和醸和楽|第5回 三井の寿、銘柄の誕生と造りのはじまり
日本で最後に清酒の免許がおりた一番新しい蔵
三井の寿、銘柄の誕生と造りのはじまり
三井の寿(みいのことぶき)は、福岡市の中心より南に40キロほど下った筑後平野のなか、三井郡大刀洗町にあります。
文=和醸和楽Photo by Jamandfix(TOP)
“太刀”と“大刀”のちがいの理由
この大刀洗町は、南北朝時代、南朝方と北朝方との戦いの大原合戦があり、そのときの武将、菊池武光が刀をあらった川を太刀洗川といい、地名も大刀洗町となりました。
ここでみなさんお気ずきでしょうか? 漢字のちがい!
本来、町の名前も“太刀”のはずが、明治時代に地名を登録する役所の役人が点を付け忘れたのが原因で、地名は点がない“大刀”になったそうです。
また、江戸時代には参勤交代の街道筋にあたり、休憩所や宿場をふくめて3ヵ所に湧き水の井戸があり、その3つの井戸から三井郡の地名がつけられ、このことから「三井の寿」の銘柄が誕生しました。
江戸から明治にかけて当蔵は「泉屋」の屋号でまわりの田んぼで収穫されるお米を、目の前の小石原川より船に載せて下流の蔵ぐらへ酒米を納めていましたが、酒蔵へ何度も行き来するうちに酒造学を学び、酒米の目ききを活かし、大正11年に免許を取得したのが当蔵の造りのはじまりでした。
苗から育つ山田錦の成長をみつつ秋の収穫を迎えます
歴史の古さを自慢するお蔵さんが多いなか、うちの蔵は日本で最後に清酒の免許がおりた一番新しい蔵と言われています。
焼酎や醤油、お酢などのもともと醸造関係の蔵が昭和になって免許をもらったり、やめた蔵の免許を買って新しく蔵を造ったところはありますが、まったくの異業種から免許をもらったのはうちが最後らしいです(あくまで「らしい」ですが)。
主に吟醸酒、純米酒そして山廃を造っていますが、原料米としての最高峰「山田錦」の主産地のひとつ糸島を近くに控え、毎年田植えの季節には造りの人間と一緒に手伝いに行き、苗から育つ山田錦の成長をみつつ秋の収穫を迎えます。
吟醸から純米まで大きい仕込みはおこなわず、醗酵にもっとも適した仕込みで造りをおこないます。
江戸時代を通して造られてきた日本酒が大正から昭和の初期にもっとも充実した造りとなり、その当時の日本酒造りの理論と技術を新たなるものとして学び、地元米の持ち味を活かした深みのある旨味とキレ、そして奥行きのある「三井の寿」ならではの酒を醸しだします。
そのようにして造りあげた、日本酒の貯蔵は瓶燗火入れした後、冷房庫や冷蔵庫に入れられ瓶貯蔵されます。
酒造りとおなじように貯蔵にも気を使い、日本酒本来の旨味を追求していくことを大きな目標としています。
余談ですが──
当蔵「三井の寿」には6年前から杜氏はいなく、蔵元杜氏というかたちで兄弟で酒造りしていますが、全国新酒鑑評会では7年連続入賞中です(金賞5回・入賞2回)。
酒造りは「化学とセンスと情熱だ」をもっとうに酒造りしています。
三井の寿
http://miinokotobuki.net/
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