連載・和醸和楽|「がんばろう! 東北」 第6回 仙台の阿部八酒店より東日本大震災のご報告
「がんばろう! 東北」 第6回
仙台の阿部八酒店より東日本大震災のご報告
ご支援、ありがとうございます!
仙台の阿部八酒店です。まずは、このたびの大震災で被災された方々にお見舞い申し上げます。また、全国、世界の皆さまからのあたたかいご支援、本当にありがとうございます。
文・写真=阿部八酒店
これがあって助かったぁ、と思ったもの
3月9日のM7.3の地震は序章だったのでしょうか……。
3月11日のあの時間、2日前の余震かな? と思わせる小さな揺れは、後半一気に長くて激しい揺れになり、目の前の酒がつぎつぎと倒れ落ち、停電で暗くなった店内の光景は、私自身小学生だったときの宮城県沖地震を思い起させる、まさに悪夢を見ているかのようでした。
店舗前の通りに出ると、クルマも止まり、通行人も座り込み、シーンと静まりかえったようすは、まるで映画のワンシーンを見ているかのようで、不気味な静けさであきらかにパニック状態。
電気も止まり、テレビでの情報は得られず、情報はラジオで得ていました。電話もつうじないため、メールで家族の無事を確認し、ひと安心したところで、ある程度店内を整理して、まずは自宅に帰ることに。信号が消え、町の明かりはクルマのライトだけ、という異様な光景はこの世とは思えず。そして、まだその時点で津波がこんなにも巨大で甚大な被害をもたらしていたとは知らず……。
時間が経つにつれ、つぎつぎと情報が入るたびに、「うそだべ?」と思うほどの津波の被害。まさか、そこまで津波がきたの……と耳を疑うほどです。見慣れた光景、ときどき買いものに行っていた店のほとんどが変わり果てた状態に、あまりに非現実的で言葉になりません。
なによりもまず、家族のために
私自身、津波の被害がなかっただけでも幸いとしなくてはなりませんが、地震直後の食材、ガソリン、灯油の確保にはかなり苦労しました。大人だけなら我慢もできますが、食べ盛りの中2の息子、3歳の娘は空腹にはさせられないと思い、開くかどうかもわからないスーパーに2~3時間並んだり、食べられるものは手当り次第ゲットするといった感じで、でも“お一人さまどれか5品まで”など制限があったり。それでも「今日はバナナ買えたど~!」などと家族で喜んだものです。
また給油できるかどうかもわからないガソリンスタンドに、前夜の9時から翌朝の開店まで並び、それでガソリンも灯油も給油できたときの感動はたぶん一生忘れないでしょう。ガスも止まったので、風呂も入れず。しばらくは大丈夫、大丈夫と気を張っていましたが、さすがに10日目くらいに限界が来て、温泉だけ開放していた秋保の旅館へ。入浴の瞬間、風呂がこんなに気持ちいいものとはと、これも感動でした。
同時に、毎日風呂に入るのが贅たくにも思うようにもなり……、すべてに並んだ時間──延べ40時間は費やしているでしょう。
いま振り返ると、これがあって助かったぁ、と思うのが、クルマ用の携帯の充電器、反射式石油ストーブ(暖をとり、湯を沸かし、調理もでき)、あとは、やっぱり非常食(缶詰め、カップ麺、飲料水)と、避難グッズは用意していたほうがいい、と痛感しています。
ライフラインでは、電気、ガスよりも、水道に一番苦労しました。やはり最低でも風呂の水だけは流さないで残しておいたほうがいいですね。震災は、忘れたころにやってくる、ほんと油断できません。皆さまもお気をつけください。
有限会社 阿部八酒店
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