オペラシネマ 『魔笛』 がやってくる!(2)新進テノール、ジョセフ・カイザーについて
オペラシネマ 『魔笛』 がやってくる!
新進テノール、ジョセフ・カイザーについて
コンピュータ・グラフィックスを使い舞台を第1次世界大戦に置き換えたケネス・ブラナー監督、オペラ映画 『魔笛』 で、長身に甘いマスクの主役タミーノを演じているのがジョセフ・カイザーだ。
歌えるだけでなく、緻密な演技も要求される映画『魔笛』には、1000人以上の歌手たちがオーディションを受けた。まだ駆け出しのオペラ歌手だった26歳のカイザーはこの大役を獲得したのだ。
音楽監督ジェームス・コンロンとケネス・ブラナーが太鼓判を押すだけあって、新人離れした度胸と勘の良さで、斬新な演出の 『魔笛』 の主役を演じた。
『魔笛』 の宣伝に関わっている映画配給会社セテラ・インターナショナル社長の山中陽子さんによるジョセフ・カイザー氏インタビュー。
text by YAMANAKA Yoko
(Cetera International Managing Director)
オペラ映画 『魔笛』 で華やかなデビューを飾った
新進テノール、ジョセフ・カイザー
この映画の撮影に1年間費やしたのち、2007年ザルツブルグ・イースター音楽祭の『ラインの黄金』のフロー役で出演、夏の同音楽祭ではバレンボイム指揮の『エフゲニ・オネーギン』でレンスキーを歌うことも決まっているジョセフ・カイザー。
2003年まではバリトン歌手で、テノールに転向して4年目の新人としてはかなり恵まれたキャリアだが、もちろん実力が伴っているからこそ。
映画『魔笛』を経験した彼にとって、舞台で演じるオペラと映画との違いを聞いたところ、舞台では、その劇場の大きさに合わせた声を聴衆に届かせることを第一に考えるが、映画の場合は、カメラがどんなに小さな表情でも映し出すので、とにかく『真実』の感情を表現することを訓練させられたという。
その経験は、映画を体験した後に、劇場に戻ったときの役作りにも反映しているという。
世界に「開かれた魔笛」を
今回はどうやったら、いままでにない新しい『魔笛』が生まれるだろう、ということをスタッフ、歌手たちも念頭において、多くを話し合ってつくられた。
つまりオペラハウスに元来来る観客だけでなく、もっと広い観客の心をつかめる「開かれた魔笛」を目指したようだ。
そのために、シェイクスピア劇をみずみずしく現代に蘇らせた手腕が買われたケネス・ブラナーが監督に抜擢された。
オペラに詳しくない彼が演出することに対してカイザーは、ブラナー監督が『魔笛』の音楽を心から愛し、彼が独自の視点をもっていることだけで、十分だと言う。
同じことは夏に『エフゲニ・オネーギン』を指揮するバレンボイムにも言えるという。ロシア人でなくても、その作品への強い情熱と知識があれば誰よりも素晴らしい 「オネーギン」 を披露することが出来ると。
『魔笛』の撮影は最高25回も撮り直しをさせられて、こんなことは舞台では決してない! と映画の大変さを回想するカイザーだが、撮影は毎日遊園地に行くように楽しかったそうだ。
その楽しさは、映画を観ていて自然とこちらにも伝わってくる。
この後は、グノーの『ファウスト』、ペレアス、ドン・オッターヴィオなど歌う予定も控えつつ、いつの日か『ローエングリン』も歌いたいと夢輝かせる29歳である。
※着うた(R)も配信中!
http://www.toshiba-emi.co.jp/classic/mateki/
音楽監督・指揮 ジェイムズ・コンロン
演奏:ヨーロッパ室内管弦楽団
タミーノ:ジョセフ・カイザー(プラシド・ドミンゴ世界オペラ・コンクール受賞に輝く若手ナンバーワンオペラ歌手)
パミーナ:エイミー・カーソン(英国クラシック界の新星)
パパゲーノ:ベン・ディヴィス(北米ミュージカルスターとして活躍)
パパゲーナ:シルヴィア・モイ(北欧オペラ界から現れた新鋭歌手)
ザラストロ:ルネ・パーペ(当代髄一のバス歌手)
夜の女王:リューボフ・ペドロヴァ(欧米で活躍するロシア人ソプラノ)