萩原輝美|あたらしい服の表現をクチュール作品に込める
萩原輝美のファッションデイズ vol.110
あたらしい服のカタチに挑むクチュリエたち
マルジェラ・アーティザナル、ブシュラ・ジャラールなど、オートクチュールに巾と奥行きを与える中堅、若手デザイナーの新作コレクションをクローズアップ。
Text by HAGIWARA Terumi
渾身の解体―マルジェラ・アーティザナル
パリオートクチュールコレクションに参加しているのは、老舗ブランドばかりではありません。マルジェラ・アーティザナルは、コレクションをプレゼンテーションからショー形式で発表して4年。古着を解体して再生する服はまさに1点ものです。白シャツに白パンツで始まったコレクション。重厚なゴブラン織やビーズ刺しゅうのチュニックには白のニーハイブーツを合わせています。モザイクのようにパッチワークしたビーズドレス、スタジアムジャンバーにサテンスカートを付けたドレスはこれまでにない新しいソワレです。同時に発表されたファインジュエリーのテーマは「ヘリテージ」(遺産)。受け継がれるジュエリーを繊細でモダンに仕上げています。
プレタクチュールに挑むブシュラ・ジャラール
バレンシアガのメゾンでクチュールの素晴らしさを知り4年前からリアルクチュールを発表しているブシュラ・ジャラール。モーターサイクルジャケットと合わせるプリーツスカートやシガレットパンツはシンプルな街スタイル。糸からオリジナルで作る手作業の技を隠したプレタクチュールです。
ディーチェ・カヤックがたどり着いたシュールなクチュールドレス
ステファニー・クデールは5年ぶりにクチュールコレクションにカムバックしました。ゴージャスを狙うのではない品の良いコレクションです。プレタとクチュールでプレゼンテーションを続けていたディーチェ・カヤックは厳選した16点のコレクションを発表しました。ステージに立つモデルが着るのは見る角度によってフォルムが変わるアシンメトリーマジックドレス。サテン地を重ね縫い目を隠したシュールな造形服です。
黒白で描く“テーラードドレス”―ゴルチエ・パリ
ゴルチエ・パリは黒白を中心に得意なテーラードベースのドレスを並べました。オーガンジーを重ねたラッフル衿はしなやかに、シフォンのドレープスカートはエレガントに揺れています。スパンコール、ミンクのトリミングが鮮やかなコントラストを描きます。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/