連載・和醸和楽|第24回 伝統と挑戦を繰り返す北陸の吟醸蔵「黒龍」
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2015年5月27日

連載・和醸和楽|第24回 伝統と挑戦を繰り返す北陸の吟醸蔵「黒龍」

「味わう」 という一瞬に、知恵を絞る

伝統と挑戦を繰り返す北陸の吟醸蔵 「黒龍」

「0杯から1杯へ」。いにしえから伝わる文化に、いまふうのエッセンスを少々くわえると──レトロでモダンな日本酒って、素材としてはそれだけで十分イケてるのではと思う福井県永平寺の黒龍酒造です。

文=和醸和楽Photo by JAMANDFIX(TOP)

1804年(文化元年)、初代蔵元・石田屋二左衛門により創業

創業1804年(文化元年)。初代蔵元の石田屋二左衛門以来、黒龍酒造は手造りの日本酒を追求してきました。

和醸和楽|わじょうわらく|黒龍|黒龍酒造

黒龍が醸造されている永平寺町松岡は、小さな町ながらかつては17もの蔵元が軒をつらねた名醸地であり、霊峰白山山系の雪解け水が長い年月をかけ、山の滋養という濾過を経て、再び名水として湧き出るところです。近くを流れる福井県最大の河川「九頭竜川」の伏流水は、軟水の特徴が活きた軽く軟らかくしなやかな口当たりで、黒龍が目指す綺麗でふくらみのある吟醸酒に最適です。この九頭竜川、かつては「クツレウ川(黒龍川)」と呼ばれ、流域にはいくつもの黒龍(クロタツ)神社が祀(まつ)られており、「黒龍」と黒龍酒造が醸す燗酒銘柄「九頭龍」の銘はこの九頭竜川に由来しています。

全国に先駆けて大吟醸酒を市販化

いまでは馴染みのある「吟醸」という言葉が、まだ鑑評会でしか知られていなかったころの話です。七代目蔵元の水野正人は同じ醸造酒としてのワインに深い興味を抱き、フランスやドイツを歴訪し、ワイン同様に日本酒を熟成できないかと試行錯誤をつづける一方で、少量で高品質な酒造りだけを追求しつづけていきました。

和醸和楽|わじょうわらく|黒龍|黒龍酒造

そうして生まれたのが大吟醸「龍」。市販ベースにはなり得ないという酒造業界の常識に屈することなく、全国に先駆けての大吟醸酒の商品化であり、「日本一高価な日本酒」として全国の愛飲家やマスコミの注目を集めました。これをきっかけとした吟醸蔵への歩みは、現在の*特定名称酒比率約85%といった高品質な酒造りへとつながっています。
*特定名称酒……一般清酒(普通酒)と区別するために設けられている清酒の分類。大吟醸酒、純米酒、本醸造酒など普通酒を除く高級酒が含まれます。

沈黙の貯蔵は、酒の旨みを育てあげる

和醸和楽|わじょうわらく|黒龍|黒龍酒造

2005年に建設された「兼定島酒造りの里」では、理想的な熟成を実現するため、700平方メートルの原酒冷蔵貯蔵庫、135平方メートルの冷蔵調合室、225平方メートルの製品低温貯蔵庫を合わせ、合計1000平方メートルを越える冷蔵設備を完備。それに氷温庫を4基と屋外サーマルタンクが16基をくわえ、徹底した温度管理の下、安定した酒質の商品をお客さまにお届けできるよう商品管理をおこなっています。原酒の段階ではやや控えめに味を整え、貯蔵の段階で低温にてしっかりと熟成することで、品の良い旨みや柔らかな舌触りを表現しており、「貯蔵」という第2の酒造りへの思いが「兼定島酒造りの里」に込められています。

自分で造った酒というのは自分の娘みたいなもの

和醸和楽|わじょうわらく|黒龍|黒龍酒造

「自分で造った酒というのは自分の娘みたいなもの。きれいな着物を着せて嫁入りさせたいという気持ちが親心というもので、ラベルや化粧箱にも力を入れています」。七代目蔵元の水野正人の言葉です。その言葉どおり、越前和紙や越前織、ベルベットのラベル、また越前漆器の化粧箱など、独自の発想と地場産業を活かしたデザインを次々と生みだしてきました。また、主な720ml商品に黒龍酒造オリジナルのボトルを採用、ボトルの中身への思い同様のこだわりを意匠ひとつひとつに貫いています。

「0杯から1杯へ」の挑戦

「良い酒を造れば、ひとは必ず支持してくれる」を座右の銘として高品質の酒造りに没頭してきた黒龍酒造ですが、まったく日本酒を飲まない方にとっての「良い酒」のもつ意味は大変幅広いと感じています。

和醸和楽|わじょうわらく|黒龍|黒龍酒造

安心・安全な商品であることもそのひとつであり、2008年8月、黒龍酒造はクリーンルームを備えた瓶詰めラインを導入しました。また、「愉しさ」「手軽さ」「格好よさ」といった、これまでの地酒業界では「品質」のつぎに後回しにされがちだった要素も大切になってきます。お燗酒を適温で愉しくお飲みいただける酒燗具「燗たのし」、日本酒が苦手な方にぜひとも手に取ってもらいたい飲みきりサイズの吟醸酒「吟のとびら」、飲食店さまにて小容量での日本酒の提供を推奨した「酒グラス」など、これまで日本酒に馴染みのなかった方が日本酒の世界のとびらを開いていただけるような企画を発信し、「0杯から1杯へ」の挑戦をおこなっていきたいと思います。

黒龍酒造
http://www.kokuryu.co.jp/

大吟醸「龍」プレゼント

ウェブマガジン オウプナーズでの「和醸和楽 SAKEアカデミー」の連載で毎回紹介する日本酒(720mL)を3名さまにプレゼント。

ご希望の方は下記の応募フォームよりご応募ください。
当選された方には追ってご連絡させていただきます。

応募期間|2010年8月5日(木)~8月31日(火/午後12時)まで

応募フォーム
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たくさんのご応募ありがとうございました。

           
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