萩原輝美|過去に遡ることが未来を築くこと―ディオールのラフ・シモンズ
萩原輝美のファッションデイズ vol.107
過去に遡ることが未来を築くこと―ディオールのラフ・シモンズ
2014年秋冬パリ・オートクチュールコレクションは、参加デザイナーが増えスケジュールも過密になりました。ハイジュエリーの発表も加わったラグジュアリーな6日間です。
Text by HAGIWARA Terumi
真っ白な胡蝶蘭の会場で、花のドレスで始まったディオール
2014秋冬パリ・オートクチュールコレクションです。ディオールはロダン美術館の中庭に、真っ白な丸いテントを設えました。室内は壁一面重なるように、白い胡蝶蘭が飾られています。
最初に登場したのは腰から大きく膨らませたドレスやバッスルスタイルです。クラシックなシルエットなのに、コンビネゾンに見えるスカート、袖には宇宙飛行士のユニフォームにつけられるワッペンが刺しゅうされています。「未来は過去の上に築かれる。ドラマチックで大袈裟ととられかねないものに、簡潔と無造作をもたらす、これがチャレンジでした」とアーティスティック・ディレクターのラフ・シモンズ。ムッシューデイオールにラフが重なります。
コレクションは8つのテーマに分けられ、クラシックとモダニズムが連鎖的に展開されます。ドレスの次には宇宙飛行士をイメージするジップと刺しゅうのコンビネゾン。パンツに合わせた量感たっぷりのファーコートの後には18世紀の宮廷人が着ていたシエイプドコートやジレなどがデザインされました。
この秋、プレタのトレンドはリアルモードに秘められたクチュールテクニックです。クチュールコレクションでは、さらに大胆にクラシックとリアルが交差します。白いドレスに合わせたまっ赤な靴が胡蝶蘭の花軸のようで印象的でした。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/