高橋理子|# 007  高橋理子の円と線、初めての韓国へ(前編)
FASHION / WOMEN
2015年5月25日

高橋理子|# 007 高橋理子の円と線、初めての韓国へ(前編)

初めての韓服づくり。新鮮な驚きと発見

高橋理子の円と線、初めての韓国へ(前編)

昨年の秋。ソウルに新しくオープンしたギャラリーでの個展開催と同時に、そのオープニングパーティーでの和服と韓服の簡単なショーを依頼された。もちろん、私は韓服を着たこともつくったこともなく、自分の国の民族衣装について学び、それを大切に考えてきているにもかかわらず、他国の伝統に安易な気持ちで触れることなどできない、いまの私には荷が重いと悩んだ。しかし、このような機会がなければ韓服について知ることなどないだろうと考え、挑戦することを決断。

文=高橋理子写真=川本史織

本質を捉え、いまを生きる私の韓服をつくる

まずは、韓国の服飾史や生活文化などの基本的な知識を得るところからはじめた。その上で、様々な韓服の写真を見てデザインを考えながら、実際の韓服をほどき、構造や仕立て方を調べる。さらに、モデルの方々のサイズに合わせて型紙を引くにあたり、できあがっているものだけを見ても理解できないことも多く、韓服のつくり方の本を取り寄せた。読めないハングル語との格闘。私には無理かもしれないと考えることもあったが、数字を追っていくうちに型紙の成り立ちが見えてきた。着物とは異なるやわらかい曲線のあるフォルムだが、裁断は直線で行なわれ、曲線のできあがり線で縫い上げたのち、余分な部分を裁ち落としている。チョゴリ(上着)の衿の形や合わせが着物と似ているとは思っていたが、できあがりの姿からは見えてこない部分がこれほど似ていることにとても驚いた。私が学んできた洋服づくりとも、着物とも異なる構造に、何度も挫折しそうになりながら、それでも知れば知るほど着物と似ている部分が見えてきて、新鮮な驚きと発見が私をつなぎ止めてくれていたように思う。

HIROCOLEDGE 高橋理子 Photo02

HIROCOLEDGE 高橋理子 Photo03

本質を捉え、いまを生きる私の韓服をつくる。そうでなければ、表面的な色や形をまねただけのまがい物になってしまう。歴史や変遷、T.P.Oなどについても考えながら、さらには、いまの韓国における韓服の在り方についても知る必要があった。私のつくる韓服が、その歴史や存在を汚すことのないよう細心の注意を払い、現地の服飾研究の専門家や韓服を着る機会の多い方、日本の韓服店の方にも意見をいただいた。長い歴史のなかで少しずつ変化し、いまでは色柄かたちもずいぶんと自由になってきている。それは、現代の日本における着物の存在と非常に似ており、たいへん興味深い点でもあった。

HIROCOLEDGE
http://www.hirocoledge.com/

           
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