第11回 京都の銭湯へおいでやす(2)「感動の銭湯、船岡温泉」
第11回 京都の銭湯へおいでやす(2)
「感動の銭湯、船岡温泉」
独特の銭湯文化があるという京都。
銭湯といっても、ただの銭湯ではない。
じつに古都らしい、立派で高尚な雰囲気すら漂っている銭湯があるというのだ。
文=矢貫 隆写真=有本真紀
朱塗りの天井に、牛若丸と鞍馬天狗
東京の下町で育ち、当たり前のように銭湯に親しんできたせいか、僕は狭い家の風呂は苦手で、いまも銭湯通いをしています。京都でもそれは同様でした。
近所の山田湯に通い(1年ほど前に廃業)、山田湯の定休日にはあちこちの銭湯を巡り、そのたびに、京都の銭湯はじつに個性的だと感心したものです。
京都の銭湯には、東京では当たり前の、ペンキで描いた富士山の絵はないのだと聞きました。ペンキ絵の部分はタイル貼りで、たいがいの場合、タイル絵になっています。いくつかの銭湯にはタイル絵の富士山があるそうです。
僕が知っている「タイル絵の富士山の絵」がある銭湯「船岡温泉」。この銭湯を訪れたときは感動さえおぼえたものです。船岡温泉、とにかくすごいんです。
建物は文化庁登録の有形文化財で、外観は芝居小屋かと見まがうばかり。なかに入ると、さらに内装の立派さに驚かされます。
天井を見上げてください。朱塗りです。天狗の彫刻が目に飛び込んできます。よく見ると、それは牛若丸と鞍馬天狗、小天狗も彫ってあるではありませんか。
さらに、脱衣場を囲む欄間には戦争の様子を描いた透かし彫りがあるのですが、それは上海事変をモチーフにしたものだというような紹介記事を、たしか京都新聞で読んだ記憶があります。脱衣場なのに、えらく高尚な雰囲気が漂っているのです。
余談ですが、それを伝える新聞記事を読んだ翌日、僕ははじめて船岡温泉にでかけて行ったのでした。
ここを一番に紹介しないわけにはいかない
浴室内はごく一般的な京都の銭湯で、薬湯やジェットバス、もちろんサウナも完備。そして檜の露天風呂も。京都の銭湯には露天風呂はめずらしくありません。
銭湯めぐりをするようになって、『京都極楽銭湯案内』(林宏樹著、淡交社刊行)を買ったのですが、「由緒正しき京都の風景」なるサブタイトルのついたその銭湯ガイドの最初に登場するのが船岡温泉で、こう書いてありました。
「京都の銭湯案内で、ここを一番に紹介しないわけにはいかない……」と。
船岡温泉
住所|京都府京都市北区紫野南船岡町82-1
営業時間|15:00 - 25:00、日曜・祝日 8:00 - 25:00、無休
でんわ|075-441-3735
サイト|http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Desert/6711/