ランバン コレクションの価値をともに支える “岩手モリヤ”という品質・後編|LANVIN COLLECTION
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2024年3月29日

ランバン コレクションの価値をともに支える “岩手モリヤ”という品質・後編|LANVIN COLLECTION

Presented by LANVIN

LANVIN COLLECTION|ランバン コレクション

ランバン コレクションの価値をともに支える “岩手モリヤ”という品質

20年以上にわたって「ランバン コレクション」の主にジャケットやコートを生産する岩手モリヤ。前編では最新鋭のマシンが駆使された前処理工程の様子をレポートしましたが、後編では多くの職人さんが腕をふるう縫製エリアへ。ランバン コレクションからのハイレベルな要求に応えられる技術力の源は、自社で育てる人の力にありました。

Text by OSUJYO Ryouta|Photographs by CHO Uki

婦人製造技能士の有資格者が多数在籍

ほこりの侵入を防ぐビニールカーテンをかきわけると、そこからは縫製エリアです。前処理工程とは雰囲気ががらりと変わり、4つのラインでたくさんの職人さんたちがミシンやアイロンを操っています。
「岩手モリヤの売りは技術力です。現在、厚生労働省認定の国家資格である婦人服製造技能士1級の資格を有する職人が10名、2級取得者は26名在籍しています。技能士の有資格者が全体の4割を超える縫製工場は珍しいと思います」

ランバン コレクションにも生かされる、岩手モリヤの技術力を物語る2つの工程

「ハ刺し」と「クセとり」は、岩手モリヤの技術力がうかがえる工程です。
ハ刺しとは、スーツのラペルの裏側に入れられた、芯地と生地を縫い合わせるために入れられた八の字の縫い目のこと。ランバン コレクションのジャケットにも多く取り入れられている技術です。
「メンズの高級スーツに見られるもので、レディースのジャケットでは珍しい仕様です。こうすることで衿のロールが美しく保たれ、また、湿気で芯地と生地が分離するのを防ぐことができます」
 
クセとりとは、服のパーツを縫い合わせる前に、アイロンでパーツにクセをつける作業。こうすることで生地に立体感が生まれ、体へのフィット感が高まります。ただ、高度なテクニックと手間が必要とされるため、既製服ではあまり行われません。このひと手間がランバン コレクションの着心地の良さを追求したジャケットには大切な工程です。
「前身頃と後ろ身頃、両袖のアーム部分にクセとりを行います。これをやるかやらないかで、仕上がり時の着心地のよさやシルエットの立体感が格段に変わります」
 
「ただ、品質や生産数を安定させるには、人の経験や勘、テクニックに完全に頼っていてはいけません。目指すところは、100%の品質を持つ製品を短いサイクルで生産すること。そのために機械も積極的に活用しています。現在は製品の出荷まで3日間で生産できるようになりました」
取材時に2024SSシーズンのコレクションの生産も進んでいた。
従業員一人ひとりにタブレットを配布することで作業の状況や生産数といった情報を共有。組み立ての工程には、シワができないイートンと呼ばれるハンガーシステムが導入されています。
「この人の存在なしには今の岩手モリヤはなかった」と森奥さんにいわしめる下館るり子さん。50年に及ぶ縫製のキャリアと婦人服製造技能士1級を持つ。日本ファッション産業協議会(JFIC)によるJクオリティー・アワード2019「ものづくりの達人たち」の大賞15人に選ばれた。現在は後進の育成に力を注ぐ。
「もの作りは結局のところ人。最新の設備で品質と生産効率を高めれば、人を育てる余力が生まれる。そして人が育てば、品質が上がり、売り上げが伸びて、設備に投資ができます」

仕様書にはない作業が生み出す高付加価値

「ランバン コレクションというブランドの価値は、岩手モリヤさんという縫製工場の技術力と経験値によって生み出されるたしかな品質によって支えられています」
そう語るのは、ランバン コレクションの企画チームで生産を担当する辻 直人さん。
「岩手モリヤさんにはいつも難しいリクエストを実現していただいています。だからこそ、デザイナーは常に新しいチャレンジができ、みずからのクリエイティビティを存分に発揮することができるのです。毎シーズン、ひとつひとつの積み重ねがブランドの基礎となります」
そんなデザイナーの想いは仕様書に込められる。仕様書とはブランドが工場サイドへ送る、服を作るための指示を記した書類のこと。
たしかに、工程を追っていくと、生地の実験やCADデータの修正、八刺し、クセとりといった仕様書にはない独自の作業が行われていることがわかります。
ランバン コレクションの次シーズンのジャケットを調整する婦人服製造技能士1級下館るり子さん。
「信頼関係を築くことができる、ということが何よりも重要です」
ジャケットの生産依頼を受け、岩手モリヤがランバン コレクションを手掛けるようになったのは、今から遡ること21年前。
「ありがたいことに、ランバン コレクションは、我々のもの作りの姿勢をクオリティという価値として高く評価してくださっています。今では信頼関係を超えて、ともに『モノづくり』を追求するプロフェッショナルな関係を築いています。ランバン コレクションの『モノづくり』に携わるデザイナーやパタンナーの想いを感じとり、そこから生まれる私たちのランバン コレクションに対する愛情は、けっして『仕様書』や『パターン(型紙)』だけでは作り上げることの出来ない、“純度の高い付加価値”となっています。
ランバン コレクションのスタッフはみんな『モノづくり』に真剣です。彼らが切磋琢磨する姿を見て私たちも本気になり、そのこだわりに真剣に応えるために、技術を継承し続けてきました。
『技術』というのは、継承し続ける事に意味があります。
難しいからと言って諦めたら、その瞬間から技術が無くなっていくのです。私たちはこれからも『モノづくり』にこだわるランバン コレクションと歩み続けられるように、さらに進化したいと思います」
森奥さんは工場を見渡して言う。
「生産の効率化と品質の両立は当たり前のこと。これからの時代で求められるのは、職人が自分で考え、行動することで、いかにブランドの付加価値を高められるか。これが日本のもの作りが世界と勝負していくうえで、重要な鍵になると思います」
OPENERS取材班は、高度なクリエイティビティと作り手の品質へのプライド。その2つが信頼という架け橋で結ばれた時、商品は“作品”へと昇華する。ランバン コレクションというブランドの価値は、「技術者のあくなき追求」の融合が、根底にあることを気づかされた。
2024SSシーズンのメインビジュアルにも岩手モリヤで生産されたジャケットが使用されている
(衣装クレジット)ジャケット¥132000
問い合わせ先

ランバン コレクション 
Tel.0120-370-877(月~金 9:30~16:30 ※祝日を除く)
https://www.lanvin-collection.com/
Instagram : https://www.instagram.com/lanvincollection/

                      
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