中田英寿、パリのビスポークアトリエを訪れる(トライオン・2)|JOHN LOBB
JOHN LOBB|ジョンロブ
中田英寿、ジョンロブのビスポークとともに、職人と世界を巡る旅
パリのビスポークアトリエで“トライオン”(2)
パリの中心部にあるジョンロブのビスポークアトリエで、中田英寿さんのビスポークの“トライオンシューズ”のフィッティングが行われた。フィッティングに沿って作成された仮縫い状態のトライオンシューズを実際に履いて、さまざまな角度からチェックされ、最後に「ステッチは黒に」と注文してトライオンを無事終えた。
中田英寿、パリ・ジョンロブのビスポークアトリエを訪れる(トライオン・1)
Text by MATSUNAGA MaikoPhotographs by MATSUNAGA Manabu
トライオンを終えて、中田さんに感想を聞いた
「東京でのフィッティングのときに既製靴を履いてみましたが、それよりずっと履きやすいし、軽い仕上がりでした。この時点でもいいかなと思える履き心地でしたが、この状態から細かいところを1ミリ単位で直していくわけで、フランソワたちの妥協のないモノづくりの想いを確かに感じました」と語る。
さらに、「トライオンシューズは革の質がちがうと言っていましたが、この段階でフィッティングを調整して本番に臨むというのはやはり革についても熟練しているということで、一度作った靴を切ってまた作るという時間と労力のかけ方には職人の心意気を感じます」とつづける。
生涯つきあえる一生もののローファーを
「できあがりへの期待では、今回のビスポークは一生ものとなるベーシックな靴を作りたいというこだわりから始まっているので、本当にずっと履けるローファーができあがってくるとうれしいなと。今回は、黒のボックスカーフ(生後18カ月までの仔牛の皮で、とても柔らかいのが特徴)で作りますが、レザーもいろんな種類があるのでほかの素材や色でも作ってみたいと思います」と中田さん。
ジョンロブでは3人のみがもつ“マスターラストメーカー”をあたえられた職人、フランソワについては、「職人は自分なりのこだわりがあるのは当然で、経験があって自分のアイデアをもっている人は共通して仕事が早い。フランソワのトライオンの行程も迷いがない。また、フィッティングを確認するための靴を切るナイフなど、彼らが使う道具はあまりクローズアップされないけれど、じつはその道具を作る職人もいるわけで、そういうところまで掘り下げて取材してみたいですね」。
トライオンを終えたフランソワは……
「トライオンはスムーズにいったので、この後のリアリザション(réalisation=実現)もうまくいくでしょう。トライオンの時点で直す箇所はそれほど多くはありませんが、中田さんはスポーツをやっていた足なので修正箇所もやや複雑で、修正箇所が左足だけに集中していたのも特徴的です。具体的にいうと、小指の左足の小指の外側1ミリ、親指の付け根を1ミリ広げる、踵(かかと)が余っていたので3ミリ縮める、履き口(足首)を2ミリ縮める。右は完璧で、場合によっては2回仮縫いすることもありますが、中田さんは今回のトライオンで大丈夫」とフランソワ。
「7月中旬にジョンロブのビスポークオーダー会で、東京と大阪へ行くので、そのときにまた中田さんと会うことができます。中田さんが提案してくれた職人同士の交流を京都で果たせそうで、今からワクワクしています。日本の伝統的な履き物の草履(ぞうり)の工房に行く予定だそうで、たぶん自分が日ごろやっていることと近いことが行われているのでしょう」。
フランソワに中田さんの印象を尋ねると、「中田さんともすごく気が合ってやりやすかったですね。私は世界中に靴の寸法を測りに行っていますが、日本のお客さんが一番信頼してくれてお互いにリスペクトし合って、仕事がとてもやりやすい。だから、いい仕事がしたいという気持も自然と湧いてきます」と語った。
つぎは、ジョンロブのビスポークを離れて、中田さんの橋渡しによるフランスと日本の職人の出会いをリポートする。
中田英寿が繋ぐ、ジョンロブと「祇園ない藤」の職人の出会い(1)へつづく
ジョンロブ「ビスポーク」
価格|99万3600円~(税込)
※同一ラストでの2足目以降は89万1000円
期間|メジャーメントから約4カ月でトライオン(仮縫い)、さらに約4カ月後に納品
ジョン ロブ ジャパン
Tel. 03-6267-6010
http://www.johnlobb.com/jp