POGGY’S FILTER|vol.2 ジェリー・ロレンゾさん
FASHION / MEN
2019年3月28日

POGGY’S FILTER|vol.2 ジェリー・ロレンゾさん

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UNITED ARROWS & SONS(ユナイテッドアローズ&サンズ)のディレクターであり、世界のファッションシーンからも注目を浴びる小木“POGGY”基史氏をホストに、2019年、ついにスタートした「POGGY'S FILTER」。タイトルの通り、POGGY氏のフィルターを通して、ファッションを中心に様々な分野で活躍する人物と対談するこの連載に今回登場するのは、LA(ロサンゼルス)を拠点とするブランド、Fear of God(フィア・オブ・ゴッド)のデザイナーであるJerry Lorenzo(ジェリー・ロレンゾ)。ストリートウェアの頂点を極めたフィア・オブ・ゴッドでの成功はもちろんのこと、様々なブランドやKanye West(カニエ・ウェスト)、Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)といったVIPたちのプロジェクトにも携わり、今やラグジュアリーストリートシーンの中の台風の目ともなっている存在だ。Nike(ナイキ)との新たなプロジェクトである「Nike Air Fear of God」コレクション発表のために、昨年12月、緊急来日を果たした彼を南青山のNIKELAB MA5.にて直撃した。

Interview by KOGI “Poggy” MotofumiPhotographs & Text by OMAE Kiwamu

アーバンファッションにラグジュアリーを取り入れる

POGGY 今日は忙しいところありがとう。2014年に初めて会った時、LAにあるソーホー・ハウスの駐車場で、ジェリーの車のトランクからフィア・オブ・ゴッドのサンプルを出して見せてくれたのを覚えてる?

ジェリー・ロレンゾ(以下、ジェリー) もちろん! あの時のことはよく覚えてるよ。

POGGY あの時、フィア・オブ・ゴッドのブランドコンセプトの一つとしては「No Fashion Show, No Exhibition, No Trade Show」(=コレクションの発表の場としてファッションショウは行わず、展示会、トレードショウにも出さない)だと教えてくれたよね。今でこそ、従来のファッションシーズンとは全く異なる時期に開催されているComplexCon(コンプレックスコン)をはじめ、今までのファッション業界のやり方とは異なる形でコレクションを発表する流れが多くなってきているけど、なぜ、あの時代にそのようなコンセプトにしようと思ったの?

ジェリー あの頃はファッション業界やラグジュアリー業界から自分が歓迎されていないといつも感じていて、それがずっと不満でもあった。けど、彼らに受け入れられる為に何かをやるっていうのも嫌だった。それで、自分の声を聞いてくれるような人や自分の顧客に対してブランドを広げるために、従来行われいてたファッションショウやトレードショウを通さずにコレクションを届かせるっていうコンセプトを思い付いたんだ。

POGGY 自然にそういったコンセプトが出てきたということ?

ジェリー そう。戦略的に考えたのではなくて、自然に生まれたアイデアでした。

ジェリー・ロレンゾ

POGGY フィア・オブ・ゴッドがブレイクし始めた頃、ストリートシーンではGIVENCHY(ジバンシイ)やRick Owens(リック・オウエンス)のような、黒を基調としたモードな服を取り入れるのがトレンドで、その中でアメリカンオーセンティックなウェアを新しく解釈したフィア・オブ・ゴッドの登場はとても新鮮でした。

ジェリー そう言ってもらえて嬉しいよ。

POGGY なぜ、そのようなデザインのアプローチをしようと思ったの?

ジェリー 実は今名前の出た、リック・オウエンスからの影響が大きい。リックのデザインの最も好きなところは、ヒップホップをイメージさせる全体のシルエットやバランスで、例えばAllen Iverson(アレン・アイバーソン)を彷彿させるようなバギーショーツや丈の長いタンクトップ、それから長い紐のついたドレイプされたコートといったアイテムがそう。彼は自分自身のレンズを通して、アーバンファッションの中にラグジュアリーを取り入れることを可能にした。日常的に履いているようなスウェットパンツのようなアイテムが、ラグジュアリーなものになるっていうのは、自分にとってもすごくエキサイティングなことだった。ラグジュアリーを形にするために、シルエットやバランスを綿密に計算して、そのための製造方法まで考える。Hedi Slimane(エディ・スリマン)がSAINT LAURENT(サンローラン)のコレクションでやったグランジスタイルも同じで、正しいレンズを通せば、いろんなものをラグジュアリーとして提示することが出来る。彼らのようなデザイナーから学んだ手法によって、自分のインスピレーションのもとであるヒップホップやロックンロール、グランジといった、いわゆるアメリカンなものをラグジュアリーとして形にしたのがフィア・オブ・ゴッドなんだ。

ジェリー・ロレンゾ

POGGY フィア・オブ・ゴッドの服はシンプルでベーシック。誰がどのように着るかで見え方が変わり、そこにカルチャーが吹き込まれていくんだと思う。ブランドのターニングポイントの一つとして、『GQ』のファッションページでカニエ・ウェストがフィア・オブ・ゴッドのコレクションを着用したり、あるいはジャスティン・ビーバーがフィア・オブ・ゴッドを着た事によって、より多くの人たちに魅力が伝わった気がするんだけど、それも戦略の一つだった?

ジェリー いや、それは戦略としてやったことではないよ。カニエやジャスティンといった人たちによってブランドが定義されているんじゃなくて、あくまでも誰がブランドをやっているかっていうことでブランドの価値が決まるものだと思う。実はジャスティン・ビーバーの<Purpose World Tour>でスタイリングやマーチャンダイズを手がけた時は、少し不安もあった。友人としてジャスティンを尊敬していたけども、当時、彼はまだファッションに関しての影響力は無かったし、時々、過ちを犯してしまうような普通の若者でもあった。けど、彼はそんな自分自身のイメージを変えようと努力していたから、自分の洋服やスタイリングに関する才能を通して、何か手助けを出来るんじゃないかって思ったんだ。それでも、頭のどこかでこのプロジェクトによって自分も何かを失うんじゃないか?っていう不安があったけど、結果的には全てが上手くいって、今もブランドはこうやって残っています。

Page02. スニーカーによって完成したフィア・オブ・ゴッドのストーリー

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スニーカーによって完成したフィア・オブ・ゴッドのストーリー

POGGY いくつかの過去のインタビューで、カニエから影響を受けたと語っていたけど、具体的に彼から何を学びましたか?

ジェリー カニエとは3年間一緒に働きました。彼とはいろんな物事を同じ視点で見ていて、それは例えば普段着も含めたスタイリングに関してもそうだし、自分たちがどう振る舞うべきかっていうことに関しても同じ考えを持っていた。彼のチームの一員として働くのはすごくハードであったけども、そんな3年間を通して彼から何を得たかというと、それは彼のワークエシック(労働倫理)だと思います。

POGGY フィア・オブ・ゴッドのスタイルは、オリジナルシューズを作った事によって全身のバランスが完成されたと思います。そのシューズのデザインにはイタリアのデザインチーム、Search N Design(サーチ・アンド・デザイン)が関わっていると思うけど、彼らとの出会いなどについて教えて欲しい。

ジェリー・ロレンゾ

ジェリー 家族同士の付き合いもしている友人で、今、BUSCEMI(ブシェミ)というブランドをやっているJon Buscemi(ジョン・ブシェミ)が紹介してくれて。ポギーの言う通り、当時、自分の考えるコンセプトに従って、フィア・オブ・ゴッドのコレクションを完全なものにしなければならかった。3つ目か4つ目のコレクションの時、スタイリングにデザートストームというミリタリーブーツを使った時があって、色合いは好きだったんだけども、形は気に入ってなかった。当時は他に選択肢が無かったから、仕方なくそのブーツを使ったけども、シューズに関して誰か手助けしれくれる人を探す必要性を感じていて。ジョン・ブシェミが自分の周りで唯一、シューズ関連の仕事をしている友人だったから、彼に相談して、サーチ・アンド・デザインを紹介してもらった。サーチ・アンド・デザインと出会ったことで、フィア・オブ・ゴッドの壮大なストーリーが完成したんだ。

POGGY ちなみに今回発表されたナイキとのコレクション「Nike Air Fear of God」のスニーカーのデザインにもサーチ・アンド・デザインは関わっているの?

ジェリー いや、彼らは今回のプロジェクトには参加していないよ。ナイキとのプロジェクトの前に、サーチ・アンド・デザインと一緒にデザインしたものを少し参考にはしているけども、全体的なデザインは自分とナイキとで一緒にやったよ。

POGGY 今のラグジュアリーストリートシーンを語る上で、ナイキやアディダスといった大手のスポーツブランドとの関わりは外せないと思います。多くの大手ファッションブランドが、リスク回避や売上だけを狙った戦略に走る中で、まるでアスリートを発掘するかのように大手スポーツブランドが若手デザイナーをサポートしていますが、そういった流れをジェリーはどのように考えているの?

ジェリー・ロレンゾ

ジェリー それは、すごく良いポイントに気が付いたと思う。実は大手のファッションブランドが今、何を考えて、何をしているということはそれほど気にしていない。彼らが我々のようなブランドが何をしているかを分かっている必要はあるとは思うけども、自分自身は今、マーケットで何が失われていて、それをどう解決するかということにフォーカスしている。だから自分ではそんなことを考えたことがなかったけど、ポギーは良いところに目を付けたと思う。スポーツ業界は才能あるアスリートを高校生とか大学生の頃から発掘したりして、伝統的にずっと若い才能を見い出してきた。そんな伝統があるから、彼らはラグジュアリーブランドよりも早く、若い才能を認めることが出来るんだと思います。

POGGY 最後の質問。フィア・オブ・ゴッドのようなオーセンティックでラグジュアリーなアメリカンスタイルが、特にあなたの地元でもあるLAで、トレンドとして大いに受け入れられている理由は何だと思う?

ジェリー LAの人たちは、いつも快適に過ごすことを追い求めている。一方でファッションに関しては、快適さとラグジュアリーを同時に実現するのはすごく難しいことでもある。例えば、もし快適さを追求し過ぎたら、それは単にだらしがない格好にしかならないかもしれないし、あるいはすごく頑張りすぎちゃっているようにも見えてしまう。けど、フィア・オブ・ゴッドの服はラグジュアリーかつシックでいながら、同時に快適さも兼ね備えている。そういう意味では、フィア・オブ・ゴッドは新しいことを成し遂げたし、だからLAの人たちに受け入れられたんだと思うよ。

           
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