BOOK|イタリアの工房に受け継がれる技と美、職人の人生までを案内
BOOK|イタリアの工房に受け継がれる技と美、職人の人生までを案内
『イタリアの小さな工房めぐり』
イタリアの職人が作る「世界の一級品」に秘められた技と美意識、そして彼らの知られざる人生。一級品を生み出す街の小さな工房の奥に分け入って、魅力ある製品にさらに艶を与える秘話をまとめた一冊が新潮社から刊行された。
Text by SAKIYAMA Chikako(OPENERS)
小さな工房に息づく技と人
イタリアと聞いてイメージするものといえば、どのようなものだろうか。古代の遺跡、サッカーリーグのセリエA、映画、OPENERS読者諸氏にとっては、フェラーリやランボルギーニ、マセラティといったスポーツカー、あるいは、仕立てのよい体にフィットするスーツかもしれない。
これらに共通するキーワードは、一級であること。こうしたイタリアの一級をささえるべく、代々引き継がれてきた一流、つまりイタリアの技と職人たちについてスポットを当てた書籍、『イタリアの小さな工房めぐり』がこのたび新潮社から発売された。
イタリアの職人が作ると「世界の一級品」になり、いちど使えば誰もがとりこになる。時流になびかず、古い物を大切に使いつづけるイタリアの美意識が生み出すものには、永遠にも通じる魅力がある。これらが生み出されるのは、街の片隅にある小さな工房だ。
そうした小さな工房の扉の奥で、父から子へ、師から弟子へと代々伝えられてきた卓抜した職人技や美意識、さらには人を愛し人生を謳歌する豊かな生き方。イタリア在20年になる著者、大矢麻里氏は工房をひとつひとつ訪れ、職人たちの言葉から、日常の秘められたストーリーをうつし出していく。
登場するのは、ス・ミズーラ(注文制作)の紳士靴工房、ハンドメイドのロードバイク工房といった興味深いプロダクトをはじめ、世界に知られるムラーノグラスや、彫金、製本、マーブル紙、楽器のハープなど、多数の一級の職人たち。本書を読めば、イタリアの一級品にさらに艶が増すことはまちがいない。
大矢麻里|OYA Mari
イタリアコラムニスト。東京生まれ。幼稚園教諭、商社勤務を経て1996年にイタリア・トスカーナの古都シエナに移り住む。料理学校の通訳やアシスタントを務めるかたわら執筆活動を開始。NHKラジオテキスト『まいにちイタリア語』『朝日新聞デジタル&M』などにイタリア文化や生活関連の連載を執筆。NHK『マイあさラジオ』をはじめ、ラジオ番組でもコメンテーターとして活躍中。