THEATER|渋谷慶一郎×初音ミクによる新作オペラ『THE END』
THEATER|コンピュータ制御された映像と音響による人間不在の“あたらしいオペラ”
渋谷慶一郎×初音ミクによる新作オペラ『THE END』
音楽家の渋谷慶一郎と初音ミクによる新作オペラ『THE END』が5月23日(木)、24日(金)にBunkamuraオーチャードホールで開催される。コンピュータ制御された映像と音響による人間不在の“あたらしいオペラ”の誕生だ。
Text by YANAKA Tomomi
「わたしは死ぬの?」と自問するミクの旅
ルイ・ヴィトンのアーティスティック・ディレクター、マーク・ジェイコブスと彼のスタジオチームが今年の春夏コレクションをもとに衣装提供していることでも大きな話題となった『THE END』。音楽家でありアーティストとしての顔をもつ渋谷慶一郎と、演出家や映像作家として活躍する岡田利規、映像作家のYKBXほか、時代の先端を担う気鋭のアーティストによるコラボレーション企画である。
『THE END』では、従来のオペラの中心となる歌手やオーケストラなどは一切登場しない。初音ミクによるアリアやレチタティーボ(叙述や会話の部分に用いられる朗読調の歌唱)、コンピュータによる音響、映像によってのみ物語が展開されていく。
クラシックやオペラの殿堂でもあるオーチャードホールには、10.2チャンネルのサラウンド音響と高解像度プロジェクター7台が持ち込まれ、電子の要塞化を実現。そのような環境のなかで「わたしは死ぬの?」と自問するミクの旅ははじまる。「死とは何か」「終わりとは何か」といった伝統的なオペラでみられる悲劇の構造を、初音ミクを媒介にして現代に読み替えるという試みがおこなわれている。
さらに、舞台美術はレム・コールハースのニューヨーク事務所の代表でもある建築家重松象平が手がけていることでも注目されている。11月13日(水)、15日(金)には、フランス・パリの名門劇場「シャトレ座」で公演がおこなわれることも決定した。初音ミクの新境地であり、オペラのあたらしい可能性の扉がいま開く。