きき酒師 チズコ│第1回 なぜニューヨークできき酒師?
Lounge
2015年4月28日

きき酒師 チズコ│第1回 なぜニューヨークできき酒師?

第1回 なぜニューヨークできき酒師?

本日から晴れて、ニューヨークからOPENERSにて日本酒事情を送らせていただくことになりました「きき酒師/日本酒ソムリエ」のチズコです。どうぞよろしくお願いします。

文=チズコPhoto by Atsushi Nishijima, Hideki Kato / Notions United LLC

みなさんは日本酒に対してどういう印象をもっていますか?

おっさん臭い、二日酔いになる……、そんな「日本酒はちょっと……」というネガティブなイメージをおもちの方、まだまだたくさんいるんじゃないでしょうか?

いまでこそ「日本酒ソムリエ」なんてカッコつけさせていただいておりますが、かつての私はそうでした。秋田から大学進学で上京し、なにでつくられているかもわからないチューハイや安いワインを飲んでは、いっぱしの都会の大人になった気分になっていたものです。あー、お恥ずかしい。

「では、そんな私が一体どこで日本酒にはまったか」

ファッション業界で働いていたある日、取引先の素敵な大人の男性が都内の隠れ家的な小料理屋さんへ連れて行ってくれたときです。
日本酒は苦手だろう、と思った女将さんが最初に食前酒として出してくれたのが冷凍庫で冷やしてほんのりシャーベット状になった冷酒。その新鮮な香りと舌触り、味わいに驚き、その後にお薦めされるお酒にまた驚き……気づけば、日本酒に対するネガティブな印象は消え、なにか新しいドアをノックされた気がしました。

ちなみに、この温度帯を「雪冷え」と言います。

当時は、日本酒の温度帯にそれぞれ名前があるとはまったく知りませんでしたが、そのほかにも、花冷え、涼冷え、日向燗、人肌燗……など、日本語ならではの美しくツヤやかな表現があります。これぞ日本人ならではの「粋」ではないでしょうか?

「なぜニューヨークできき酒師?」

「日本酒」という国の名前がついた酒が世界で評価され、その評価を知ることで、日本人としての心、誇り、自信を感じられること。それは造り手だけではなく、私たち日本人みんなにも通じると思っています。
もちろん、日本にいながらにしてその気持ちとともに経済効果も維持できればいいのですが、やはり、世界中から「日本」という国への魅力、ファンタジーを抱いてもらえたら、小さな島国日本がより元気になれると思うのです。

私は、微力ながら、お米の国・日本で育った日本人として、その架け橋のほんの一部になりたい、そう思っています。世界経済の中心、世界中の人種が集まるニューヨークでその気持ちを発信したら、きっと道は開ける! その気持ちだけで現在もお米一粒一粒を思う気持ちで世界中から集まったひとたちのひとりひとりに私なりの日本酒道を唄いつづけています。

「CITYだからこその日本酒道」

それでは、ニューヨークの日本酒シーンの一部を紹介していきたいと思います。
まずは、私がきき酒師/日本酒ソムリエとしてスタートするきっかけになった、ニューヨークで「日本酒」と言えば……の老舗、その名もズバリ「酒蔵」(http://www.sakagura.com/)

こちらでは、200種類以上の日本酒、20種類以上の焼酎を置いています。そしてほとんどの日本酒がグラス売りをしているのもうれしいところ。なかなか決められないときはテイスティングをしてから決められます。
オフィスビルの地下にあり、まさかこんなところに……という秘密めいた入り口も魅力。ニューヨークのとあるウエブサイト上で秘密のデートに使いたい場所No.1に輝いたこともあります。アペタイザーからデザートまで日本酒とペアリングして楽しめます。

夏はキリリと冷えたシュワシュワ感があるお酒もお薦め。日本酒に抵抗がある女性には、シャンパンを思わせるスパークリング酒のこちらをぜひ騙されたと思って試してほしい。
お猪口ではなく、ぜひフルートグラスタイプで。山口県旭酒造 獺祭純米大吟醸三割九分スパークリングにごりオンザロックで楽しむ梵無濾過生原酒

酒蔵の上にある「蕎麦鳥人(そばとっと)」(http://www.sobatotto.com/)
ここでぜひイチ押しなのは、入ってすぐ左にあるバー。人気ミクソロジスト山本 幻さんがつくりだすカクテルは、フレッシュな野菜やフルーツを使ったヘルシーでジューシーなものばかり。
素材そのものの味を楽しめるのはもちろん、お酒の特徴をさらに引き出してくれるテクニックは繊細な和の心をもった幻さんならでは。

写真上左より、ミクソロジストの山本 幻さん。フレッシュなプラムと南部美人特別純米を使ったすっきり爽やかビタミンたっぷりのカクテル。ローストしたイエローコーンの甘みと米の旨味がまるで懐かしいミルクシェイク! 大七きもと本醸造使用のカクテル。

これからも、ニューヨークから きき酒師チズコの日本酒道「SAKE AND THE CITY」をお届けしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

ほかにもまだまだありますが、今日はここまで。

SAKE DISCOVERIES
http://www.sakediscoveries.com/

プラムと南部美人のカクテルを楽しむ私

           
Photo Gallery