来春夏デビューのシューズブランド「カチム」の靴づくり|KATIM
FASHION / WOMEN
2015年11月4日

来春夏デビューのシューズブランド「カチム」の靴づくり|KATIM

KATIM|カチム

ウィメンズのレディトゥウェアと、メンズ・ウィメンズのメイドトゥオーダーを展開

デザイナー小坂英子が語る新シューズブランド

代表でデザイナーでもある小坂英子氏にブランド名「KATIM(カチム)」の意味を尋ねると、「これは造語で、フットステップの音のイメージなんです」との答え。来春デビューするシューズブランドは、ジェイアール京都伊勢丹でのポップアップショップのほか、DEA LUMP(デア・ランプ)やSTEVEN ALAN(スティーブン アラン)など取引先も決まりつつあり、ファッション業界でも注目を集めている。

Text by KAJII Makoto (OPENERS)

データを収集してオリジナルの木型を製作

カチムを立ち上げたデザイナーの小坂英子氏は、幼少期をロンドンで過ごし、学生時代からストリートブランドなどの販売員を経験。大学在学中にロンドンへ留学し、卒業後は国内外のブランドで海外生産管理や海外セールス、デザイナーアシスタントなどを務めてきた。

「年齢を重ねると着る服のテイストが変わってくるのは、多くの人が経験することかと思います。自分自身もブランドにこだわるというより、自分らしいと思う服を身につけるようになってきました。ファッションアイテムのなかで唯一痛みを伴いやすい靴は、コーディネートにスパイスを与えてくれるものであると同時に、人間工学的にも整形外科学的にも、勉強する必要とその価値がある存在である。ワードローブのひとつとしての靴をつくることが、自分のなかでしっくりとくるようになるほどに、そう思うようになったのです」と小坂氏。

カチムの靴への取り組みですばらしいのは、なにより年代別に足型データを収集し、そのデータを解析し、算出した規定値をベースに、現代人の足の特徴とライフスタイルを捉えたラスト(木型)を製作することからはじめたこと。

「靴を履いてなぜ痛いかを調べたくて、データを解析してみようと思たのです。平均的な足の形状がわかったところで、木型を削っているパートナーと実際にラストの製作に着手しました。デザインを盛り込んだラストができたら、踵(かかと)にヒールの高さをつけて、さらし布を巻いて鉛筆でデザインを描き、可能なかぎり立体的かつ工業的な生産背景で機能する型紙を、熟練した職人の方と考案しました。そして、それぞれのモデルのコンセプトとデザインに合ったマテリアルを選び、組み立てました。デザインと機能のバランスがとれるよう、論文からヒントを得たり、人間工学の教授にアドバイスをいただいたりしながらデザインを侵さないよう修正を重ね、最初の一足をつくりました」。小坂氏は製作の経緯についてそう語る。

そうしてブランドデビューのめどが立ったのが今年の4月。9月にファーストコレクションとなる2016年春夏コレクションを披露した。

KATIM|小坂英子

KATIM|小坂英子

デザイナーにゆかりのある道をモデル名に

カチムはウィメンズの既製靴(レディトゥウェア)と、メンズ・ウィメンズのメイドトゥオーダー(セミハンドソーンウェルテッド)の2ラインでスタートする。ところで、カチムの各モデルには印象的な名前が与えられている。「どこか懐かしいようなクラシックな雰囲気のDURHAM(ダーラム)は、私が幼少期にロンドンで住んでいた家の前の道、BELLEVUE(ベレヴー)は、パリの景色がきれいな散歩に最適な道、そしてDENDO(デンドー)は、東京・目黒にある坂の多い道の名前ですが、いずれも思い入れのある大好きな道です」と語るように、それぞれの道のイメージにインスパイアされて名づけたという。

ドイツの整形外科靴技術者の証明である「整形外科靴ゲゼレ国家資格」も保持する小坂氏。「足が痛いと、一日の予定がままならないですよね。たとえばモデルBELLEVUE(ベレヴー)はスエードを使用していて、センターシームからスリットに繋がっており、ハギのない高級感ある仕様ですが、結果として、個性の範囲内の軽度変形(軽度の外反母趾など)のある足にも履きやすく柔らかい靴になっています。そういう機能美とデザインの相乗効果にくわえ、アクセントにスキンステッチやチェーンステッチを入れたり、カーフ素材のトゥとヒール部分にハイシャイン(磨き)を入れたり、上質なカーフでメッシュを表現したり、素材と手仕事、そして現代的なコーディネートに仕上げるデザインにもポイントを置いています」

KATIM|小坂英子

KATIM|小坂英子

「私自身、グラマラスな靴やトレンドの靴も好きですが、カチムの表現には飽きのこないトラッド、クラシックなものが根底にあります。オーダーメイドで長く履いていただく、長く育てていく靴も提案したいと思いました。そのときを楽しむパンプスについても、トラッドな靴についても、いわゆるコンフォートシューズではなく、あくまでファッションアイテムの範疇のなかで、足アタリの良いラストを完全なるオリジナルで企画制作しています」。メイドトゥオーダーをデビューと同時にはじめる理由についいて、小坂氏はそう答える。

小坂氏は、「カチムでは、素材と手仕事の組み合わせからなる高級感にくわえ、足の形状が平均値から外れる方やヒールが苦手な方にも無理なく履いていただけるようなラストのバリエーションを拡大して、よりブランドとして成熟できるようこれからも精進していきたいです」と意気込みを語った。

問い合わせ先

KATIM

info@katim.sc

http://www.katim.sc/

           
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