歌の力を痛感!舞台『Sing a Song』|戸田恵子
歌の力を痛感!舞台『Sing a Song』
仙台のアンパンマンミュージアへの訪問から帰り、すぐ舞台「Sing a Song」の稽古・・・。歌手という役を通じて、「歌」というものには、ものすごいパワーがあるということを改めて痛感!
Text by TODA Keiko
苦しい時でも歌は「癒しの存在」になる
2018年、今年も1月2日、3日と仙台アンパンマンミュージアムに行くことができました。悲しみを乗り越えようとする時、子供たちの「アンパンマン!!」という元気な声には確実に背中を押されます。何があっても頑張らなくてはいけない。今年も強く思いました。また、30周年を迎える本年は気持ちも一層引き締まりますね。
仙台から帰って即、舞台「Sing a Song」の稽古が始まりました。私の役は歌手・淡谷のり子さんをモチーフにした「三上あい子」という役。人気歌手・三上あい子は戦時中、慰問をさせられるのだが、ギャラは要らない!モンペ姿にはならない!ドレスも化粧も今まで通り!そして自分の好きな歌を歌う!決して軍歌は歌わない!そう言い続け、貫き、強く生きた女である。しかしさすがのあい子も特攻隊員を前に歌った時には涙する。クライマックスだ!
歌手という役を通じて、今回の芝居には思い入れもたくさん重なりました。「歌」というものには、ものすごいパワーがあるということを改めて痛感!どんなに苦しい時でも歌は「癒しの存在」となるということ。それがたとえ戦争中でもだ。
演者は6人。軍人3人。チームあい子3人。マネージャーの成田さんと、伴奏のよっちゃん。それぞれの生き様を見せつける。皆、本当に苦しい時代だ。想像を絶するばかりです。私はこれまで戦争と直接向き合う作品には縁が無かった。でも誰かがどこかで演ってくれていて、観るたびに必要なことだと思ってました。
今回、台本を読んでついに自分の番が来た!と思ったのでした。もしかしたら今までの私では出来なかったのかもしれない。今だからこそ向き合える役、作品なのかもと思いました。生死をかけての動向は生半可な気持ちでは演じきれないし、まして歌手という役に私が強く惹かれたのも事実です。
あい子の命懸けの台詞がいくつもありました。正直、疲れる程の怒りと執念と!!緩むところはどこにもありませんでした。そんな中で所々に歌唱シーンが散りばめられ、お客様にもホッとして頂けたのではと思います。文句なく歌には力があるからです。癒しのメロディーには敵いませんね。何より私自身が歌唱シーンに癒されておりました。
覚悟を決めて挑んだ受賞スピーチ
東京・下北沢での公演を終えて、翌日から地方公演にも出ました。2月17日~3月25日まで。全国を廻りました。なかなかハードなスケジュールでして、一箇所で上演。翌日は移動日。これの繰り返しでした。今年の初めからひたすら体調だけを気にして、珍しくナーバスに過ごしてました。(笑)
ホテルが毎回違ったりでうまく寝付けない事もあり、旅の後半から少し寝酒を飲むようになりました。ワイン1杯分の紙パック。重宝しましたね。
旅の後半に思いがけずの朗報が入りました。なんと三上あい子の演技に第43回菊田一夫演劇賞受賞ですと。とてもびっくりでした。まだ公演中でしたし。この賞は年度末までの上演作品がノミネートされるとのことで、誠にありがたい受賞となりました。スタッフ、キャスト、お客様、全ての皆さまのおかげと心から思っております。特に今回は少数精鋭のチームでしたし、皆でホントに助け合って参りました。
受賞式の前には淡谷のり子さんの御墓参りにも行かせてもらいました。新青森はまだ桜の季節でして、思いがけず霊園は桜の園のようでとても美しかったです。初対面の淡谷のり子さんも「誰?」と思われたことでしょう。無事に御墓参りを済ませて、気持ちが落ち着きました。また一歩前進できる気がしました。
4月26日、授賞式は着物で出席しました。舞台チームもたくさんの方が出席してくれました。授賞式はスピーチさえ無ければ、とてもHappyなのですが…。待合室であれこれ考えて、とにかく落ち着いてスピーチしようと覚悟を決めて挑みました。まあまあ中の下くらいの出来ですね。(笑)
立派な賞を頂いて、賞に恥じぬようこれからも精進いたしますと、スピーチを締めました。これに尽きると思います。「Sing a Song」たくさんの御支援ありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い致します。