ISETAN MEN'S|英国の名靴ブランド「アンソニー クレバリー」既製靴が伊勢丹新宿店メンズ館デビュー
ISETAN MEN'S|伊勢丹
ジョージ クレバリー3代目社長、ジョージ・グラスゴー・ジュニアが語る名靴
「アンソニー クレバリー」既製靴デビュー(1)
ジョージ・クルーニー、エルトン・ジョン、デビット・ベッカム、アンディ・ガルシア、ルドルフ・バレンチノなどが顧客として名を連ねるジョージ クレバリー社の最高級ライン「Anthony Cleverley(アンソニー クレバリー)」。ビスポークで培ったノウハウをもとに生み出した究極の一足が伊勢丹新宿店で発売を開始する。インタビューに応えてくれたのは、ジョージ クレバリー社CEOのジョージ・グラスゴー・ジュニア(George Glasgow Jr.)。堂々たる貫禄だが、まだ28歳の若き経営者である。
Text by KAJII Makoto (OPENERS)Photographs by TAKADA Miduho
履き心地を表現するなら、“手袋のようなフィッティング”
創業者であるジョージ・クレバリーは1898年に生まれ、ロンドンのビスポークブランドで約40年のキャリアを積んだのち、1958年に自身のブランド「ジョージ クレバリー(GEORGE CLEVERLEY)」をスタート。70年代に一時ブランドを休止するが、90年代になってジョージ・クレバリーの甥(おい)であるアンソニー・クレバリーがブランド「アンソニー クレバリー」を立ち上げる。
さらに、1993年にジョン・カネーラ(John Carnera)とジョージ・グラスゴー(George Glasgow)によってブランドが再始動。今回インタビューしたジョージ・グラスゴー・ジュニアは3代目社長にあたる。
――先代の靴について教えてください。
創業者のジョージ・クレバリーは、スクエアのチゼルトゥ(鋭角的に切り落とされ、サイドのエッジが立った「のみ」のようなつま先)をもち、パーフェクトなフィッティングを目指した靴作りで多くの顧客をとりこにしました。一方、アンソニー・クレバリーは、エレガントな靴作りを追求しつづけました。クラシックシューズの基本を守りつつ、独自のデザイン、バランスを組み合わせ、モダンで唯一無二の一足を生み出しました。
――今日履いているアンソニー クレバリーの靴の履き心地を表現していただけますか?
私はビスポークも既製靴も履いていますが、どちらもウエストをグッと絞ったヴェヴェルドウエストで足のアーチをしっかりサポートし、クレバリーの象徴であるチゼルトゥと相まって見た目に美しく、履き心地も快適です。履き心地は……、私はよく“手袋のようなフィッティング”という表現を使いますが、靴が足を包み込むような感覚が、アンソニー クレバリーの特徴です。
グッドイヤーウェルテッドの靴は、履いていくうちに馴染み、緩くなっていくので、最初はきつめのフィッティングがいいというのをよく聞きますが、痛いような履き方はあまりお薦めはできません。私たちの靴はとても柔らかいカーフを使っているので、最初の足入れから快適で、日本人の足のフィッティングには自信があります。
――その自信のもとは?
私たちはすでに日本で20年以上展開している歴史をもち、日本人の顧客のビスポークも手がけていて、短めで、幅広で、甲高という日本人の足型の特徴を熟知しています。ロンドンのショップで扱うウィズ(足囲)はDですが、日本人向けはEにするなど、フィッティングには最大限配慮しています。
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「アンソニー クレバリー」既製靴デビュー(2)
デビッド・ベッカムが驚いた!
――今回発売されるのは既製靴ですね。
はい、今回の既製靴のローンチにあたって、伊勢丹のバイヤーとは2年以上前から検討を重ねました。アンソニー クレバリーでは、5年前にセミビスポークを作りはじめ、アンソニー クレバリーのオリジナル木型を一部改良し、アーチをサポートする木型を開発。できあがった靴を日本、アメリカ、シンガポールのひとに履いていただき、さらに木型を改良し、ハンドメイドの良さを活かす作りを目指しました。
――既製靴のデザインは?
私たちにはすばらしいアーカイブ&クライアントリストがあります。そのリストのなかから50~60年前に作られたアンソニー クレバリーらしいデザインを選びました。ジバンシィやロスチャイルドが履いた靴を今に活かしています。
――デビッド・ベッカムのエピソードがあるそうですね。
ロンドンのショップに彼が来たときに、「どれもあたらしいデザインだね」と感激されたようですが、「いいえ、これは50~60年前のスタイルですが、どれも当時最先端のデザインです」と答えたら、とても驚かれていました。
――今回発売される既製靴は、アッパーの革もすばらしいものとか。
そうです。今回は7モデルをリリースしますが、どれもビスポークで使っているものとおなじ革を使っています。私たちが認めるカーフ(生後6カ月以内の子牛の革)は、年々供給量が減っていますが、世界中のタンナーを訪ね、厳選しました。革選びにも妥協はありません。また、木型に合わせたシュートゥリーを入れているのもビスポークとおなじです。
――英国の靴の特徴は?
もちろん一概には言えませんが、靴とクルマはとても似ています。英国ならベントレー、イタリアならフェラーリを思い浮かべてください。英国は伝統を重んじながら、質実剛健な面をもちつつ、進化しています。イタリアはモダンでスタイリッシュで革新的。このイメージは、ファッション・スタイルとも相通じますね。
――日本の男性のファッションの印象は?
基本はとてもクラシックですが、ときには冒険的。私たちの靴でもミッドナイトブルーのカーフを選ばれるなど、遊び心も感じられますね。それと、ブランドを尊重し、そのオリジンにとても興味を示されます。そういう意味でも、私たちのようなブランドは多くの日本の顧客に興味をもっていただけると思います。
――伊勢丹新宿店メンズ館の靴売場の印象を教えてください。
とてもすばらしい環境で、アンソニー クレバリーの靴をいちばんいい場所にならべていただき感謝しています。私は世界中の百貨店やセレクトショップの靴売り場を見ていますが、伊勢丹は販売員がちがうと思います。商品をとてもよく理解し、お客さまにきちんと特徴を説明できることに敬服しています。
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「アンソニー クレバリー」既製靴デビュー(3)
今後50年、過去の50年とおなじことをする誇り
――今回の伊勢丹での既製靴の販売は、とても特別なことだそうですね。
はい。私たちはロンドンのオールドボンドストリートのショップの2階に工房があります。世界中のいろんなショップからアンソニー クレバリーを取り扱いたいとオーダーをいただきますが、生産数はがとても限られているため、現在は新規顧客は増やさないようにしています。
――良い靴を履く効果を教えてください。
良い靴を履くと気持ちが引き締まり、自分に自信をもつことができると思います。「靴とベッドにはお金をかけなさい」という言葉を知っていますか? 良い人間になりたかったら靴とベッドにはこだわりなさいという意味で、私ももちろん良いベッドで寝ています(笑)。
――靴のメンテナンスはどうされていますか?
どんな靴でもそうですが、つづけて履かないことが鉄則です。履いたら、翌日は休ませるのが長持ちさせるコツですね。そして、履いたあとには、必ずシュートゥリーを入れて休ませる。私は日曜日に靴の手入れをします。これは私にとってリラックスするとても良い方法なんです。
――それではアンソニー クレバリーのファンへメッセージを。
今後50年、過去の50年とおなじことをやっていきます。それだけ特別な靴です。現在のエグゼクティブやセレブリティの靴を多く手がけているので、私たちはただのシューメーカーだとは思っていません。ぜひ、伊勢丹に揃った7モデルを実際に履いてみてください。そのちがいにきっと驚かれることでしょう。
――ありがとうございました。