香取慎吾と祐真朋樹、服とアートと店づくり|JANTJE_ONTEMBAAR
JANTJE_ONTEMBAAR | ヤンチェ_オンテンバール
帝国ホテルプラザに二人のショップ、8/25(土)にオープン
香取慎吾と祐真朋樹、服とアートと店づくり
タレント・アーティストの香取慎吾とスタイリスト祐真朋樹。出会って25年が経つ二人は、ファッションへの深い愛情とリスペクトでつながっている。2014年に発売された『服バカ至福本』(集英社)で、香取慎吾は「私服を着ているときが、僕の至福のときなんです」と帯に寄せ、ワードローブを公開した。スタジオに埋め尽くされたハイブランド中心の膨大なコレクションを祐真朋樹がスタイリングしてから4年、自称“服バカ”の二人は、ついに自分たち以外の人がハッピーになるための私服と、それを買える空間をディレクションすることになった。場所は青山や銀座の一角ではなく、帝国ホテルプラザ内。ともすると客を限定しそうに聞こえる意外性に満ちた場所だが、二人の理想は“多くの人に愛される、ここでしか表現できないもの”。「SANYO COAT(サンヨーコート)」や「MINEDENIM(マインデニム)」、「BORSALINO(ボルサリーノ)」など、国内外のブランドとの商品開発は、すべてに服とアートがつながっている。ここに至るまでと、これからについて、ここだけのクロストーク。
Photographs by MAEDA AkiraText by OZAWA Masayuki
そうだ、祐さん、前に話してた服、やってみない?(香取)
――早速ですが、ブランド名の「JANTJE_ONTEMBAAR(ヤンチェ オンテンバール)」、耳慣れない言葉ですが、由来を教えてください。
祐真 まず名前を決めましょうって話になったんだけど、僕のアイデアは特になく、香取さんが2、3案出してくれたんです。「JANTJE_ONTEMBAAR(ヤンチェ オンテンバール)」はその一つで。
香取 普段から、気になる言葉や文字をスマホにいろいろとメモしているんですよ。そのリストがぶわーっとあって。ヤンチェはやんちゃ坊主、オンテンバールはおてんば娘という意味の語源となったオランダ語なんですけど。
祐真 言葉の響きが素晴らしくてね。「これ!」ってすぐに思いました。
香取 自分で案を出しておきながら、スペルを見ても誰も読めないかな、とか不安になったんですけど、祐さんが「いや、もうこれでしょ」的な感じだったので。でも幾つになっても、やんちゃ坊主でおてんば娘のように、ファッションも楽しめたらなって想いを込めました!
――では、ブランドの構想もスピーディだったのですか?
香取 1年も経っていないんじゃないかな?
祐真 去年の10月とかだよね?
香取 祐さんとは、もう25年近くの付き合いで、洋服の話もたくさんしてきたけど、自分でやるショップやブランドには興味がないって。お互いが。
祐真 買いたいし、着たいからね。
香取 でも、『服バカ至福本』のときに僕の服を祐さんに全部見てもらったときに「すげえ、こんなに服が好きなんだ」って改めて思ったんだよね。それでより意気投合して「いつか何か一緒にやりたいね」って冗談交じりで話すようになった。
祐真 香取さんの自宅から私服を全部、スタジオに運んだんだけど、それはすごい量だったんです。しかも、きれいに整理された状態であるわけです。あぁ、これは言葉にすると恥ずかしく聞こえるけど、ファッション愛だなって感動しました。自分と同じくらいの服バカがここにいるんだなって。
香取 で、昨年、新しい道が僕の中に始まって、やりたいことをして楽しみたいって、思った時に祐さんと話した服のことを思い出して。仕事でご一緒したときに「そうだ、祐さん、前に話していた服、一緒にやってみたい?」って話したら。
祐真 どんどん話が進みましたね。
――香取さんは、先ほどお話に出た『服バカ至福本』でご自身の膨大な私服を公開され、また祐真さんと洋服について大いに語り合っていました。その時は服を買うことが楽しみだと仰ってましたが、相変わらず服は増えているのですか?
香取 わからないぐらい増えていると思いますよ。
祐真 同じく。しかもお互いに服を手放せない性分なんですよね。
香取 服を捨てるとか、ちょっと考えられないよね。そしてどんどん買い続けている。あ、でも昔はサイズが合わなくても、欲しいと思った服は買っていたんですけど、そこは自分に「待て」をかけられるようになりました。着ない服、履かない靴は、ね。
祐真 海外に行くと襲われるやつだね。もう帰国しなきゃいけないから、サイズが違うけどとりあえず買っておくか、みたいなやつ。
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帝国ホテルプラザに二人のショップ、8/25(土)にオープン
香取慎吾と祐真朋樹、服とアートと店づくり(2)
やっぱり香取さんの絵が好きですから。
それを服に反映させていけないか、って(祐真)
――もともと、ブランドとお店、どっちを始めたかったのですか?
香取 最初はブランドを作ろう、だったよね?
祐真 で、その後にお店。という状態になり、いまスタートしようとしています。今は服と並行して、どんなお店だったら面白いか、四六時中考えています。とにかく他にないことを作ろうってことだけは決まっていますが、それは服作りにも言えること。他にないよりも、ここでしか表現できないこと、のほうが大事かな。僕はね、やっぱり香取さんの絵が好きですから。それを服に反映させていけないか、ってずっと思っていた。
――香取さんは、服を買い続けるだけでは満たされない、表現できない何かがありましたか?
香取 そこは満たされているけど、じゃあ作りたいものがないかと言われたらそんなこともないし。でも普通のブランドみたいに、春夏、秋冬ってテーマを決めて作りたいわけじゃない。これは絵を描く感覚に近いんだけど、完成したらすぐに次を描きたいんです。服もお店に並んだら、次に何ができるかな?って常に考えていたい。
祐真 いままでのファッションカレンダーとは違う流れのサイクルになりますよね。今後はどうなるかわからないけど、ずっとアドリブみたいな感じかもしれない。今回は、まず香取さんが2つの絵を描いてくれたことが始まりでしたね。
――それが「SANYO COAT(サンヨーコート)」と一緒に製作した数々のコートの裏地や、「MINEDENIM(マインデニム)」に別注したジーンズの裏に使われているのですね。
祐真 あと、ウィメンズは「STAIR(ステア)」とコラボレーションしているのですが、スカートに写真をプリントしているんです。それも香取さんが撮った。
香取 六本木ヒルズの展望台からiPhoneで撮った夕方の東京。それをインスタと同じようにアプリで加工しただけですよ。
祐真 写真も絵と同じようにアートですよね。だから、香取さんが撮ったアーティスティックな写真を服に使ってみたいと思いました。
香取 あの写真をお店に飾りたいよね。
祐真 そうですね。ところで香取さんは、好きで絵を描いて、好きで服を買って。そのふたつが今回結びついたわけですが、服とアートとの関係をどう思っているの?
香取 アクリル絵の具でキャンバスに描くようになったのは10年くらい前だったんですよ。でも「いつから絵を描き始めたのか?」って最近は質問が多くて、ちゃんと調べなきゃって思って自分を探ったんです。この前、ルーブル美術館に展示するために絵を持って行く機会があり、家をいろいろとひっくり返していたら、1990年とか91年、つまり15、6歳のときにアイドル誌で絵の連載をしていたんですよ。その絵が我ながらなかなかやばい(笑)。いろんなところで絵を描かせて頂く機会が増えてきて、「香取慎吾、最近アートやってるな」って周囲に言われるように、自分でも「そうだよね、急に俺やってるな」って感じもあったんですけど、「ちゃんと昔からやってるじゃん!」みたいな。
祐真 その頃って、香取さんのファッションもヒップホップな格好だったじゃない。それと落書き的な、ストリートアートとつながっていたのかな?
香取 多分そうだと思う。首から金のネックレスをかけてラジカセを持ち歩いて、スプレーで絵を描く、みたいな。
祐真 ファッションから作風が生まれるっていいよね。僕がアートに興味を持ったのは80年代。バスキアの絵もさることながら本人の格好を雑誌で見てニューヨークに行きたいと思った。香取さんとはちょっと違うんだろうけど。
香取 今日着ているこの赤が好きで、絵の色に使ったりとか、自分の描いた絵と服の色は、関係がじつは近いかもしれない。ここ何年かファッションとアートとか言い始めるようになって、「JANTJE_ONTEMBAAR(ヤンチェ オンテンバール)」を始められて、すごくラッキーなタイミングかも。時代と偶然合っている感じ。絵を裏地に使えるとか。でも、今までみたいに完成された絵を見てもらって終わりじゃなくて、それが10着、100着と使われてみんなのものになる経験は初めてのこと。基本、あまり考えずに絵は描くんだけど、今回はちょっと緊張しちゃったかな。
祐真 プリントする生地によっても、見え方は変わるしね。これは裏地に使っているけど、取り外しが自由なライナーに使ってもいいな、とか。絵から服の形やディテールが変わっていくって、面白いなと思うんです。
香取 絵を描くことは好きだし、たくさんの人に見てもらいたいと思うけど「俺の絵、いいでしょ!」って自分から薦めるのは苦手で。いつも「いいのかな〜、どうかな〜」みたいな感じ。
祐真 それでいいんじゃないかな? でも今後はどうしようか。この絵をアイコンとして使い続ける?
香取 僕はどんどん描くよ。それはまったく難しいことじゃない。祐さんとかみんな「絵を描くのは大変じゃないか」って心配してくれるけど、僕はコロコロ変わって行きたいかな。
祐真 それはいいですね。ファッションは変わっていかないとダメになるから。
香取 お店にも2枚の絵を飾ろうと思っているけど、それが変わったり、増えていったり。そしたら今後は、「JANTJE_ONTEMBAAR(ヤンチェ オンテンバール)」で使った生地のギャラリーもできたらいいな。
――メゾンはアーティストの作品をコレクションに載せてフィーチャーしていますが、それがアートで服が変わっていくのは逆の発想で新鮮ですね。
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香取慎吾と祐真朋樹、服とアートと店づくり(3)
ファンのことを一番に思い描いて
服のことを考えているかも(香取)
――先ほど、ウィメンズのお話もされておりましたが、服作りについて苦労した点はありますか?
祐真 香取さんは、ちゃんと着る人のことを考えた意見が多いんです。特にウィメンズは、女性の気持ちを代弁している感じがして驚きました。
香取 自分でも奇をてらったデザインより、女性が実際に着た時に気になりそうなところを気になったのは自分でも意外だった。仕事によっても派手な服は着られないとか、ファッションで冒険できない人っていると思うんですけど、そういう人にも楽しんで欲しいから。
祐真 僕はどっちかというと自分が着るわけじゃないから、見た目重視の意見だったと思う。このタートルネックは首がもうすこし高いほうが美しいとかね。でも逆に香取さんは、締め付けがない方がいいとか。ブラウスもネックが深いほうがセクシーできれいなんだけど……。
香取 あと1、2cmあげないと着にくいかも、とか話ししていたよね。
祐真 それがいい反応を起こしているんじゃないですかね。
香取 モデルさんが着るならあと2cm深くてもいいけど、みたいな細かい部分にこだわっている自分がなんか不思議だったけど、よく考えるとファッションの話って、女性とする方が楽しかったりするよね。
祐真 今回一緒にモノづくりをした「ステア」は、女性のための服を女性デザイナーが作っていたから、いろいろと勉強になりました。
香取 けっこう、僕はファンのことを考えちゃったかな。やっぱり自分が何かするってなったら、それを喜んでくれたり、応援してくれるのが嬉しい。その人たちは、きっと僕と同じだけファッションが好きなわけじゃないけど、僕が祐さんとブランドやお店を始めるなら、興味を持ってもらいたい。普段あまりこういう服をきたことがないファンのことを考えると、ネックはあと2cm上のほうがきっといいよねって。
――では、アイコンのコートについて教えて下さい。
祐真 「サンヨーコート」に別注したのは、80年代に三陽商会が作った僕の私物のコートをベースに作れないかって相談したところから広がりました。すごくオーバーなデザインだから、今では作っていない。アーカイブを掘り起こす作業から始めたんです。この洗いがかかってクシャッとしているのにハリがちゃんとある感じがどうしても欲しかった。
香取 倉庫にも行ったよね。
祐真 行きました。最初に提案された柄がイメージと少し違ったので、アーカイブを保管している三陽商会の倉庫に行きましたね。山積みになった残反から一緒に選びました。
――もはや肉体労働ですね。でも、さすが「サンヨーコート」なだけあって、生地のクオリティは素晴らしいですね。
祐真 見つけたアーカイブをベースに、新しい生地を作ってもらいました。しかも、絵をそこに直接プリントできないか、とか、話がどんどん膨らみました。あとは「マインデニム」ともデニムのコートを作っています。
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香取慎吾と祐真朋樹、服とアートと店づくり(4)
お店のモニターをスカイプでつなげて
お客さんと会話したいな(香取)
――最後に、今後のお店の構想について教えてください。
祐真 本当は次の服を考えなきゃいけない段階ですが、その前にお店をもっと面白くしたいという考えが先に立っていますね。
香取 楽しいお店ね。僕は自分でも覚えていないくらいの至福のアーカイブを引っ張り出して、飾りたいな。
祐真 その案も出たよね。
香取 「買えるんですか?」、「ごめんなさい買えません、でも素敵ですよね?」みたいなやりとり(笑)。
――それはもう、展覧会レベルのお話ですね。
祐真 それってやっぱり誰にでも理解してもらえることじゃない、ファッション愛だと思いますよ。膨大な服を所有していると「着ないのになんでそんなに持ってるの?」って話になる。普通の人はそれが一番の疑問なんだろうけど、僕たちにはそれは全く疑問じゃない。ただ単にそれが必要なわけ。
大事に保管して、眺めるのも大事なんだよね。そんなこと言うと「バカじゃないの?」って言われる。だから僕らは“服バカ”なんですよ(笑)。しかも香取さんのアーカイブの並べ方って、本当にすごくきれいで美しいしね〜。
香取 靴や服を保管する場所がいくつかあるんですけど、ある場所に靴がいっぱいになったから、この前、整理したんです。履かない靴はもうしまっておこうかなって。そしたら履く靴が65足だった。それを見て少な〜と思った自分に落ち込んじゃった(笑)。
祐真 わかるわかる。とんでもない落ち込みと、謎の心境に陥るよね。僕も5年くらい前にガレージセールで25ラック分の服を売ったんだけど、倉庫にはその5倍分の服が残っていて、ガーン、みたいな。
――ぜひ、お二人のアーカイブも販売して欲しいと思います。ちなみにお二人は、販売員になることへの興味はありませんか?
香取 僕と祐さんが自分たちでお客として行きたいと思えるお店を作りたいから。
祐真 そういうことだね。お店なのかギャラリーなのか遊び場なのか、とらえどころのない空間を維持していきたいですね。
香取 でも、それに近いアイデアはあるんですよ。お店にモニターを置こうと思っているんです。そこにはまぁ映像が流れるんですけど、カメラもつけてスカイプも繋げたいなって。時間のあるときにスカイプしたら、お店と繋がって、来てくれるお客さんと会話できたらなって。
祐真 それは絶対やりたいよね。
香取 お店にもしょっちゅう行くし、忙しくて行けないときもスマホでスカイプを繋げて、僕のこともお店から見れるようにしたい。
祐真 やっぱりコミュニケーションできる場所がいいね。
香取 「その服、すごく似合ってるよ〜!」みたいなこと言いたい!
PPP SHOP JANTJE_ONTEMBAAR
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