までのシンプルで呪術的なメロディが繰り返されることで、ひとつの音楽世界がつくりあげられた。また間奏にはUAとその子どもたちが“つぶやき”で参加。人間と宇宙の物語をかわいらしくおしゃべりしている。
ジャケットのアートワークには、沖縄出身のCoccoが作品を提供。幻想的な世界が描かれている。本作は、先のとおり、売り上げからレーベルサイドの手数料や諸経費をのぞいたアーティスト収入を「辺野古基金」に寄付される。
あくまでも冷静(undercooled)に優しく、かつ強く、音楽と歌の力で平和な沖縄、平和な日本、そして戦争の無い世界の実現を希求した「弥勒世果報(みるくゆがふ)-undercooled」。宇宙的な広がりをもつ音楽は、私たちの心に温かく響く。
commmons/エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ
Tel. 0570-064-546(平日 11:00~18:00)
http://commmons.com