アーティスティック・ディレクター、パウラ・ジェルバーゼが語る新生ジョンロブ(1)|JOHN LOBB
JOHN LOBB|ジョンロブ
アーティスティック・ディレクター、パウラ・ジェルバーゼが語る新生ジョンロブ(1)
パウラ・ジェルバーゼと漕ぎ出す、ジョンロブのあたらしい旅
「JOHN LOBB(ジョンロブ)」の日本での2015-16年秋冬コレクションのプレゼンテーションのために、アーティスティック・ディレクターに就任したパウラ・ジェルバーゼさんが来日。“いままで見たことのないジョンロブ”として世界中のメディアを驚かせたファーストコレクションと、彼女のクリエイションについてうかがった。
Photographs by SUZUKI Shimpei Text by KAJII Makoto (OPENERS)
ジョンロブの原点から生まれるあたらしいジョンロブ
――ではまず、「ロンドンコレクション メン」での初披露を終えての感想から。
無事プレゼンテーションを終えてとてもいい気分です。ジョンロブとしてまだ始まったばかりで、まだまだやるべきことはたくさんありますが、方向性は見えてきています。それは、靴だけではなく、ブランドロゴやパッケージなども含めて、“ジョンロブを語るうえでの言語”をつくる必要がある、ということ。ただ、ジョンロブの原点は非常にクリアなので、目的を見据えながら動くことができていると思います。
――プレゼンテーションは多くのメディアに衝撃的に受け止められていましたが、どのような反響がありましたか。
私がもっともうれしかったのは、ノーザンプトンの職人たちのリアクションでした。私がブランドに参加した当初、彼らにとっては外部からやってきたエイリアンや、宇宙人のようなもの(笑)ですから、ゆっくり関係性を築く必要がありました。やがてブランドのビジョンが明確になるにつれて、職人たちがあたらしいコレクションに携わっていることにワクワクしていることを感じて、私も満足感を得ました。
――職人たちはどのような反応でしたか。
工房内にあたらしいエネルギーが生まれ、その変化にみんなが気づきました。彼らはつねに冷静で落ち着いており、誇りをもってジョンロブで働いていますが、家族や、コミュニティのようなあたたかみのある一体感が育ってきた、ということがとてもうれしいです。
私がもっとも大切にするのは事実
――メディアも世界中から約200名ほどがプレゼンテーションに来ていましたが、どんな反応でしたか。
ジョンロブが生まれ変わったと多くのメディアに問いかけられましたが、私が、創業者ジョン・ロブが22歳のときのロンドンへの旅を知り、そのリサーチでさまざまなことを発見して、私が驚いたことを、みなさんも驚いてくれるのがうれしい。
リサーチには約4カ月を要しましたが、実際にジョン・ロブの故郷である、英国南西部のコーンウォールに行って、家族のアーカイブや、古いレシートや帳簿、はがきといったビジネスのアーカイブも見て、彼の原点やブランドをかたちづくるストーリーに触れることができました。
ジョンロブは伝統あるブランドですから、私には重い責任がありますが、よくあるアーティスティック・ディレクターやクリエイティブ・ディレクターは、外からブランドに入って往々にしてブランドの本質から外れてしまう決断をすることがあります。私がもっとも大切にするのは事実で、デザインのプロセスなどにおいても事実を見せていくことを重要視しています。
JOHN LOBB|ジョンロブ
アーティスティック・ディレクター、パウラ・ジェルバーゼが語る新生ジョンロブ(1)
パウラ・ジェルバーゼが見いだす、ジョンロブのオリジン
ジョンロブの美しさの概念を伝えていく仕事
――ひとつ驚いたのが、ブランドロゴも変更されるんですね。
はい。アーカイブで見つけた、オリジナルのパッケージに使われていたジョンロブのロゴに変えます。オリジナルのロゴは美しくてシックで、英国的なソリッドさも感じさせるデザインでしたから。
――ジョンロブのイメージカラーである、黄色も変えるとか。
そうですね。ジョンロブといえばイエローでしたが、オリジナルパッケージからインスピレーションを受けて色も変更します。ジョンロブのアーカイブは私にとって宝物を見つけたといっていいほどの発見で、すべてが伝統的であり、革新に満ちていました。いま私がやらなければならない役割は、そのストーリーを伝えていくことです。
ブランドロゴやイメージカラーなど、今回の変化はすべてブランドの原点に対するリスペクトから生まれたもので、いずれも事実に基づくもの。私は、変化のために変化を起こすのではなく、もともとジョンロブがもっている美しさの概念を伝えていくことが大切だと考えています。ジョンロブのヘリテージや概念を表現する、これからのデザインを楽しみにしていてください。
スーツやデニムと合わせられるあたらしいタイプ
――スニーカー「LEVAH(レバー)」もいよいよ発売されました。
ジョンロブのアーカイブを見ていて、このレバーの原型は、1920年代のテニスシューズで、1923年に製造されたものです。当時ビスポークのジョンロブを履いていた紳士は、活動的で軽いウォーキングシューズやスキーブーツを求めていたようで、今回の就任に際していろんな意見を聞きましたが、「軽くてカジュアルなものがほしい」というリクエストも多かったのでテニスシューズのアーカイブをあらたに解釈したスニーカーをつくりました。
ハイカット版の「CULVER(カルヴァー)」も秋冬にリリースされますが、履き心地が良く、スーツやデニムと合わせられるあたらしいタイプの商品になっています。
アーティスティック・ディレクター、パウラ・ジェルバーゼが語る新生ジョンロブ(2)につづく
パウラ・ジェルバーゼ|Paula Gerbase
パウラ・ジェルバーゼは、サヴィル・ロウのテーラーでキャリアを積んだ後、2010年に、ピュアで抑制された物質主義をコンセプトにしたブランド「1205」をスタート。カット、素材、プロポーションを何よりも重視し、まるで喧噪のなかの静寂を見つけるように、本質的要素を探求することによって伝統的なクラフツマンシップを際立たせる。2014年7月、ジョンロブのアーティスティックディレクターに就任。
ジョン ロブ ジャパン
Tel. 03-6267-6010
http://www.johnlobb.com/jp