デニス・モリスが語る、ロック時代のアイコンたち|BARNEYS NEW YORK
BARNEYS NEW YORK|バーニーズ ニューヨーク
伝説のカメラマンにインタビュー
デニス・モリスが語る、ロック時代のアイコンたち(1)
7月28日(日)まで、バーニーズ ニューヨーク新宿店 9階で開催中の写真展「DENNIS MORRIS PHOTO EXHIBITION」のオープニングに合わせて来日したフォトグラファーのデニス・モリス氏。「あなたはザ・ストーン・ローゼズは好きですか?」と、刷り上がったばかりの往年のザ・ストーン・ローゼズを撮り下ろした彼の最新写真集『Resurrection Dennis Morris The Stone Roses Documents』を誇らしげに見せてくれた。
Text by KAJII Makoto (OPENERS)Photographs by SUZUKI Kenta
彼らの時代、そしてそれを撮った自分自身のライフがここにある
現在50歳代の往年のロックファンなら知らぬものなしの伝説のフォトグラファー、デニス・モリス氏。またロックT好きなら、彼の撮った写真はかならず1枚はもっていることだろう。インタビューは、バーニーズ ニューヨーク新宿店 9階の写真展がおこなわれている大きなソファではじまった。
「今回で来日は15回以上かな。東京は街もひとも大好きです。自分にとって特別な場所の一つですね。じつは東北大震災のときに日本にいたのですが、日本の皆さんが一つのコミュニティのように、整然と一体になって動いていたことにとても感銘を受けました。アメリカやヨーロッパなら混乱しか起こらない状況なのに、日本人はとても素晴らしい」と、とてもフランクに話してくれたデニス氏。
彼のキャリアはよく知られているが、11歳でボブ・マーリーにその才能を認められツアーに同行し、17歳にして、『タイム・アウト』誌や『メロディ・メイカー』誌など、かずかずのメジャー音楽誌のカバーを総なめにしている。
また、今回の写真展にある、RUN DMC、マリアンヌ・フェイスフル(Marianne Faithfull)、セックス・ピストルズ (Sex Pistols)、ザ・ストーン・ローゼズ(The Stone Roses)などは、ライブツアー写真はもちろん、ポートレイトでもすばらしい写真を残している。
「こうやって写真をならべると、これは彼らの時代を写したものですが、同時にそれを追いかけてきた自分自身のライフでもあります。音楽好きのひとには、写真を見て時代の流れを感じてもらえるといいですね」
セックス・ピストルズは、キャリアをスタートさせた自分自身の鏡だった
パンク時代の胎動を感じさせる若々しいセックス・ピストルズについては、「彼らと出合ったころ、まさにパンクが掲げていたコンセプトである、つかめ! 信じていけ! やってみろ! を体現していたのがセックス・ピストルズでした。それは、自分が写真家としてのキャリアを本格的にスタートさせる時期とも重なっていて、彼らはボクの鏡でもあった。そんな時代を一緒に過ごしたので、思い込みは一番あります」と語る。
デニス氏は、ジョニー・ロットン(ジョン・ライドン)のバンド、パブリック・イメージ・リミテッド(Public Image Ltd)のロゴを一緒に考えたことでも知られていて、ジョンの印象をきくと、「ジョンとシド・ヴィシャスは比べられることが多く、ボクから見ると、お互い反対側にいて両立していたという印象です。シドは、見た目とちがって、自然、ナチュラルなひとで、親しみやすいタイプで、内面はじつは弱々しい。逆にジョンは、頭の回転が速く、いつも何か考えていて、結果を求め、強い意志をつねにもっていた」そうだ。
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伝説のカメラマンにインタビュー
デニス・モリスが語る、ロック時代のアイコンたち(2)
今回のバーニーズ ニューヨークでのエキシビションは、ザ・ストーン・ローゼズの写真集刊行に合わせて、デニスが「自分が撮った写真のフォトTは数多く出回っていますが、写真をあらたにクリエイトして、あたらしい見え方のプロダクトを作りたかった」というリクエストからスタート。そのコラボ相手に指名されたのが、バーニーズ ニューヨークだった。「こんなに素敵な店でエキシビションを開けるのはとても光栄です。あなたもバーニーズは好きですか?」
ライブ撮影は、もう勝手に手が動いて、瞬間を撮っている
「自分が撮った写真がTシャツやマグカップなどのプロダクトになるのは、とても好きですよ。とくに今回のTシャツは、クリエイティブ集団「ゼロセン(XEROSEN)」とのコラボレーションで、大変気に入っています。自分の生活の一部に、好きなアイドルや憧れているスターが入り込んでくるというのはすばらしいことで、今回ここまでできたのは大満足しています」とデニス氏。
時代のアイコンであるスターを撮るときの心構えをきくと、「自分の前に立っているひとではなく、そのひとの奥、本当の姿を感じながら撮るようにしています。それでできあがりの写真を見せると、『どうして本当の自分がわかったの?』とたずねてくるんです。それで仲良くなれます。また、撮影前は狙って撮ることを頭のなかで考えますが、現場では変わってくるので、まったくちがうものが写るのは普通のことですね」と笑う。
たとえば、ポートレイト撮影なら、ちょっとしたゲームをしたり、今自分たちが何をしているかをわからなくしたりして、その状況が自然になって、いつしか写真を撮るという行為ではなくなっていったり。あるいは、ライブ撮影なら、もう勝手に手が動いて、瞬間を撮っている。そういう瞬間を切り取っている写真は好きですね。皆さんも自分のアルバムのなかのお気に入りの写真からは、撮ったときの音とか匂いを感じることができると思うけど、自分の写真もまさにそう」
ローゼズのTシャツを着て、サマソニの前夜祭へ行こう!
ザ・ストーン・ローゼズの写真集『Resurrection Dennis Morris The Stone Roses Documents』をどう思うかと逆に質問され、「ライブの音が聴こえてくるよう」と答えたらにっこり笑ったデニス氏。
「デジカメとフィルムは使い分けていて、このローゼスのライブはすべてフィルムで撮りました。フィルムは色の階調がきちんと出るので、ライブなどには適しています。デジタルはどうしてもフラットになって、一つのものしか写せません」
そして最後に、「写真を上手く撮るコツをなにか一つ教えてください」とお願いすると、「写真は一瞬を切り取るもの。それがブレていたり、ちょっとピントが合っていなくても、自分が見て満足できればいいんです。自分が感じた、切り取った瞬間を楽しんでください」と答えてくれた。