ART|“時”がテーマの『十和田奥入瀬芸術祭』
ART|自然豊かな奥入瀬や十和田湖、そして十和田市現代美術館などが会場に
“時”がテーマの『十和田奥入瀬芸術祭 SURVIVE-この惑星(ほし)の、時間旅行へ』
アートと密接した空間づくりで知られる、青森県の十和田市現代美術館の開館5周年を記念した『十和田奥入瀬芸術祭 SURVIVE-この惑星(ほし)の、時間旅行へ』が11月24日(日)まで開催中だ。景勝地として知られる自然豊かな奥入瀬(おいらせ)や十和田湖、美術館のある十和田市街を舞台に、テーマである“時”がリンクした作品が登場する。
Text by YANAKA Tomomi
新作小説や畠山直哉撮影のグラビアを収めた書籍も刊行
2011年3月11日の東日本大震災の発生。東北の地、十和田にも「千年に一度」といわれる地震は大きな影響を及ぼした。いっぽう、奥入瀬には「数万年」かけてかたちづくられた複雑で多様な生態系も存在しており、そんなさまざまな“時”を十和田湖、奥入瀬の地で表現し、この時代と芸術との関係、これからの可能性を提示しようと芸術祭が実現。十和田市現代美術館の副館長であり、アーティスティック・ディレクターの藤浩志のものに多彩なアーティストが参加した。
展覧会への参加アーティストは映像作家のマーカス・コーツや、放射能で汚染された土壌を使って銀塩感光材に焼き付ける作品などで知られる武田慎平、日用品をナフタリンでかたどったオブジェなど時を視覚化する作品で注目を集める宮永愛子ら13組の作家が出展。家のように個々の独立した展示室をもつ、十和田市現代美術館や大自然を生かした会場などで紹介される。
また、管啓次郎を編者に迎え、気鋭の作家である石田千、小野正嗣、小林エリカらによる新作小説や写真家畠山直哉が撮り下ろした、十和田奥入瀬の写真グラビアなどが収められた書籍『十和田、奥入瀬 水と土地をめぐる旅』も刊行された。
作品があらわす“時”と、奥入瀬や十和田湖という場所自体がもつ“時”の流れを視覚のみならず、音楽や小説などさまざまな芸術で体感できる『十和田奥入瀬芸術祭』。紅葉から初雪へと移ろいゆく景色とともに、芸術の秋を堪能するのには絶好の場所だといえるだろう。