萩原輝美 連載 vol.158|KOCHÉ × FACETASM デザイナートークセッション
原宿とんちゃん通りでKOCHÉ(クリステル・コーシェ)のコレクション
パリに挑むFACETASM(落合宏理)
KOCHÉ × FACETASM デザイナートークセッション
KOCHÉが東京コレクションに参加するため春に続いて来日しました。デザイナー、クリステル・コーシェは「いまの時代、カルチャーや人種が混ざり合うことはとても重要だと感じています。東京で発表することはうれしいチャンス」と言います。ファセッタズムのデザイナー、落合宏理さんとは同い年、友人同士でありライバルでもあるふたりのトークセッションです。
Text by Terumi Hagiwara
LVMHのアワードで8人のファイナリストに残ったふたり
KOCHÉ (コーシェ)は10月建て替えられたばかりのパリ、レ・アールのショッピングセンターでコレクションを発表しました。「いい服を一部の階級の人たちだけではなく、みんなに見てもらいたい」という趣旨のもと、一般買い物客が通る中でのスタンディングショーです。そのKOCHÉが東京コレクションに招かれて初参加、会場に選んだのは原宿とんちゃん通りです。コレクションの前々日「東京のカルチャーが大好き」というクリステルさんとファセッタズム、落合宏理さんのトークセッションが実現。ファセッタズムは6月メンズコレクションでパリデビューしました。LVMHのアワードで8人のファイナリストに残ったふたりです。
萩原輝美(以下、萩原) 2人にとってパリコレクションとは?なぜパリなのでしょうか?
クリステル・コーシェ(以下、クリステル) パリのファッションはオートクチュールから始まり歴史があります。私はそのクチュール服をストリート感覚とモダンアートにつなげたい。それにはパリがふさわしいと思っています。もちろん私はフランス人ですから、自然なことですが。
萩原 落合さんはロンドンで発表することも考えていましたよね。
落合宏理(以下、落合) アルマーニの招待デザイナーとしてミラノコレクションに参加し、LVMHプライズに選ばれてパリで作品を発表しました。それまで海外との壁にコンプレックスを持っていたけれど、それがなくなったんです。自分で壁を作りすぎていたと気付いたんです。はじめはロンドンからとも思っていましたが、今のファセッタズムとってパリが一番結果を出せるところだと思っています。今、英語の勉強をしていますが…。
萩原 クリステルさんはクチュールの工房「ル・マリエ」のアーティスティックディレクターも務めていて、コーシェの作品にもその手技が生かされていますね。
クリステル オートクチュールはファッションでもありアートでもあります。私はコンテンポラリーアートにつなげて過去にない作品を作りたいんです。
萩原 オートクチュールはカストマイズの1点ものとも言えます。今、また見直されていますが、落合さんはオートクチュールについてどう思いますか?
落合:伝統をどう壊して、新しいものを作るかが僕らの使命だと思っています。クリステルさんの話を聞いて、オートクチュールに興味を持ちました。
萩原 服を作るのに一番大切なことは?
クリステル コレクションで何を伝えたいかが、一番重要です。パッション、フィーリング、メッセージ。そのために必要なのがカッティング、カラー、フォルムです。そして空間、着る人、全てがコレクションを特別なものにしてくれるのです。
落合 常にアンテナを張り、現状に何が足りないかを考えています。サンプルを作った後に自分の作りたかったものに気づくこともあります。
萩原 では、服を着ること。とはどんな意味を持つと思いますか?
クリステル 服は、自分のパーソナリティーを魅力的にみせるための最大のアイテムです。
落合 全てを受け入れてもらえるデザインをしているわけではないので、その違和感を埋めることを着ることで表現してほしいです。
萩原 90年代パリコレクションで、コム デ ギャルソンとマルタン・マルジェラがコラボしてショーを発表しました。
これは2人へのリクエストですが、コラボコレクションできたら楽しみです。
落合 ファッションは自由なので、いつか機会があれば。
クリステル 私のショーではいつもサプライズがあるので、できるかもしれませんね。
――トークセッションを終えて
KOCHÉのジャージードレスを着ました。肩が大きくカットされたアシンメトリーのデザインですが、きちっと肩にはまるのです。ウエストを絞るために何本も入ったダーツはきれいで心地よい。ボディを通してクチュール技の細やかさを感じました。くるぶしまでのロング丈に腿から入った深いスリット、マウンテンブーツをコーディネイト。パリで人気のKOCHÉと東京を代表するFACETASM、これからの2人のサプライズが楽しみです。
クリステル・コーシェ|Christelle KOCHER
KOCHÉデザイナー
1978年 フランス、ストラスブルゴに生まれる。
2002年 セント・マーチンズを卒業。ハイブランドでキャリアを積む。
2010年 メゾン ル・マリエのアーティスティックディレクターに抜擢される。2014年 「KOCHÉ(コーシェ)」をスタート。
2016年 Amazon Fashion Week TOKYO 2017S/Sにてコレクションを発表。
落合宏理|Hiromichi OCHIAI
FACETASMデザイナー
1978年 東京生まれ
1999年 文化服装学院卒業。
2007年 「FACETASM(ファセッタズム)」をスタート。
2011年 東京コレクションデビュー。
2016年 パリコレクションデビュー。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/