連載|祐真朋樹・編集大魔王対談
FASHION / FEATURES
2019年12月3日

連載|祐真朋樹・編集大魔王対談

クリエイティビティやハートをもってブランドを前進させたい

祐真 アラスディアさんが関わるようになって、ハンターの製品ラインナップも変わったのでしょうか。

アラスディア 以前はフットウェアが圧倒的に多かったのですが、現在、全製品の45%はフットウェア以外のアパレルやバッグ、小物などのアクセサリー類で構成されています。その一方で、もちろんフットウェアも成長しています。健全でしっかりとしたビジネスで、お客様と共鳴し合える関係を築けていると感じています。

祐真 まさしくプログレッシブ・ヘリテージですね。

アラスディア はい、伝統を大切にしながら前進しています。

祐真 ここ5年ぐらい、雨の日に履くブーツはハンターなんですよ。3足所有しています。

アラスディア それは嬉しいです。私も愛用しています。

祐真 今日穿かれているパンツはハンターですか?

アラスディア これはステラ マッカートニーです(笑)。

祐真 いいですね。そのピンバッジはなんですか?

アラスディア 毎年11月になると、イギリスではリメンブランス・デー(=通称ポピーデー)という、戦死者を弔う行事を行います。第一次世界大戦が休戦協定を締結した1918年11月11日に最も近い日曜日を追悼の日とし、その日が近づくと、街は赤いポピーの造花を胸につけた人で溢れます。最近では、第一次世界大戦だけでなく、第二次世界大戦や最近のアフガニスタンやイラクにおける戦死者など、イギリスが関与した戦いの中で命を落とした兵士たちを追悼する日となっています。

祐真 なるほど、ポピーのモチーフだったんですね。

アラスディア 第一次世界大戦時に激戦地だったベルギーのフランドル地方で、戦士達が倒れた大地に咲き乱れていたのが赤いポピーの花だったそうです。その様子を見た軍医が残した詩に由来するそうで、以後、ポピーを戦没者慰霊の象徴とするようになったのです。

祐真 ハンターのアパレルも好調とのことですが、今後も力を入れていく予定ですか?
アラスディア はい、メンズもウィメンズも拡充していく予定です。バッグもとても好評なので、より一層力を入れていきたいと思っているところです。

祐真 レインウェアというカテゴリー以外にも注力されるのでしょうか。

アラスディア ライフスタイルビジネスを目指しているので、防護用品としての機能性という価値を、ほかの領域にも拡大していきたいですね。我々が作る製品はすべて、ハンターらしさを感じられる“本物”であることが重要です。もちろん、ブランドをもっと大きくする野心的な計画もありますし、ほかのブランドとのコラボレーションを積極的に行うことも考えています。

祐真 ブランドとして長い歴史がありますが、アーカイブは揃っているんですか?

アラスディア 実は、ほとんどないんです。軍隊のためのブーツやウェットスーツなども含め、ハンターは160年の歴史の中でいろいろなものを作ってきたのですが、残念ながら、幾度となくオーナーが変わったことで、過去の資料やアーカイブが紛失してしまったんです。私がビジネスに参画するようになってから手掛けたことのひとつに「ハンターアーカイブ」というプロジェクトがあります。インターネットをパトロールして、ハンターのアイテムを持っている世界中の人から買い戻しているんです。

祐真 古いものも見つかりましたか?

アラスディア はい、ほとんどがブーツやフットウェアです。ハンターは昔、自動車のタイヤも作っていたんですよ。

祐真 そうなんですか!知りませんでした。

アラスディア 実はタイヤの製造から始まったブランドなんです。1856年の創業当時は、車のタイヤやワゴンの車輪などを作っていました。さすがにその時代まで遡るのは難しいですが、1910~20年代のブーツは見つかりましたよ。

祐真 見てみたいです。

アラスディア ロンドンにありますので、いつか見にいらしてください。

祐真 とても素敵なストーリーですね。

アラスディア そうでしょう。ただ、やはりアーカイブのほとんどがなくなってしまったことは残念です。ほかのイギリスのヘリテージブランドの中にはきちんとアーカイブを維持できているところもありますので。

祐真 バーバリーもそうですよね。

アラスディア はい、マッキントッシュも古いピースをアーカイブとして保存できているようですね。
祐真 ところで、アラスディアさんはカッコいい身体をされていますが、クリケットや乗馬などをされているんですか?

アラスディア ありがとう(笑)。乗馬とテニスをします。最近はまったく乗らなくなりましたが、以前はよく自転車に乗っていました。歩くのも好きです。ただ、走るのはダメですね。

祐真 僕もです。

アラスディア 走るのが大っ嫌いなんです、昔から(笑)。一番得意といえるスポーツはスキーですね。17歳の時にイギリスの代表に選ばれたこともあるんです。その後大学に進学したので辞めてしまったのですが。

祐真 それはもったいない!

アラスディア そうなんですよね。最近はもうちょっとエクササイズをしようと思っているところです。子どもが4人いるので。

祐真 4人もお子さんがいると大変でしょう。何歳ですか?

アラスディア 長男が14歳、長女が12歳、次男が11歳、次女が8歳です。

祐真 うちにも息子が1人いるのですが、小さい頃ハンターの長靴を履かせていました。

アラスディア それは可愛らしい。今はおいくつになられたんですか?

祐真 21歳になりました。

アラスディア そんなに大きなお子さんがいらっしゃるとは。一人っ子ですか?

祐真 はい。

アラスディア いいですね。子どもは1人で十分大変でしょう(笑)?

祐真 そうですね(笑)。最後に、今後の目標やブランドの展望などがあれば教えてください。

アラスディア グローバル的な事業戦略は、フットウェアとバッグ・アパレルを50:50にすることを当面の目標としています。クリエイティブの観点では、お客様と密な関係を築きながらモノづくりをしていきたいと思っています。ロンドンの国会議事堂の上空に気球を飛ばした時などは、見ていただいた方に驚きと感動を与えることができたと思うので、このようなサプライズは今後も続けていきたいです。また、多くのブランドは、ビジネスを押し進めるために売り上げや数字など、データばかりを気にしている気がします。でも、それだとブランドは滅菌状態になってしまう。だからこそ、私はクリエイティビティやハートをもって、前進したいんです。

祐真 パイオニア・スピリットですね。とても好きです。

アラスディア ありがとうございます。

祐真 こちらこそ、今日はありがとうございました。
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