連載・和醸和楽|「がんばろう! 東北」 第2回 宮城の齋林本店より東日本大震災のご報告
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2015年5月25日

連載・和醸和楽|「がんばろう! 東北」 第2回 宮城の齋林本店より東日本大震災のご報告

「がんばろう! 東北」 第2回

宮城の齋林本店より東日本大震災のご報告

皆さまお元気ですか。宮城県の『齋林本店』 齋藤です。大震災から2ヵ月が経ち、ようやく落ち着きをみせてまいりました。当店の位置するところは大きな被害を受けた沿岸部より30分圏にあり、たくさんの方々とふれあい、そこで感じたことを書きたいと思います。少々、長くなりますが気長に読んでください。

文=『齋林本店』齋藤高史

「青空酒屋 齋林」を開店!

3.11 大震災 震度6強。長く強烈な揺れのなか、私はご来店のお客さまに覆いかぶさり守ることで精一杯でした。リーチイン(ガラス扉付きの什器)の上段からゴンゴンと私の背中に落ちてくるお酒。目の前でガシャガシャと落ちては割れていくお酒。どうしようもありませんでした。

外は、蔵が崩れ、土煙りでモヤがかかっているような状態……呆然としていた私ですが、急いで家族とスタッフの安否を確認し、ほっとした……そんな記憶が残っています。店舗は、2年前に改装したばかりで持ちこたえましたが、古い家屋、酒倉庫、蔵の被害が大きく避難所へ。

翌日より、日が昇るとともに片づけをし、日が沈むとともにロウソク生活でしたが……缶ビール、カップ酒、タバコ、ジュース、水など物資を求めるひとたちが絶えません。もちろん店内では、対応できる状態ではありませんでしたが、個人商店の稼働力を活かさねば!! と思い、店外の軒下にP箱(プラスチックコンテナ)やテーブルを設置し、「青空酒屋 齋林」を開店させて、一日も休まず営業をしておりました。

お酒を手にした瞬間、涙を流す方も

はじめは地域の方々から、日が経つにつれて、被害の大きい沿岸部の方々までたくさんいらっしゃいました。家族を亡くされた方、家を流され避難所もいっぱいでクルマ生活の方。おじいちゃん、おばあちゃんを親戚に頼み子どもを捜しに行く若い夫婦、山の中の避難所で物資が届かずガソリンを分け与えられみんなのために必死で食べものを探している方……お酒とジュースを手にした瞬間、少し安心したのか涙を流す方も……。

酒屋である私にできること。やはり、日本酒です! こんなときに、お酒なんて! と思う方もいらっしゃると思いますが、決して宴の酒ではございません。祝儀だけではなく不祝儀にも用いられるお酒。ひとの喜怒哀楽には欠かせないものだと思いました。ならばいまは、「安心とやすらぎ、そして明日への活力となるお酒」を! と思い、現場での提供プランを何通りか考え、提案し、受け入れてもらえるか確認をとったところ、OKをいただきました。瓦礫撤去でガソリンが底をつきみずから届けることができませんでしたが、はじめは90本。

和醸和楽|齋林商店 02

和醸和楽|齋林商店 03

日本酒は、まちがいなく支援物資になります!

トラブルはないか? 飲んでいただいたあとのようすを確認しながら2度にわたり、さらに100本づつ提供しました。「毎日が不安で疲れ果てているのにもかかわらず眠れなかったが、1杯のお酒でゆっくりと休めました」「不眠不休で働いている関係者のみなさんの活力になりました」「話をしなくなったお年寄りが、みんなの輪に入るようになりました」「一瞬ながらも、多くのひとに笑顔がもどりました」など、たくさんうれしい感謝の声を頂戴しました。「日本酒は、まちがいなく支援物資になります」。私は、そう思います。私が、そのようなことをしている傍ら、スタッフのパワフル垣崎は、黙々と瓦礫の撤去!

電気と水道ももどり、ガソリンパニックも緩和され、ようやく3月31日より配達をスタートすることができました。これから! ガンガンいこうー! と気合いを入れはじめたさなか……4.7 深夜の余震 震度6弱。縦揺れで、本震とは比べものにならないくらいパワフル。余震に備え、陳列棚と倉庫の在庫はロープで縛っていたので破損は最小限にまぬがれましたが、家屋、酒倉庫、蔵は、トドメを刺され全壊となり、さらに店内リーチイン・バックヤードのプレハブ冷蔵庫の配管がバラバラ、ファンが瓦礫で潰されて動かなくなってしまいました。「振り出しにもどってしまった」。さすがに、2度目は心が折れました。そんなとき、夜明けとともに「阿部勘酒造 三銃士」が、フル装備でヘルプに参上!

さらに翌日には、北海道から「そば居酒屋 翠明庵の吉田親方(オレンジの帽子のひと)」が! そして、当店のご意見番「ミスター渡辺氏(白てぬぐい)」が手伝いに来てくれました。さらに、軍手を手にたくさんのお客さまが「手伝います!」と……熱くなりました。涙が止まらず仕事になりませんでした。当然、折れた心は前よりも太い柱となり、揺るぎないものとなりました。

お見舞いに来ていただいた蔵元さん、そして酒屋さん。正直、つらい日々でした。でも、皆さまのお顔を見ることで元気になれました。ストロングな牛丼特盛も絶対忘れません。あっという間の2ヵ月間。現在は、倉庫のお酒の引っ越しを終え解体し、新倉庫のプランを打ち合わせ中です。

こごたの地酒屋 齋林本店
宮城県遠田郡美里町南小牛田字町屋敷124
http://www.sairin.jp/

           
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