萩原輝美 連載 vol.146|KOCHÉ クリステル・コーヘル インタビュー
FASHION / WOMEN
2016年5月13日

萩原輝美 連載 vol.146|KOCHÉ クリステル・コーヘル インタビュー

職人の技を盛って、目指すはマックィーン

クリステル・コーヘル インタビュー

KOCHÉ (コーシェ) はパリコレクションデビュー2シーズン目にして一躍注目されているブランドです。デザイナーはクリステル・コーヘルさん(38)フランス人です。ルイ・ヴィトンが毎年有望な新人に贈るLVMHアワードの今年のファイナリスト8人に選ばれています。3月の16-17AWパリコレクション初日、パリ下町サンドニ門近くのアーケードで全員スタンディングというゲリラショーを行いました。一流ホテルでセレブを集めるエスタブリッシュ(支配階層)へのカウンター(反発する)モードです。翌日早速ショールームで服を手にとって見ると、シルエッットを出すための丁寧なカッティングに手技の刺しゅうやパッチワークが施してあるクチュール服です。先日青山にオープンした新ショップ「H beauty&youth」の招きで来日。パリに続いて2度目のインタビューです。

Text by Terumi Hagiwara

ストリートをアートにつなげる

――東京は初めて?

2年前、2週間ほど直島のアートを見るため日本に来たんですが、東京は初めて。

――島ごとアートの直島ですね。

私が目指すファッションは、クチュール服をストリート感覚とモダンアートにつなげること。モダンアートは私にとってとても大切です。

――どんな少女でしたか?

絵ばかり描いていました。8歳くらいのときかなぁ、デザイナーになりたいと思ったのは。

――ロンドンのセントマーチンを選んだのは?

ガリアーノにマックィーンが卒業した学校、それだけで私には十分な理由でした。

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デザイナー クリステル・コーヘル

――メティエ・ダール(職人の手仕事)に興味を持ち始めたきっかけは?

いくつものラグジュアリーメゾンでアシスタントデザイナーをしましたが、影響を受けたのはボッテガ・ヴェネタとドリス・ヴァン・ノッテンです。このメゾンを支える職人たちの技術は、時にマジックとして商品に魅力を与えてくれるんです。職人たちとやり取りすることが楽しくて…。6年前、ルマリエ(シャネル傘下のコサージュなどを作るアトリエ・メティエダール)からアーティスティック・ディレクターの誘いがあり喜んで受けました。今もルマリエの仕事は続けています。

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パリのショールーム

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――クチュールブランドからオファーがあったら受けますか?

もちろん受けたい。ガリアーノやマックィーンもクチュールを手がけたし。でもKOCHÉを続けることが前提です。彼らが出てきた頃と時代は違うし、自分自身のビジネスもクリエーションしたい。

――ショー会場はいつも風変わりなところです。次も驚かせてくれるのかな。

ちょうど今考えているところ。ショーやビジュアルを演出するパートナーのジュリアン、他にカメラマンや音楽などKOCHÉのチームでいつも新しいことを起こしたいと思っています。きっとストーリーのある素敵な場所になりますよ。


東京滞在3泊5日のタイトなスケジュールの中でのインタビューでした。「ハイファッションの服を一部のクラスの人ではなく、みんなに見てもらいたい」階級や国や文化も全てクロスオーバーにしたニュー・ラグジュアリーを目指すというクリステルさん。アーケードでのショーの最中に、インド料理食堂のおじさんがペットボトルぶら下げて覗き見する姿も…。私のお気に入りの1着は、レースやスパンコールに加えビニールまで小さなパーツを手でパッチワークしたコート。裏はジャージーでモダン、着心地も軽快な1点です。慎重に選んで大切に着る。そんなブランドです。

萩原輝美

萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/

           
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