連載・和醸和楽|「がんばろう! 東北」 第8回 宮城県石巻市の平孝酒造より東日本大震災のご報告
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2015年3月6日

連載・和醸和楽|「がんばろう! 東北」 第8回 宮城県石巻市の平孝酒造より東日本大震災のご報告

「がんばろう! 東北」 第8回

宮城県石巻市の平孝酒造より東日本大震災のご報告

こんにちは、平孝酒造の平井です。このたびの震災で被災したお酒を「震災復興酒 希望の光」として販売しています。このお酒は、平成23年3月11日の東日本大震災によって被災したお酒です。純米酒を中心に大吟醸や純米吟醸など、発酵中のお酒が被害にあいました。

文・写真=平孝酒造

発酵中の醪(お酒)の全廃を覚悟しました

震災直後、仕込み蔵は地震の揺れの激しさから、発酵中の醪(お酒)がタンクから溢れ、床一面、白い絨毯を敷き詰めたのかと、錯覚するような情景でした。溢れ出た醪は霧状になり、あたり一面に立ち込め、蔵の奥がよく見通せない状況で目の前の光景を疑いました。そして、溢れ出た醪が発生している音なのか、いままでに聞いたことのないような音が蔵内にこだまし、まるで醪の悲鳴のようにも聞こえ、何とも言えない恐怖感を覚えました。

建物のいたるところが壊れ、立ち入ることが困難になり、同時にライフラインが寸断し、発酵中のお酒の管理ができなくなってしまいました。何の手立てもできず、ただ、呆然と指をくわえて見守る日々がつづきました。一週間が過ぎても復旧のめどが立たず、発酵中の醪の全廃を覚悟しました。しかし、震災から2週間目、電気など一部ライフラインの復旧などが重なり、あきらめかけていた醪を、ついにお酒として甦えらせる日がやってきました。ただ、放置している時間があまりにも長く、垂れ口から搾り出されるお酒の品質がとても心配でした。

東日本大震災|平孝酒造04

東日本大震災|平孝酒造07

そのお酒はとても力強く生命力に溢れて……

しかし、我われの心配をよそに、そのお酒はとても力強く生命力に溢れ、我われに勇気と希望をあたえてくれました。本来の酒造りでは、いかによい酒を造ろうかとしのぎを削りますが、このお酒からは普段の酒造りでは味わえない感動をもらいました。

蔵のある宮城県石巻市はこのたびの震災で、壊滅的な被害を受けました。もちろん、弊社も甚大な被害を受けました。しかし、被災した石巻市の惨状を見たときに、弊社は本当に生かされたのだと、強く感じるほかありませんでした。普段の生活では感じ得ない、感謝の気持ちを強く痛感させられ、造り酒屋として何か地域に貢献できることはないか、自然と、そのような気持ちが芽生えてきました。そして、この気持ちを大事にしたいと考えるようになり、この被災したお酒を「震災復興酒」として販売し、少ない金額になりますが、売上金の一部を義援金として、私たちの住む石巻市に献金したいと考えています。また、我われが励まされた、このお酒をとおして、ご愛飲いただくすべての方々に“希望の光”をお送りすることができれば幸いに思います。

平孝酒造 平井孝浩
東日本大震災|平孝酒造09

平孝酒造
宮城県石巻市清水町1-5-3
Tel. 0225-22-0161
Fax. 0225-96-4456
日曜休

           
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