萩原輝美 連載 vol.126|コレクションのルーツに迫るメゾンの展覧会
コレクションリポート「ランバン」「ルイ・ヴィトン」
パリのトップブランドが相次ぎ展覧会
メゾンの過去とアートからコレクションのルーツに迫る
ランバンとルイ・ヴィトン。パリコレを代表する二つのブランドがそれぞれ美術館で展覧会を仕掛けています。トレンド先取りの目新しさより、変わらぬスタイルを全面におし立てたブランドストーリー。そんな流れが強まる中での展覧会がパリのファッショニスタたちの注目を集めています。
Text by HAGIWARA Terumi
ジャンヌ・ランバンとアルベール・エルバス
毎シーズン大きく変わるわけではないのにいつも新鮮なコレクション。そんなスタイルを持ったデザイナーのひとりがランバンのアルベール・エルバスです。
2月パリコレクション期間中にパレ・ガリエラ(服飾美術館)でランバンの創始者“ジャンヌ・ランバン展”が始まりました。1868年パリで生まれたジャンヌは1946年78才で亡くなる前年まで作品を発表しつづけます。そんな元祖キャリアウーマンの姿が白黒フィルムに収められています。
作品のほとんどは当時、美術館に保存するために製作されているので傷みのない完璧な保存状態です。そのデザインの斬新なこと!アルベールの得意なリボンを接ぎ合わせたドレスやレースのローブなどはジャンヌの作品にルーツがありました。
2015-16年秋冬コレクションでアルベールは自分のヒストリーを遡り、故郷チュニジア、モロッコをイメージした作品を並べました。エキゾチックなプリントやパッチワーク、フリンジ使いのドレスをモダンなランバンコレクションに仕上げたのです。
フォンダシオン・ルイヴィトンでのショー
ニコラ・ジエスキエールがデザインするルイ・ヴィトンは先シーズンオープンした“フォンダシオン・ルイヴィトン”の前に未来的円形会場を設えました。アニマル柄のファーコート、レースやニットドレスにはヴィトンのルーツ、トランクをイメージしたバッグを合わせています。ルイ・ヴィトンレディの完成です。
最終日10:00スタートのショーの後、14:00までフォンダシオン(モダンアートの美術館)の中を貸切見学という粋な計らいです。ブローニュの森から見るエッフル塔。裏手には馬場が広がり、建築家フランク・ゲイリーの建物のあちこちからパリの歴史がのぞきます。館内には星付レストラン「ル フランク (Le Frank)」もオープン。ファッションから広がるパリの見所がまたひとつ増えました。
ジャンヌ・ランバン展は2015年8月23日まで。フォンダシオン・ルイヴィトンは6月3日から所蔵コレクションの中から「ポップ主義」「音楽/サウンド」をテーマとする作品展が始まります。こちらは7月6日まで。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/