2016年秋冬「ロンドンコレクション」リポート(2)|JOHN LOBB
JOHN LOBB|ジョンロブ
2016年秋冬「ロンドンコレクション」リポート(2)
注目の新作が揃った、レディ・トゥ・ウェア(1)
クリエイティブ・ディレクターのパウラ・ジェルバーゼが初めてビスポークを手がけた「アルティザンシリーズ」が注目を集める中、2016年秋冬「ロンドンコレクション」ではレディ・トゥ・ウェアも発表された。美しいだけではなく、靴としての機能をさらに高めたという新作と、それを可能にした「ジョンロブ」の新しい技術を紹介する。
Photographs by FUJIWARA YuText by ITO Yuji
キーモデルとなるのは「アルダー」
英国にある湿地帯、ダートムーアにインスパイアされた今季のコレクションを象徴するモデル、それが「アルダー」だ。外見上はチャッカブーツとマウンテンブーツをミックスしたような風貌だが、スマートなトゥの作りは「ジョンロブ」らしいドレス感が漂う仕上がりとなっている。コアコレクションとして定番のドレスシューズを展開しつつも、シーズナブルコレクションで「アルダー」が発表されたのは、実に興味深い。
というのも、ここ数年、メンズファッションにおいてスポーティや軽快感といったテイストが注目されているからである。その方向性に対する「ジョンロブ」ならではのひとつの回答、それが「アルダー」が持つ意味でもあるのだ。しかし、そのデザインはトレンドに迎合するために作られたものではない。あくまでも「ジョンロブ」の新しい顧客たちに向けられたものである。
考えてみれば、ワードローブにおいてはドレスアップのための服があり、一方で休日を過ごすためのカジュアルな服もある。それらのすべてのシーンにふさわしい靴を「ジョンロブ」は用意しているのだ。
見かけ倒しではない、作り込まれた機能性
新作の「アルダー」は、新しいラバーソールとしてコレクションで登場した「バルモラル」シリーズにあたる。素材はミュージアムカーフにウォータープルーフ加工を施し、さらに細かな型押しをあしらったキャビアグレインとスムースレザーのコンビシューズとなっているものの、その違いはさり気なく、アンダーステイトメントの範疇に収められている。
またバルモラルのラインに沿って細かなギンピングが縁取りされており、タンの部分は防水性を高めるために靴と一体化されている。このことからも「アルダー」が耐久性にこだわって作られていることがうかがえる。さらに外見上大きく目を引くパラジウム製のレースフックとアイレット、はき口部分のクッションといったディテールは、1940年代にビスポークで作られたスキーブーツにインスパイアされたものだという。
現代的な服に似合うデザイン性だけではなく、随所に「ジョンロブ」らしい技術と素材に対するこだわりが注がれた「アルダー」は、次なる秋冬シーズンにおけるマストアイテムとして、足元に洗練されたイメージをもたらしてくれるだろう。
Page02. 6カ月を費やして開発された「テンシル・コンストラクション」とは?
JOHN LOBB|ジョンロブ
2016年秋冬「ロンドンコレクション」リポート(2)
注目の新作が揃った、レディ・トゥ・ウェア(2)
軽さと快適性にこだわった末の結論
「ジョンロブ」の新しい仕様として注目したいのが、ライトウェイトスエードと新素材となる大きめのシボが入ったムアランド(湿地)グレインを使った新作に見られる「テンシル・コンストラクション」だ。こちらもシーズンテーマとぶれることなく、さらなる軽さと機能性を求めて開発されたもの。
グッドイヤーの堅牢性としなやかさを両立させるために費やされた期間は約6カ月。見た目にはわからない快適性という機能を実現できたのも「ジョンロブ」が擁する職人の技術があるからこそといえる。実際に見えない部分に使われているスティフナー(補強材)などのパーツ類を極力小さく削ることで、この新しい仕様は可能となったのだ。
人気のスニーカー「LEVAH」に新素材が登場
昨年の春夏モデルのなかでも、特に人気が高かったモデルが1923年に作られたテニスシューズにインスパイアされた「LEVAH(レヴァー)」だ。2016秋冬コレクションでは、ムアランドグレインを使ったモデルが登場する。デザインはローカットとミッドカットの2種類で、会場ではホワイトのラバーソールとナチュラルカラーのソールが展示されていた。
この「レヴァー」のアップデートも軽さを追求したもので、人気の高い定番モデルも進化できる部分があれば、積極的に取り入れてゆくという「ジョンロブ」の揺るぎない哲学を感じ取ることができる。
デザインという表面的な部分にとらわれることなく、靴が本来もつべき機能、そして快適性といった部分を見つめ直した2016年秋冬コレクション。ダートムーアの花崗岩を模したオブジェの上に飾られた新作の数々は、イノベーションにこだわり続ける「ジョンロブ」の新たな魅力を教えてくれた。