「モア・トゥリーズ」発起人、桑原茂一インタビュー
「モア・トゥリーズ」発起人、桑原茂一インタビュー
環境問題は、敗者復活戦である
自身が主宰するメディア「clubking」では、stop-rokkashoTプロジェクトなどで、自然環境に対する独自のアプローチを続けている桑原茂一さん。坂本龍一さんの僚友(あるいは戦友)は、more treesの発起人のひとりでもある。ともに時代と戦い続ける桑原さんにお話をうかがった。
Photo by Uzawa Kay
more treesもこれまでの流れのなかのひとつの局面
──桑原さんはmore treesの発起人のおひとりですが、まずは坂本さんについておうかがいします
坂本さんがつくっている音楽は、自分の人生に大きく影響していて、おなじ人間同士だから本当はいけないことなんだろうけど、全面的にOKしてしまうところがあるんですよ。
──わかるような気がします
環境問題に対する坂本さんの原点は、息子さんが生まれたときに、いい環境を残したいという思いがあって、それが教授が社会的行動をとるきっかけになったとご自分でも言われていたけど、今回のmore treesもその原点から、PSE(電気用品安全)法や、stop-rokkashoなどのアクションもあっての流れのなかのもの。ただひとつ言えるのは、「教授を信頼しています」ということだけですね。
──その信頼はどこから生まれてくるのでしょう?
私が坂本さんと密にやりとりをするきっかけは「911」なんですね。そのときに『非戦』という本の出版に関わることになって、教授を筆頭に日本の知識人といわれる人たちが真剣に真摯に問題に向かっていくのを目の当たりにしてすごくショックだったんです。あの本はたしか3ヵ月ぐらいでつくったんだけど、教授は寝ていないんじゃないかと思うぐらいで、すごいなというのと同時に、ずいぶん勇気づけられた。それで「じゃあ、自分はどうすればいいか?」と思って、ぼくはコメディをつくることになるんですが。
毎日の自分の生きていることに関連づけないと続かない
──これからmore treesに関わるさまざまな方に「あなたのいちばん身近な環境問題」という質問を共通にしようと思っているんですが……
環境問題はもちろん、それ以外のことでも、結局自分に直接関わってこないと、切実さは生まれないんです。黄砂が降り注いで、クルマが真っ白になって、その砂の量に驚いて、咳が止まらない。そうすれば考えざるを得ないわけで、たんに頭で考えていくのは弱いですよ。頭で考えて、新しいいい考えが生まれたら、前のことは消えてしまう。サーファーが、毎日入っている海が放射能で汚染されていて、それがカラダにまとわりついてくる感じは、海に入らない人にはわからない。活字で認識しているうちはリアリティがないんです。
──桑原さんもstop-rokkashoTプロジェクトなどに力を入れていますね
ぼくも自分でリスクを背負って、きちんと言い続けるぞと、Tシャツの販売を1年半続けてきています。毎日、自分の生きていることに関連づけないと続かないんですよ。
──そう思います
環境問題は、敗者復活戦だとよく言っているんだけど、環境問題は新手の商売でもあるわけで、それがいいふうに動いてくれば、古い価値が新しい価値に変わって、人類にプラスになればいい。そう思えるのも教授のおかげで、あの911があったから、知るための能動的な努力を続けることでしか人間は変われないんだ、と。とても大事な経験をさせてもらいました。
──clubkingをはじめ、これからどういう活動をされますか?
いまもそうだけど、今後も、紙やインターネットなどのメディア、ビジュアル、音楽、イベント、Tシャツなどあらゆる表現を通じて、じたばたするしかない。Tシャツもオーガニックコットンにこだわる理由がちゃんとあるんですよ。
──T-SHIRTS AS MEDIAはすべてオーガニックですね
ぼくらは価値観を変えていく役割なんです。「安くていいデザインのTシャツがなんで悪いの?」という人に、「君が安いからと買っていることで泣いている人がどれぐらいいるかを想像してごらんよ」というのがメディアの役割。「ユニクロなんか買っている場合じゃないぞ」と。
──clubkingも20年目になりました
20年続けてきてやっとスタートラインについたというぐらいの感じで、ここからようやく始まるかなという気持ちが強い。
──では、読者にメッセージを
世界に泣いている人がいる限りは、心底笑えないと思うね。笑うためには、行動しろと言いたい。消費者のちからが強いから、まず賢い消費者になれと言いたいね。
──ありがとうございました
clubking公式サイト│http://www.clubking.com/