「厳かに、チェックコート!」
秋本番。アウターの着こなしを愉しめるシーズンの到来である。そんななか、編集大魔王・祐真朋樹がピックアップしたのは、ブリティッシュ風味のチェック柄のコート。クラシカルなものはもちろん、プレイフルなディテールや柄、シルエットでモードな個性が光る品々にも鋭意フォーカスしています。
Direction by SUKEZANE TomokiPhotographs by YAMAGUCHI KenichiStyling by KAWAI Kohta Text by HATAKEYAMA SatokoGrooming by 大東京
vol.5 チェックのコート【ʧék kóut】
祐真 「ここ数年、男性がジャケットをあまり着なくなり、コートをジャケット代わりに羽織っている姿をよく見かけます。僕個人は、コートが大好きなので毎年必ず買っているのですが、今年最も気になっているのが、『メイフェア』な世界観を持つ一着。トップで着用したボッテガ・ヴェネタのコートに代表されるスタイルです。
メイフェアはサヴィル・ロウやジャーミン・ストリートなどを擁し、正統派のブリティッシュスタイルを身にまとった紳士たちが集うエリア。そこで見かける昔ながらのバンカー(銀行家)スタイルを自分なりに着崩すのも素敵ですが、今の気分を一発で表現したいなら、アイテムに少しだけモードのエッセンスが加わったものを選ぶこと。シルエットや丈の長さにこなれた遊びが表現されている一着を羽織ってみるといいと思います。それらが今年のコート選びのポイントになってくるでしょう。
そして、柄は迷わずブリティッシュチェック。伝統柄がデフォルメされていたり、デジタル処理されていたりと、シックでありつつ斬新なチェック柄がいつになく目につくのも今秋冬の特徴です。
ちなみに、上の写真ではロングブーツ代わりに長靴をあわせていますが、ロング丈のコートではパンツを見せない着方がカッコいいと個人的には思っています。パンツをブーツ・インする着こなしは決定的にNG。だったら短パンで、というほうがむしろ潔いのかもしれません」
*コートの中にあわせたタートルネックセーター6万円(ジョンストンズ/リーミルズ エージェンシー 03-3473-7007)
BOTTEGA VENETA|ボッテガ・ヴェネタ
祐真 「クリエイティブ・ディレクターのトーマス・マイヤーは、クラシカルなアイテムをモダナイズするのが絶妙に巧い。このテーラードコートは肩のラインがとてもキレイで、シェイプも美しく完璧。いわゆるルーズで大きめなコートを着るのとは異なるスタンスですが、背中のタックでたっぷりのボリュームがあるシルエットなのもいいですね。クラシカルなイングリッシュチェックもエレガントでカッコいいし、袖のカフスをダブルにしてクラシカルな雰囲気を残しているのもニクい演出です」
DRIES VAN NOTEN|ドリス ヴァン ノッテン
祐真 「カウボーイシャツなどで見慣れたバッファローチェックを、大胆なボリュームとマキシ丈で、斬新かつ新鮮にみせているのがいいですね。ラグランスリーブでリラックスしたガウン風な仕立てになっているのも面白くて、ドリスらしいウイットが効いている。こういったブランドからの提案があるアイテムというのは、やはり大いに魅力的に見えますね」
Acne Studios|アクネ ストゥディオズ
祐真 「ざっくりしたハードな素材感がユニークな一着です。80年代のビジネスマンルックと40年代のクチュールの要素を組み合わせたというだけあって、ノスタルジックな雰囲気が新鮮。レトロなムードを感じさせながらも、グレンチェックとウインドーペーンをミックスしたようなデジタルな柄をあしらうというミックスマッチも上手くなじんでいますよね。ルーズなフィット感も着心地良く感じます」
ami alexandre mattiussi|アミ アレクサンドル マテュッシ
祐真 「細かなハウンドトゥースをグレンチェック風にアレンジしたベルテッドコートは、長めの丈でバスローブフィーリングが漂う一着。色合いもいいし、比翼仕立て、ルーズなシルエットなど、今年の最前線のトレンドを盛り込んだつくりになっています。ベルトはバックルがないので、フロントできゅっと結べばよりエレガントが際立つルックスに。軽い着心地でもあるので、カーディガンを着るような感覚で着たいですね」
BURBERRY|バーバリー
祐真 「今回チョイスした中では王道中の王道のカーコート。膝下の長めの着丈が今年っぽくもあり、スコティッシュタータンの表地とブライトネイビーの裏地をリバーシブルで着られる優れモノでもあります。ラグランスリーブで軽い仕立てなので、ニットやシャツの上にそのまま羽織って、ジャケットフィーリングで着こなすのもおすすめです」
STELLA McCARTNEY MENSWEAR|ステラ マッカートニー メンズウェア
祐真 「ドロップショルダーでややオーバーサイズ。ルーズなシルエットにトラディショナルなチェック柄を合わせた逸品。このブランドならではのバランスが小気味いい一着です。リラックスしたムードでラフに着るっていうのが前提なのでしょうけれど、こういうダッフルはビシっとしたスーツの上に羽織っていてもコントラストが際立ってカッコいい。VANSのスニーカーを履いたスタイルにももちろん合うし、チャーミングな魅力を持ったコートです」
VALENTINO|ヴァレンティノ
祐真 「同じチェックのダッフルコートでも、前出のものとは好対照なのがヴァレンティノのこの一着。セックス・ピストルズのアートワークを手掛けたジェイミー・リードとのコラボレーションとなるこのコートは、ビシっとタイトなシルエットで、裾にはフレーズのレタリングワッペンをあしらい、ダメージ加工も凝ったものになっています。クラシカルなディテールをアタッチしながらもパンクなムードをプラスしている。ある意味、本当のブリティッシュ・スピリットを色濃く反映しているアイテムだともいえますね」
【spot light】
LOEWE|ロエベ
祐真 「個人的には今、レインボーカラーブーム真っ只中。そのため、直感的に「欲しい!」と思ったコートです。ラペルと胸ポケットはロエベが得意とする上質なナッパのタンレザー。マルチストライプの鮮烈な色使いに加え、シアリングウールの圧倒的なボリューム感…まさにその場の空気を一瞬で変えるアイテムだといえます」
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