iPad for Creatives|クリエイティブディレクター 山田 遊 編 iPadの本質はゲームにあり!
iPad for Creatives
クリエイティブディレクター 山田 遊 編
iPadの本質はゲームにあり!(1)
インテリアショップ『IDEE』のバイヤーとして2001年キャリアをスタートして以来、プロダクツのみならずアートやイベントプロデュースなど広くあたらしいクリエイティブを模索してきた山田氏が語るiPadの可能性とは?
文=オウプナーズ写真=西田周平
個人で使用しているぶんにはiPadの本質に触れていない
じつは買ったのはごく最近なんです。仕事ではMac Book Airを使用していますし、携帯電話はiPhoneなので、iPadを持つ意味ってなかったんですよね(笑)。スケジュール管理もまだ手帳に書いていますし、プレゼンテーションはしますけど、打ち合わせやプライベートレベルですね。
この先iPadを仕事に活かそうとはしないと思う。“しない”というか、そもそもiPad自体がそれを目的として作られたものではないと思うんです。
──iPadはビジネスユースではない?
iPadとパソコンではそれぞれに対する向き合い方がちがうんです。ノートPCを開いてその前に座る従来のスタイルでは、スクリーンもキーボードもマウスも完全にユーザーひとりにしか向かないんです。他者がそれを操作することは基本的にはできませんよね。iPhoneにしてもあのサイズでは基本的に向き合うのは一方向しかない。
かたやiPadはフラットにしたことによってみんなに向かって開いているし、ぐるぐるまわしても自動的に画面が観るひとのほうを向くようになっているので、テーブルに置いて鍋のように一緒につつくことができる。僕はiPadって、鍋やいろりのようにみんなで囲んで楽しむことを目的にしているものだと思うんですよ。
これまでの「パーソナル」主流から「シェアリング」へと向かっているのではないでしょうか。あのサイズはひとりで見るのに見やすいからではなく、たとえば電車にふたり並んで座ったときに一緒に見るためではと。
僕はエンターテイメントに特化したほうがiPadはおもしろくなると思う。動画なんてPCとは比べものにならないほどなめらかだし、画面もフルスクリーンで見れる、そして音質もすごくいい。これはビジネスユース向きではないですよ。ビジネスで使用するといってもスケジュール管理とプレゼンぐらいでしょう?
iPad for Creatives
クリエイティブディレクター 山田 遊 編
iPadの本質はゲームにあり!(2)
この「Air Hockey Gold」こそがiPadの真実
──お薦めアプリはなんですか?
「太鼓の達人プラス」「Air Hockey Gold」「Dog Piano Jr」「Where's Wally? The Fantastic Journey」……すべてゲームです(笑)。挙動がいいので動画を見るにしてもそうですが、ゲームも快適にプレイすることができます。「Dog Piano Jr」はあらゆる気分の犬の鳴き声が搭載されていて、これでいつもうちの犬と遊んでいます。本当にびっくりするんですよ(笑)。「Where's Wally? The Fantastic Journey」は、ひとりでプレイすることもできますが、みんなでプレイするとこれが案外盛り上がるんですよ。誰よりも先に見つけたときの爽快感と言ったら(笑)!
太鼓の達人プラス
国民的音楽ゲーム「太鼓の達人」(バンダイ)がiPadアプリに登場。ヒップホップグループ RIP SLYMEとコラボレーションし、特別制作された楽曲が無料追加された。
カテゴリ|ゲーム
価格|無料
23.1 MB
言語|日本語
©2010NBGI
Dog Piano Jr
その名の通り鍵盤をたたくと犬の鳴き声がするピアノ。そのくだらなさにハマるひと多数。同シリーズの猫版「Cat Piano Jr」とともに犬猫バンド結成も夢じゃない。
カテゴリ|ミュージック
価格|無料
3.9 MB
言語|英語
※日本語非対応
© 2009 George Talusan and Hilary Street
Where's Wally? The Fantastic Journey
誰もが一度は夢中になった大人気シリーズ「ウォーリーをさがせ!」がiPadアプリに登場。多彩な機能でウォーリーの大冒険がよりカラフルに、ダイナミックに甦る。
カテゴリ|ゲーム
価格|350円
138 MB
言語|英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語 ※日本語非対応
© Ludia
そして、この「Air Hockey Gold」こそがiPadの真実だと思うんです。こうして体面に座っている相手とひとつの画面にそれぞれ指を置いて遊ぶことができる。見ている対象も使っているものも完全にひとつであり、それをふたりで共有していますよね?
iPadの真価って、このようにひとつの画面を“シェアする”ことにあるんじゃないかと思うんです。テレビゲームではたしかにひとつの画面をふたりで共有していますが、ひとりひとつコントローラーを持っていますよね。
また、映画もひとつの画面を一緒に見てはいるけど、それは映画対自分の世界であって、そこに相手の存在が介在されることはありません。いずれもなにかしらがパーソナルであって、じつはこのシェアリングの発想ってなかなかないんですよ。
Air Hockey Gold
さまざまなレベルのコンピューターを相手に、または対戦モードで楽しめるエアホッケーゲーム。一度にふたつのパックを使って対戦できるのがほかにはない点。
カテゴリ|ゲーム
価格|無料
9.7 MB
言語|英語 ※日本語非対応
c 2010 Acceleroto
──iPadはコミュニケーションツールということでしょうか?
僕はそもそもiPadは個人で使うことを要求しているものではないと思うんです。実際に使用してみて不便だなと思うこともありますが、“パーソナル”な行為に対して“シェアリング”というコンセプトをくわえたことにかんしては非常に秀逸なプロダクトだと思っています。ただ、いままでひとりでしてきたことをシェアリングにしてなにをするか? ということがまだあまり生まれてないんだと思います。これまでPCを使ってひとりで楽しんでいたことがシェアになることにユーザーもまだ慣れていないし、アプリもそれについてきてないと思う。
──iPadは今後どのように発展していくでしょうか?
iPadはうまくいけば“アナログとデジタルの中間点”“個人と他者との中間点”というまったくあたらしい媒体になることができると思うんです。しかし、いまはまだその使い方を模索する時期であって、それまでは持て余してしまうでしょうね。本当の真価が発揮されるのはシェアリングの可能性を広げることができるアプリがどれだけ出てくるかってところにかかっていると思います。それと同時に、ユーザーである僕らも進化しなくてはならない。その真価が発揮されたとき、PCでは変えられなかった日常を、iPadは変えることができると思います。
──ありがとうございました。
山田 遊|YAMADA Yu
2001年よりインテリアショップ『IDEE』のバイヤーとなり、02年より全店統括バイヤーを務める。03年より恵比寿のコンテンポラリージュエリーのギャラリー『gallery deux poissons』の立ち上げに参加、マネジメントディレクターを務める。07年NOOKA JAPAN代表取締役に就任。同時にクリエイティブディレクション事務所「method」を立ち上げる。