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2023年6月13日
手間と時間を惜しまず仕込んだ、焼酎の新たなスタイル。ラグジュアリー蒸留酒「HITOYO」誕生|FEATURE
FEATURE|HITOYO(ヒトヨ)
ウイスキーに匹敵する熟成アロマ! 焼酎も、美味しいものを少しずつ楽しむ趣向へ
すでに日本酒ではさまざまな実験的試みが行なわれていますが、そうしたトレンドが「焼酎」にも波及するのでは? と思わせる新製品が誕生しました。それが高級焼酎「HITOYO」。これまでの焼酎造りでは行なわれてこなかった革新アイデアにより、いつもの焼酎が何十倍にも格上げされています。
Text by TSUCHIDA Takashi
まずは3アイテムをリリース。そして今後もシリーズ化予定
きっかけは、宮崎県串間市にある「幸蔵酒造」が仕込んでいた熟成焼酎。32年熟成(後ほど、詳細を紹介します)という、ウイスキーでもなかなか見られない“超”長期熟成により、蒸留酒の尖ったアタックはまるでなし。どこまでもスムースなテクスチャー、そして樽由来の甘やかな芳香は、「焼酎も、おめかしすると、こんなにも変わるんだ!」という、アハ体験にも似た鮮烈な気づきを与えてくれます。
そもそも、焼酎には熟成文化がありませんでした。なぜなら、原材料の香り・味わいだけで十分に勝負することができるから。焼酎には麹づくりという工程があります。それが、ウイスキーやブランデーなど、海外の蒸留酒と大きく異なるところ。麹の原料も米、麦、芋など多彩ですが、この麹があるからこそ、素材由来の風味がブーストされ、熟成アロマをまとわずとも美味しいのです。この点が、熟成工程を必然とする海外の蒸留酒と異なる点です。
ウイスキーやブランデーには、麹という考え方がそもそもないんですよ。
そうしたなかで、焼酎を熟成させるという大実験を試みた「幸蔵酒造」の先代に大感謝です。32年間という“超”長期にわたり、熟成樽を守り続けることは、たやすいことでは決してありません。最終的に商品になるかどうかわからないものを保管しておくほど、焼酎蔵は余裕があるわけではないからです。しかも、自分の代では決着がつかず、成功かそうではないかは、次の代に持ち越しという点もシビレます。
加えて、この焼酎の商品化を実現させたプロデュースチーム「Local Local」にも敬意を表します。酒蔵に眠っていた熟成焼酎は酒税法の問題があり、そのままでは販売できないものでした。例えば、色。焼酎の規定では熟成を想定していないので、琥珀色の色彩が一定以上だと焼酎とはみなされません。絡み合った問題があるなかで、なんとか販売できる水準まで高品質のまま落とし込んだと聞きます。
HITOYO創業者 江本さんは、「国産蒸留酒としてはウイスキーに引けを取らない品質のものが数多く眠っているのに、日の目を浴びず、焼酎のイメージと消費量が悪化していくことに対しての大きなギャップがあると感じていた」そうです。確かに、一部の製品を除き、焼酎とは、安く飲めるカジュアルな酒、というイメージが強いと思います。
続けて江本さんは、「蒸留酒だからこそ、貯蔵や熟成ができる点で、非常に高いポテンシャルはあると感じている」と語ります。そう、この江本さんが手掛ける「HITOYO」ブランドが旗振り役となって、これから「ラグジュアリーな焼酎」という新しい価値観が醸成されていくと見て、間違いありません。
さて、その「HITOYO」ブランド第1弾として、今回は3つの銘柄がリリースされました。
まずは、先程から話に登場している幸蔵酒造製造の「HITOYO Al Kaphras(アル・カフラー)」。
こちらは、32年熟成酒。はじめに亀壺(※亀壺は土でできるため、余分な雑味を土が吸ってくれる)に数ヶ月寝かせた後に、オーク樽に移し10年間熟成。一方で、木樽で寝かせる期間が長過ぎるとタンニンが出すぎて渋味が強くなるため、一度、タンクに戻してさらに22年間熟成。商品化決定後に、再びオーク樽に戻して風味付けをしたものです。
なんという手のかかりよう……。先程も申しましたが、口に含むと、その滑らかなテクスチャーに驚くと思います。これは、生成されたアルコールが時間とともにその他の成分と結びつき、安定するためです。そして、良質な長期熟成ウイスキーを思わせるアロマ。このアイテムは幸蔵酒造が実験的に仕込んでいたものをLocal Localが買い取り、販売しているため、2樽1000本分が売り切れると、次は2度と買えません。
同じく、幸蔵酒造による7年熟成の「HITOYO δ Centauri(デルタ・ケンタウリ)」は、亀壺に数ヶ月寝かせた後に、オーク樽で7年間寝かせたもの。「Al Kaphras」に比べるとまだまだ素材のフレッシュさが残っていますが、熟成アロマも同時に楽しめる仕上がりとなっています。
そして「HITOYO Salm」は山形県の日本酒の酒蔵、楯の川酒造が製造した純米大吟醸の粕を原料とする粕取り焼酎。こちらは、ブドウの搾りカスを再蒸留するフランスのマール、イタリアのグラッパのような焼酎です。
以上、「HITOYO」ブランド第1弾として登場したアイテムはこの3本。続けて「Local Local」は、高級焼酎のさらなる可能性を追求するために、各種プロジェクトを進行中とのことです。
日常的に楽しめる、既存の焼酎も素晴らしいですが、時間と労力をかけたとびきりの焼酎は、ぜひとも今のうちに楽しみたいところ。ラグジュアリーとは言っても、他の蒸留酒に比べて焼酎の価格はまだまだお手頃だからです。そして、お酒というのは需要が高まるとどんどん価格が跳ね上がっていく……。国産ウイスキーの例を見れば、納得のはずです。
手の出しやすいラグジュアリー酒の新鮮味、いま見逃す手はないと思います!
問い合わせ先
HITOYO
https://hitoyo.store/