連載・和醸和楽|第35回 「土佐しらぎく」ができること 仙頭酒造場
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2015年5月25日

連載・和醸和楽|第35回 「土佐しらぎく」ができること 仙頭酒造場

甘口辛口の風潮に惑わされないしっかりとした地の酒を

「土佐しらぎく」ができること 「仙頭酒造場」

「土佐しらぎく」は明治36年に創業いたしました。蔵は高知市と室戸岬のほぼ中間、海沿いののどかな田園地帯にあります。酒銘は初代仙頭菊太郎の菊にちなんで、また、白菊のように清らかできれいなお酒を醸したいという思いから命名されたそうです。

文・写真=和醸和楽

仕込水と酒米の個性を素直に酒質に表現させること

私(仙頭竜太)がこの小さな蔵で醸造の責任をとるようになってもうすぐ5年になるところです。家業がお酒関係だったわけでもなく、大学も文系だった私が縁あって日本酒造りという仕事に出会い、いまこうして自分の想いをお酒に伝えることができる立場にいることに、大きなよろこびと責任を感じる毎日です。

ひとりでも多くのひとに手造りの日本酒のよさを知ってほしい、そのために「土佐しらぎく」ができること(目指すこと)は飲みやすさ、わかりやすいおいしさ。このふたつを究極に追求していきたいと思っています。

「土佐しらぎく」が考える
「地酒」としての「土佐しらぎく」

1. 水と米の表情を素直にお酒に伝えること
2. 酒(醪)に必要以上のストレスを与えないこと
「地酒はその土地の気候風土が醸すもの。その個性に縁取りをくわえるのが蔵人の技術である」をモットーにしています。原料のなかで一番の割合を占める「仕込水」、その表情と酒米の個性を素直に酒質に表現させることを心がけています。

サクッと飲んでサックリおいしいお酒を目指して

個人的に一番強く意識しているのは、フランスなどの一部の生産者が提唱している「ヴィオディナミ」、いわゆる自然派のワイン造りの考え方です。

農薬の使用や化学的見地での技術操作を全面的に否定はしません。しかし実際に現地を訪ねてまわり、その「醸造酒」としての体力に深い感銘を受けました。複雑な発酵形態をとる日本酒であるからこそ、自然の恵みであるものの力強さを酒質のなかに表現しなければと考えています。

心にもからだにも優しいお酒、技術でアルコール度数、日本酒度を無理に高める(低める)のではなく、自然な味わいを感じていただけるように“五味の調和”を念頭においています。酒質を数値やデータで語らない、あくまでイメージするお酒造り達成のための一指針として考え、甘口辛口の風潮に惑わされないしっかりとした地の酒を目指していきます。

高知のお酒はいわゆる「端麗辛口」が主流ではあります。当蔵では飲みやすさは追求していきますが、その解決法として、「端麗辛口」を求めないことが最大の特徴ともいえます。またこれが、わかりやすいおいしさの達成へとつながるものとも思っています。

小難しいことを書きましたが、要は「サクッと飲んでサックリおいしい」です。お米の旨さというものは本当に幅広いものだということを、おいしい日本酒をつうじてみなさんに体感していただけたらと思います。
 
高知県 有限会社仙頭酒造場
(醸造責任者 仙頭竜太)

           
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