連載|体感する読書~THE READING EXPERIENCE~|第12回「写真集のすべて」
連載|THE READING EXPERIENCE
今月の3冊|May.2014
第12回「The Ultimate Photobook~写真集のすべて~」
人生を左右する本との出合い。それは一瞬の出来事かも知れません。そんな特別な1冊を求めて世界を駆け巡るブックハンター、twelvebooksの濱中敦史さんがセレクトした写真集・作品集を3冊ご紹介します。見てよし、触ってよし、飾ってよし。ようこそ、体感する本の世界へ。
さまざまな切り口で、奥深い写真集の世界へいざなってきたこの連載もいよいよ最終回。フィナーレを飾るのは写真界の巨匠、マーティン・パー。といっても、今回は写真家としてではなく、写真集コレクターとしての登場だ。彼と写真評論家のゲリー・バッジャーが世界中から収集した写真集を、ユニークな切り口で編集した渾身の「写真集図鑑」。この3冊を読めば、写真集のすべてがわかる!?
Selected by HAMANAKA Atsushi (twelvebooks)
Photographs by JAMANDFIX
Text by TANAKA Junko (OPENERS)
写真集の黎明期から戦後まで
19世紀、イギリスで誕生したといわれている写真集。写真家にとっては、自分の作品を世に送り出すための重要なツール。それを手に取る読者にとっては、写真家の考えやビジョンを理解するための重要な媒体だ。にも関わらず、これまで写真集について語られることはほとんどなかった。「なら、ぼくたちが」と立ち上がったのが、マーティン・パーとゲリー・バッジャーの2人。この『The Photobook; A History Vol.1』では、写真集の黎明期から1930年代の報道写真集、1960年代から70年代にかけて日本で生まれたラディカルな写真集まで、200冊以上の写真集を一冊ずつ丁寧に解説している。
『The Photobook; A History Vol.1』
作者|マーティン・パー&ゲリー・バッジャー(Martin Parr & Gerry Badger)
出版社|Phaidon Press(http://uk.phaidon.com)
サイズ|298 × 258 mm / ハードカバー
ページ数|320ページ
私物
2004年刊
第二次大戦以降の写真集作り
『The Photobook; A History Vol.1』と時期をほぼおなじくして刊行された『Vol.2』。前作同様、200冊以上の写真集を一冊ずつ解説しながら、時代とともに変化を遂げてきた写真集の歴史を紐解いていく。特に本作では、スティーブン・ショアの『American Surface』など、写真家の個性がにじみ出たアートフォトや、一つの対象物を追いつづけた俯瞰写真など、あたらしい切り口で業界に一石を投じた写真集を数多く紹介。第二次大戦以降、写真集はどんな変化を遂げたのか? その全容がいま明らかになる。
『The Photobook; A History Vol.2』
作者|マーティン・パー&ゲリー・バッジャー(Martin Parr & Gerry Badger)
出版社|Phaidon Press(http://uk.phaidon.com)
サイズ|290 × 250 mm / ハードカバー
ページ数|320ページ
私物
2006年刊
秘められた思いと欲望、そして
世界的な反響を呼んだ『The Photobook; A History Vol.1』と『Vol.2』。それから10年間のブランクを経て、シリーズ第3弾『Vol.3』が発売。本作では自費出版ブームから、写真家の怒りや思想を反映したプロパガンダ的写真集、インターネットやソーシャルメディアが写真集作りに与えた影響まで、さまざまな具体例を挙げながら、最新の“写真集事情”を明らかにする。
『The Photobook; A History Vol.3』
作者|マーティン・パー&ゲリー・バッジャー(Martin Parr & Gerry Badger)
出版社|Phaidon Press(http://uk.phaidon.com)
サイズ|290 × 250 mm / ハードカバー
ページ数|320ページ
私物
2014年刊
濱中敦史|HAMANAKA Atsushi
twelvebooks代表。2010年3月、現代写真を中心に、独自のスタイルをもつ出版社やアーティストの活動をプロモーションするプラットフォームとして、「twelvebooks」を設立。洋書や洋雑誌の国内流通を手がけるほか、写真展の企画や選書、ディレクションまで、書籍やイメージに関わる活動を展開する。www.twelve-books.com