連載|体感する読書~THE READING EXPERIENCE~|第10回「モードな一撃」
LOUNGE / BOOK
2015年2月2日

連載|体感する読書~THE READING EXPERIENCE~|第10回「モードな一撃」

連載|THE READING EXPERIENCE
今月の3冊|Feb. 2014

第10回「Shot à la Mode~モードな一撃~」

人生を左右する本との出合い。それは一瞬の出来事かも知れません。そんな特別な1冊を求めて世界を駆け巡るブックハンター、twelvebooksの濱中敦史さんがセレクトした写真集・作品集を3冊ご紹介します。見てよし、触ってよし、飾ってよし。ようこそ、体感する本の世界へ。

記念すべき連載10回目にお届けするのは、モードな3冊。といっても、洋服をきれいに見せることを目的とした、いわゆる「ファッション写真」ではなく、ファッション写真を大胆にサンプリングした作品や、いまや資料と化した30年前のスナップ写真。いずれもひと捻りもふた捻りも利かせたものばかりだ。このモードな一撃、あなたはどう受け止めるだろうか?

Selected by HAMANAKA Atsushi (twelvebooks)Photographs by JAMANDFIXText by TANAKA Junko (OPENERS)Special thanks to alpha PR

01

 男物をまとった女性モデル

twelvebooks|Feb. 2014 『Sol & Luna』

トップス 9000円(ニュアンス/alpha PR Tel. 03-6418-9402)

ファッション写真の第一線で活躍する写真家、ヴィヴィアン・サッセン。ミュウミュウやルイ・ヴィトン、カルヴェンなど、名だたるメゾンの広告を手がけてきた。一方で、黒人の男女を独自の視点で捉えた彼女の写真は、アート写真の世界からも高く評価されている。広告とアートという、似て非なる二つの世界を行き来する彼女が、北欧のメンズ・ブランド「Our Legacy」のために撮り下ろした写真。それは女性モデルが男物の服をまとうという、なんともユニークなものだった(なかには、まったく服を着ていない写真もある)。洋服をきれいに見せることが、ファッション写真の通例とするなら、これがいわゆる“正統派”でないことは確かだ。だがこのモノクロ写真には、そうした枠組みなど意に介さないような凛々しさがある。そう、まるで「美しければそれでいいの」と言わんばかりに。

『Sol & Luna』
作者|ヴィヴィアン・サッセン(Viviane Sassen)
出版社|Libraryman(www.libraryman.se)
サイズ|225 x 305 mm / ハードカバー
ページ数|32ページ
価格|6510円
販売先|twelvebooks 全国取扱店舗
2013年刊
※1000部限定発行(セカンド・エディション)

02

 ファッション写真と遊ぶ

twelvebooks|Feb. 2014 『Untitled (September Magazine)』

パンツ 2万5500円(オーギュスト プレゼンテーション/alpha PR Tel. 03-6418-9402)

ロンドンを拠点に活動するアーティスト、ポール・エリマン。彼の新プロジェクトは、約600ページにおよぶ光沢仕上げの雑誌。いわゆる特大号に匹敵する厚みと重さである。だがそこにはロゴはおろか、テキストは一切見当たらない。代わりに顔のないモデルがページを埋め尽くしている。元ネタはファッション雑誌や、ポルノ雑誌に掲載されていた写真。そこから手や足、額、胸など、体の一部を切り取っているのだという。エリマンは言う。「世のなかには、パッと見ただけでは区別がつかないほど、おなじような写真が溢れかえっている。だけど膝や背中、肩といったディテールに目を向けてみると、そこには確かにぼくたちの心を掴むなにかがある」と。かくして枯れかかっていた花たちは、“エリマン・マジック”によって息を吹き返した。

『Untitled (September Magazine)』
作者|ポール・エリマン(Paul Elliman)
出版社|Roma Publications (www.romapublications.org)
サイズ|220 x 290 mm / ソフトカバー
ページ数|592ページ
価格|6300円
販売先|VACANT
2013年刊

03

 1980年代にタイムスリップ!

twelvebooks|Feb. 2014 『Rodeo Drive, 1984』

シューズ 2万5000円(オルフィック/alpha PR Tel. 03-6418-9402)

パリにサントノーレ、ニューヨークに五番街があるように、ロサンゼルスにも高級ブランドが立ち並ぶエリアがある。ロデオドライブ。映画『プリティ・ウーマン』(1990年)で、ジュリア・ロバーツ演じるコールガールのビビアンが、店員から邪険にされた場所である。1984年、新鋭写真家のアンソニー・ヘルナンデスは、カメラをもって彼の地へ向かった。ルイス・ボルツら同時代の作家とともに、一貫してロサンゼルスの“いま”を捉え、提示してきた彼のこと。目的は肩パッドやボディコンなど、1980年代ファッションを記録することではなかった。流行のファッションに身を包み、富を享受する人が行き交う一方で、彼らを見ながら「いつかわたしも」と、物欲しげに指をくわえている人もいるという、この場所の光と影を写し出していたのだ。

『Rodeo Drive, 1984』
作者|アンソニー・ヘルナンデス(Anthony Hernandez)
出版社|MACK(www.mackbooks.co.uk)
サイズ|300 x 300 mm / ハードカバー
ページ数|96ページ
価格|7770円
販売先|twelvebooks 全国取扱店舗
2013年刊


濱中敦史|HAMANAKA Atsushi
twelvebooks代表。2010年3月、現代写真を中心に、独自のスタイルをもつ出版社やアーティストの活動をプロモーションするプラットフォームとして、「twelvebooks」を設立。洋書や洋雑誌の国内流通を手がけるほか、写真展の企画や選書、ディレクションまで、書籍やイメージに関わる活動を展開する。www.twelve-books.com

濱中敦史|HAMANAKA  Atsushi

Photo by Daisuke Hamada

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