高橋理子|#017 高橋理子展覧会「ON PURPOSE」
FASHION / WOMEN
2015年2月20日

高橋理子|#017 高橋理子展覧会「ON PURPOSE」

「Impossible」と、「Impossible」が作りつづけるインスタントフィルムへ向き合った私の姿

#017 高橋理子展覧会「ON PURPOSE」

7月20日(金)から、中目黒のImpossible Project Spaceにて個展「ON PURPOSE」がはじまります。「ON PURPOSE」は私のプロジェクトのひとつ。モノづくりの背景に焦点を当て、生み出されるものへの向き合い方を再考し、固定観念を覆すきっかけを見出すための実験的な展覧会や作品の発表をしています。本展は、その第3弾となります。

文/写真=高橋理子

一度消え去ったものを蘇らせることは、容易ではありません

「Impossible」は、2008年のポラロイド社のフィルム生産停止を受け、インスタントフィルムの文化や技術を後世に残すべくオーストリアで立ち上がった、インスタントフィルムの再生産プロジェクトです。今回、そのインスタントフィルムによる展覧会のお声がけをいただき、その生産背景を聞いたとき、「Impossible」のインスタントフィルムが、私の身の回りにある手工芸品のように感じられました。

生産工場は、もともとポラロイド社の工場でもあった、オランダのフィルム工場のみ。原材料に限りがあるなかで、薬品をあらたに作るところからはじめたそうです。より良い製品を生み出すために改良を重ねながらの生産は、その時期によって科学反応のちがいは歴然。比較すれば明らかに進化していることがわかります。

以前のフィルムでは、色が出なかったり、現像液が均等に行き渡らずに画像が欠けてしまったりすることがあり、それを製品として販売するという状況は、完璧であることが当たり前の工業製品が多く流通する現代社会においては、特異なことかもしれません。しかし、30年以上のキャリアをもつ唯一の工場の技術を次世代に引き継いでいかなければ、このフィルムの歴史は途絶え、忘れ去られてしまう。これはまるで、日本の伝統技術を取り巻く世界のことのようです。

高橋理子|ON PURPOSE 02

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デジタルカメラに慣れてしまった現代だからこそ

一度消え去ったものを蘇らせることは、容易ではなく、私の身近なことで言えば、伝統工芸の技やその作品を復刻、復元することに、何十年もの時間を要することは少なくないのです。たったひとりでも技術を継承しているひとがいれば、そんな時間は必要なかったのにと感じることはしばしば。このフィルムがなくなれば、世界中でいまだ大切にされているポラロイドカメラは使えなくなってしまいます。懐かしい時間を思い出しながら使うひとや、デジタルの世界に慣れてしまった世代が、新鮮味を感じながら使うこともあるでしょう。アナログだからこその感覚をあたえることができるこのフィルムへの「Impossible」の情熱は、私にとってとても心地よいものに感じられました。それは、伝統技術を代々継承し、現代社会で奮闘する同世代の職人のようだと。

あと一歩で消えてしまいそうな伝統技術が日本にはたくさんあります。そして、それらを残していきたいと考え行動する人びとは、その存在が時代に必要とされているという信号をしっかりとキャッチしているのだと思います。たんにモノや道具として、現代の暮らしに合う合わないではなく、昔ながらの佇まいや、風格、その生産背景が、現代社会にもたらすものは、思考のあらたな道筋。そのように考えると、「Impossible」もまた、この時代にさまざまな問いを投げかける存在だと感じられるのです。

高橋理子|ON PURPOSE 04

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著名な写真家たちが、いまもなお魅了され使いつづけているインスタントフィルム。デジタルカメラに慣れてしまった現代だからこそ、再び必要とされているのかもしれません。それは最近、民藝や手仕事という言葉をたくさん耳にするようになったこととおなじ。あたらしい時代になったからこそ、過去を振り返ることができ、その時代の良さも見えてくる。私たちはそうやって、世の中のさまざまな物事のバランスをとっているのかもしれません。

今回の作品は、インスタントフィルムによる写真自体ではなく、「Impossible」と、「Impossible」が作りつづけるインスタントフィルムへ向き合った私の姿なのです。

高橋理子展覧会「ON PURPOSE」
会期|2012年7月20日(金)~ 8月5日(日)
会場|Impossible Project Space
東京都目黒区青葉台1-20-5 OAK BLD2F
営業時間|12:00~18:00(火・木・日)
12:00~20:00(水・金・土)
月曜休

問い合わせ
Impossible Tokyo
Tel. 03-5459-5093
http://www.the-impossible-project.jp

TAKAHASHI HIROKO
http://www.takahashihiroko.com/

           
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