BOGLIOLI――過去、現在、そして未来へ
FASHION / MEN
2015年3月12日

BOGLIOLI――過去、現在、そして未来へ

BOGLIOLI|ボリオリ

自由で柔軟な発想が時代のプラットフォームを創出!

ボリオリ──過去、現在、そして未来へ

北イタリアで名を馳せた仕立て職人の仕事は、息子、孫の代へ受け継がれながら事業を拡大。いつのまにか100年を超えて偉大なメゾンへと成長した。その歴史に触れながら、ボリオリの過去と現在までの歩みを振り返り、そして未来のヴィジョンまでを探る。

Text by IKEDA YasuyukiPhoto by YOSHIZAWA KentaPhoto cooperation by BOGLIOLI


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クラシカルな出自を一変させたボリオリのイノベーション

ボリオリの血は3代100年を経て継承されている。マリオ・ボリオリがサルトとして身を興したのは20世紀初頭のこと。大戦期には既に腕の良いテーラーとして、その名を広く知られていた。客先に出向いて採寸をおこなう彼の仕事のやり方は、店舗を構えない当時主流の営業形態であったという。

息子のジュゼッペは父の背を追うと、仕立て職人としてではなく、アトリエをファクトリーに転換することで事業を継承する。多くの職人を迎え、作業場を提供することで、マニュファクチャリングとサルトリアーレを合体させた次世代の仕立屋を目指したのだ。

やがてジュゼッペの3人の息子たちがファクトリーの経営を受け継ぐと、事業はさらに拡大。仕立て工場は企業として成熟する。自ら企画製造をおこなうアパレルメーカー、ルーカスモーダ社(現ボリオリ社)は、高品質なジャケットを仕立てる良質なメゾンへ発展した。

飛躍的な人気を博したのは、1990年代に登場した「コート」というモデルだ。コットン地の薄いジャケットを、当時まだ珍しかった「ティントインカーポ」と呼ばれる製品染め加工で、まるで着古したかのような風合いに仕上げたのである。のちにこのコートの誕生を末弟で現ボリオリ社のデザイナーを務めるピエルイジ、通称ジジはこう振り返る。

「当時流行していた洗いの掛かったシャツやデニムやパンツを見て、なぜジャケットがないのだろうと思ったのです。構築的な肩のジャケットでは、くったりとした独特な風合いが出せなかった。だからセンツァスパリーナ(肩パットを省いた仕立て)にしたのです」

BOGLIOLI|ボリオリ01

BOGLIOLI|ボリオリ 02

時代がボリオリに追いつきメンズファッション界の台風の目へ

「コート」の登場でイタリア国内での地位をたしかなものにしたボリオリに、つぎの追い風が吹く。高級素材カシミヤのジャケットにコートと同様の洗い加工をほどこすという大胆不敵な手法で、いまや名作ともいえる「Kジャケット」を世に送り出した。2003年、この「Kジャケット」がボリオリの名を世界中に知らしめることとなる。

このころ、日本にもその名声がとどく。しかし本国を遠く離れた極東まで、その評判の本質が伝わらなかったのか、ボリオリを「最近話題のクラシックブランド」程度に捉えられていたようだ。どのショップも数を付けたのは、「Kジャケット」より、しっかりと構築的に仕立てられたモデル「ハンプトン」だったのだと、あるバイヤーがこっそり教えてくれた。

しかし「Kジャケット」の人気が本物とわかると形勢は一気に逆転する。メディアでもボリオリの名が取り上げられるようになると、2008年に誕生した「ドーヴァー」でフィーバーぶりは一気に加熱。そのまま2010年「ワイト」の狂想曲。以後の熱狂的なムーブメントは、ここ数年沈滞していると言われるメンズファッション界において、ひとり気を吐く存在である。

いまでは「Kジャケット」「ドーヴァー」「ワイト」ら人気モデルのみならず、さらにラインナップを増やしている。それは、単なるブームでは語りきれない。むしろ革命といってもいい。ジャケットは芯地とパットが無いことこそ正義といわんばかりに、追随するブランドはあとを絶たないのだ。

BOGLIOLI|ボリオリ 03

しかしボリオリは人気のジャケットを量産することに胡座をかいていない。一昨年からは、シャツやニット、パンツまでのフルコレクションを投入し、トータルでスタイルを提案できるメゾンに飛躍を遂げた。来季は、現在もっとも人気を博している稼ぎ頭の「ワイト」をフルモデルチェンジすることさえ決定している。経営陣には、かつてディオール、プラダを歴任したロベルト・ファルキを招聘し、すでにつぎの時代を睨んでいる。仕立て職人の仕事を工場に拡大し、いまやトレンドを牽引するメゾンに成長、さらにつぎの変化を求めている。その歩みはまだ、止まることを知らない。具体的なことは第4回のピエルイジインタビューで、自身の口から語っていただくことにしよう。

ここに紹介したビジュアルはボリオリ社の小冊子のものだが、ボリオリが単なるクラシカルなサルトリアーレではないことをアイコニックに表現している。美しいグリーンはボリオリのコーポレイテッドカラーだ。最新鋭のファクトリーをもち、ディスプレイなどアートな感覚に満ちている。そう、ボリオリが創り出すものは服だけではない。メンズファッションの、時代のプラットフォームそのものといっていい。ぜひボリオリの世界観を堪能していただきたい。

マリオ・ボリオリ

ボリオリ社会長
マリオ・ボリオリ

ピエルイジ・ボリオリ

ボリオリ社デザイナー
ピエルイジ・ボリオリ


BUYER'S RECOMMENDATION OF BOGLIOLI!

クラシック系のメゾンは往々にして時代の流れに疎いもの。そういう意味でボリオリは、非常に珍しい存在です。進化し、持続させ、さらに天井を見ていない。これぐらいでいいだろう、というイタリア特有の適当さがない(笑)。Kジャケットのティントインカーポも、完全にできあがってから洗うのではなく、途中までの製品を洗ってから、最後に袖裏を取り付けるという非常に面倒なことをやっている。これが着心地の良さを生むからなんですが、それをあえてやる。いま一番人気があるワイトを来シーズンはカタログから落とすなんていうことも平気でできてしまう。伊勢丹から別注を依頼したさいも、おもしろがって請けていただいたんですが、別注自体世界初らしいんですよ。いままでなかったのが不思議ですが、別注する必要がないぐらい魅力的であることの裏返しでしょうね。アタマの硬い頑固な職人とも、単に器用なファクトリーとも異なる、こういった自由な精神性がボリオリの魅力のひとつだと思います。

兼藤映|EI Kanefuji

兼藤映|KANEFUJI Ei
伊勢丹新宿店 バイヤー

2002年から現職。伊勢丹メンズの5Fフロアを席巻する錚々たるクラシックメゾンに精通。百貨店ならではのフラットな視点と、トレンド提案という両観点から、現代のメンズファッションを深く解析できる日本屈指のバイヤーである。

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