OPENERS’ DOCTORS FILE 2|三康診療所歯科 田島医師
10年後を見すえた歯の治療 地域に根差した”口の健康パートナー”を目指して
“地域密着型”の開業医だったという父親のうしろ姿を見て育った田島直人医師。その父親と同じように、田島医師もまた、地域に根差した開業医として日夜奔走をつづけている。
Text & Photograph by TANAKA Junko (OPENERS)
―医者になろう、医療を目指そうと思ったきっかけは?
開業医だった父が日夜、患者さんの治療に奔走しているうしろ姿を見て育ちました。気がついたら、自然と医療の道に進んでいたという感じです。
―開業しようという思いが目覚めたのはいつごろですか?
父の影響もあると思うのですが、大学に入学してからすぐに「開業したい」という思いが芽生えはじめました。歯科の場合、今日治療したものが1年とか2年でまた悪くなる、ということはあまりありません。でも5年後、10年経ったときに大丈夫かどうか。それを見据えて患者さんと向き合い、本気で治療を提供するためには、しっかりと腰を据えて治療をおこなえる場所を構える必要があると思いました。
―ご自身の治療方針について聞かせてください。
予防重視の治療を心がけています。食べることは人間の本能のひとつです。もし、入れ歯が合っておらず、食事ができない、噛めない状態になってしまうと、ひどい場合は栄養失調になってしまうこともあります。それを未然に防ぐこと。患者さんに定期的にチェックに訪れてもらうよう、呼びかけること。そういったことを地道につづけることが大事だと思っています。
あとは、少しでも歯をきれいに見せるということですね。話し相手を見るとき、人は目から口元(歯)の順に目がいくといわれています。かぶせものにしても、入れ歯にしても、審美歯科ではないのですが、やはり少しでもきれいに見えるように治療をして、患者さんに笑顔を取り戻してもらいたいと思っています。
―健康な歯を維持するために、普段どんなことを心がければいいのでしょうか?
人間ドックや健康診断というのは、身体が健康なときにも受けるものですよね。見たところ支障はないけれども、本当に健康なのかをチェックするためのものです。
これと同じことが歯にもいえます。一度虫歯になってしまうと、その歯をもとの健康な歯に戻すことはできません。ですから、悪くなる前に予防することが大切なんです。たとえば3~4ヵ月に1回、歯医者で歯石取りをして、そのついでに歯の健康状態もチェックする。そうするだけで、ずいぶん歯を健康に保てると思います。
―それ以外にも、「これは普段から意識した方がいい」ということはありますか
歯に汚れがついてきたなと思ったら、きちんと歯医者できれいにする。意識的に固いものを噛むようにしたり、噛む回数を多くすることも大事です。
「噛む」という行為は、血流を増やして脳を活性化するといわれています。しっかり噛めば、唾液がたくさん出てきて、唾液のなかに含まれる酵素で食べ物を分解することができますが、逆に噛めないと、食べ物を丸のみすることになり、身体のなかに入っても栄養にならず、胃にも負担がかかってしまいます。
―患者さんとの印象深いエピソードはありますか?
はじめて来院されたときには、歯を痛めてしまい自分で歩くこともままならなかったほどの患者さん。3週間ほど食事ができなかったといいます。それが、入れ歯治療をした次の治療のときには、杖つきながらおひとりで来院されたんです。改めて、食べること、噛むことの大切さを感じました。
―医師としてやりがいを感じるのはどんなときですか?
患者さんから「痛みがなくなった」、「噛めるようになった」、「歯がきれいになって、自信をもって笑えるようになった」など、感謝の言葉をいただいたときですね。
人が人らしく生きるために、食事をすることはとても大切です。それを守るのが私たちの仕事。口のなかから地域のみなさんを健康に導く “口の健康パートナー”を目指して、これからも力を尽くしていきたいと思っています。