見えないエレガンスを纏った靴|JOHN LOBB
JOHN LOBB|ジョン ロブ
ドレスアップに華を添える靴「EASTON」
美しい靴から薫り立つのは、気品か色香か
褒め言葉として使われる、気品や色香といったものを、目にした人はいるだろうか。見えないものだからこそ、人びとはそれを欲し、かたちのないものだからこそ、それを具現化にしようとする。そのひとつの回答となるのがジョン ロブの新作「EASTON(イーストン)」である。
Model Photographs by KUBOTA Ikuo(owl)Still Photographs by KOBAYASHI Takashi(ITARU Studio)Text by ITO Yuji (OPENERS)
新ディレクターが実現した色香のある靴
人を形容する言葉には、正体のないものが実に多い。それだけ人間がさまざまな要素で構成されていることの証でもあるが、そのうちのひとつに挙げられるのが、色香である。その文字が示すように、人から薫り立つような芳香にも似た曖昧な要素は、一朝一夕にして手に入らないものともいえる。
なぜなら、それを得るにはさまざまな経験を積み重ねる必要がある。なかには知る必要のない経験もあるかもしれない。
割り切ってしまえば生きるためには気品も色香も優雅さだって必要ない。でも、それを知っているか否かで人の魅力は大きく変わってくる。果たして「ジョン ロブ」が似合う大人はどちらか。きっと“大いなる無駄は優雅なる投資である”という事実を経験したことのある人ではないだろうか。
タキシードにあえてネイビーのイーストンを
この“優雅なる投資”は靴にも通じる部分がある。着こなしにおいて靴は主役となりにくい存在だが、それによって自身の嗜好性が表現されるのも事実。この傾向は腕時計の世界にも似て、自分が満足できるものを身につけているかどうかによって、内から湧き出すオーラのようなものも異なってくる。
つまり、そのオーラこそが色香の正体、ともいえるのではないだろうか。ジョン ロブの2015年秋冬の新作「イーストン」は、それを支える希有な靴といえる。プレステージラインに位置するこの靴はラスト7000番の木型にシングルモンクストラップを配した、ドレッシーなデザイン。スクエアのバックルは新しくつくられたもので、もちろんジョン ロブのオリジナルだ。
イーストンの特徴はカーフとスエードのコンビネーションからなる異素材合わせの妙。アッパーが艶やかなカーフなのに対し、ストラップからヒールにかけては、ややカジュアルな趣をもつスエードに覆われている。この靴がもつ魅力を最大限に引き出すとしたら、あえてタキシードなどのフォーマルスタイルのハズシとして使ってみるのはいかがだろう。その場合、色はネイビー×インディゴがおすすめだ。
その理由は、深みのあるネイビーはかつて“黒よりも黒く、深みがある色”とされていたからである。簡単にいってしまえば昔の光に照らされた場合、加減によっては黒よりもダークに見えたというのが答えだが、ジェームズ・ボンド然り、ウインザー公然り、洒脱な英国の伊達男たちは黒ではなく、ネイビーを好む。その違いは一見わかりにくいものだが、その曖昧さこそが、空気のような色香となって男を包み込んでくれるのかもしれない。
「EASTON(イーストン)」
価格|28万800円(シューツリー込)
木型|7000
色/素材|Black×Charcoal,Navy×Black,Navy×Indigo /Calf× Suede
ソール|シングルレザーソール
サイズ|5E~9.5E