特集|ヴィンテージから新作まで、いま欲しいのは “クラシックな眼鏡” Vol.01「ラウンド」
FASHION / MEN
2015年6月16日

特集|ヴィンテージから新作まで、いま欲しいのは “クラシックな眼鏡” Vol.01「ラウンド」

特集|いま欲しいのは “クラシックな眼鏡”

ヴィンテージから新作まで、厳選のラインナップ

第1回「ラウンド」

いま、40年周期で訪れているという眼鏡のトレンド ―― それはクラシックへの回帰。今回の特集では、1930年代を出発点に、時代のなかで “クラシックな眼鏡” として流行を生んだ「ラウンド」「ボストン」「ブロウ」の3型に注目し、その魅力を全3回の連載でお伝えする。

本特集は、ヴィンテージアイウェア専門店「ソラックザーデ」との共同企画。同店が所蔵する1万本以上のアンティーク、ヴィンテージのなかから歴史的に重要なアイテムをピックアップし、オーナー・岡本龍允氏の監修のもと、それぞれのルーツを紐解き、各スタイルの発生から変遷をたどる。第1回となる今回は「ラウンド」。いわゆる「丸眼鏡」の話をしたい。

Photographs by JAMANDFIXText by OPENERS

眼鏡の原型 “丸いレンズ” を残したプリミティブなデザイン

クラシックな眼鏡のトレンドについて、1930年代をスタートと考えると、40年周期で訪れていることがわかる。反戦思想のヒッピーたちによるフラワームーブメントが隆盛を見せた1970年代、そして、トレンドの存在が稀薄となり、スタンダードなファッションが定着した2010年代だ。その代表格として挙げられるのが “丸いレンズ” により、ほかにはない個性を感じられる「ラウンド」の眼鏡。

現在、各国で史料として発見されている最古のものとして、顔に装着する両眼用の眼鏡は、真円のレンズを用いたものが多い。世界的にも真円や、それに近い円型のレンズをもつラウンドの眼鏡にプリミティブな印象がもたれているのは、それが眼鏡の原型であるという事実があるからだろう。

第一次世界大戦後のメディアが発達した時代において、このラウンドの眼鏡をアイコンとして活用した人物がいる。それは1930年代のアメリカの喜劇役者、ハロルド・ロイドだ。

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フランク・ロイドのものと同型の眼鏡(1905年)

恐慌に突入した世界で、人びとに笑顔を届ける喜劇役者は人気を集めていた。そのなかでロイドは、当時の映像業界では光を反射するためタブーとされていた眼鏡を、個性を演出するためにレンズを入れずに着用していたという。つまり、彼は眼鏡をファッションアイテムとして取り入れていたのだ。そのルックスはメディアを通して広く認知され、「ロイド眼鏡」という世界的な流行をもたらした。

'40年代の後期、ニュールックの登場からファッションシーンも盛り上がりを見せる。眼鏡やサングラスにも、デコラティブなデザインが多数登場。そんななか、ラウンドの眼鏡はクラシカルなアイテムとしての地位を確固たるものとしつつ、多様化するデザインのなかの選択肢のひとつとなった。

そして'60年代後半から'70年代にかけて、ラウンドのレンズはふたたび注目を集める。それは、ベトナム戦争を背景としたヒッピーカルチャーによるもの。

当時、「ビートルズ」のメンバーであるジョン・レノンは、反戦思想からヒッピーたちの共感を呼び、象徴的な存在として奉られていた。メディアに登場した彼は、当時、英国の国民保健サービスで安価で手に入った丸いレンズの眼鏡をかけていたといわれている。セレブリティにもかかわらず、高価で貴重なものにとらわれないその消費にたいするスタンスも支持され、フォロワーを生んだのだった。

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ボシュロム(1960年代)

さらに、ファッションショーにもヒッピームーブメントは影響をあたえていた。『武器ではなく、花を』というスローガンのもと、ヒッピーたちは反戦運動のモチーフとして花を用いた彼らは「フラワーチルドレン」と呼ばれ、ファッションシーンにに影響を及ぼしたのだ。

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クリスチャン・ディオール(1960年代後期)

「クリスチャン・ディオール」は、アイウェアのデザインにその時代性を投影した。それはムーブメントが巻き起こっていた'60年代後半のこと。また、'70年代のモードシーンはコンサバティブなルックが多数登場しており、その象徴としても、ラウンドのアイウェアは流行していた。

 

'80年代になると、「アランミクリ」の台頭により、モダンなデザインの眼鏡が普及しはじめる。装飾的な要素としての眼鏡はこれまでも作られてきたが、現代アートを思わせる新鮮な造形は、眼鏡のあり方にコンテンポラリーというあらたなジャンルを生み出した。

そして2010年代、ファッションデザイナーのトム・ブラウンのコレクションに代表されるアメリカントラディショナルのリバイバルにより、クラシックなアイウェアがフィーチャーされている。日本でも、アイビーをはじめとするトラッドなファッションが注目を集めたことにより、ストリートでもラウンドの眼鏡はスタイリングに欠かせないものとなった。

歴史のなかでアイコニックな存在感を築いてきたラウンドの眼鏡。時代が変わっても、単純明快なデザインだからこそ、道具としてのプリミティブな魅力をはなちつづけている。

いま手に入れるべき「ラウンド型」の眼鏡8本

以下でセレクトした眼鏡は、現在、発売されているもの。老舗から新鋭のブランドまで、各国からさまざまなデザインが揃った。大人の男性が楽しめる、味わい深く、実用的な8本を紹介する。

眼鏡特集

伝説の英国人デザイナーによる一本
01 Lawrence Jenkin Spectacle Maker

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アンティーク調の繊細なモデル
02 Lunor

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前近代的なレトロさ
03 Jacques Durand

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日本最古の眼鏡メーカーの自信作
04 MASUNAGA G.M.S.

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存在感のあるラウンドフレーム
05 Lesca Lunetier

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老舗ブランドによる飾らない一本
06 Oliver Goldsmith

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'70年代の眼鏡がデザインソース
07 Savile Row

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スタイルを問わないデザイン
08 Oliver Peoples

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