ART|“ホームグラウンド”東京都美術館で『福田美蘭展』
ART│ルーツである「上野」と「東京都美術館」に焦点を当てた作品も
“ホームグラウンド”東京都美術館で『福田美蘭展』
独創性あふれる作風を切り開き、国際的にも活躍する画家、福田美蘭(ふくだ・みらん)の展覧会が7月23日(火)から9月29日(日)まで台東区上野の東京都美術館で開かれる。会場には、この展覧会のために制作した新作20点をあわせ、約70点を展示。福田芸術の多彩な表現世界へといざなう。
Text by YANAKA Tomomi
震災に向き合った連作からユーモア溢れるものまで多彩な福田芸術の全貌を見る
1963年に生まれ、上野にある東京藝術大学で学んできた福田美蘭。これまでにも卒業制作展、修了制作展を経て、東京都美術館で開催された数かずの公募展に出品、受賞するなどまさに東京都美術館を主な舞台としてキャリアを積んできた。
そんなホームグラウンドともいうべき東京都美術館では、1926年の創設当時から公募団体展などを数多く開催。そして、昨年春のリニューアル後、初の現役作家の個展として、ゆかりのある福田の作品展が企画された。
彼女は今回のために、東京都美術館を設計した建築家前川國男へのオマージュや、美術館のロゴをモチーフにした作品を制作。さらに、上野公園にまつわる作品など、自身のルーツでもある「上野」と「東京都美術館」に焦点を当てた作品を展示する。
また、これまで9.11同時多発テロなど現代のさまざまな出来事を題材に、社会に静かなまなざしを向ける作品を数多く生み出してきた福田。本展では、幕末から明治時代の日本画家、狩野芳崖による『悲母観音』をモチーフに、上空から見た東日本大震災の被災地の光景を背に子を胸に抱き寄せる母子像『秋-悲母観音』など、作家が震災と向き合って制作した春夏秋冬の4点の連作など、時代を映すような作品も見ることができる。
7月から9月にかけての土曜日には学芸員によるギャラリートークも開かれる。
レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』や安井曾太郎など古今東西の名画や画家をモチーフにした1990年代以降の名作も登場し、福田ワールドの全貌を見ることができる本展。悲しみと真摯に向き合ってきたと同時に、絵画の既成概念にあたらしい視点を投げかけるユーモア溢れる彼女の代表作品群を堪能したい。