祐真朋樹|JOHN LAWRENCE SULLIVAN柳川荒士さんと対談!
SUKEZANE Tomoki|祐真朋樹
新コーナー「突撃! 隣の物づくり」
第1回ゲストはJOHN LAWRENCE SULLIVANデザイナー 柳川荒士さん
トモキ倶楽部の新コーナー、「突撃! 隣の物づくり」。デザイナー、アルチザン、ショップオーナー、シェフ、アーキテクト、バーテンダー……などなど、僕が会いたいひとに話を聞きに行きます。第1回のゲストは、JOHN LAWRENCE SULLIVAN(ジョン ローレンス サリバン)のデザイナー、柳川荒士さんです。
Interview&Text by SUKEZANE TomokiPhoto by IGARASHI Takahiro
今回で東コレは最後という噂のJOHN LAWRENCE SULLIVAN
渦中のデザイナー、柳川荒士さんに真相を直撃!
祐真 東京コレクションの時期ってなぜか海外ロケとかが入って日本にいなかったりすることが多くて、これまであんまりちゃんと見てこなかったんだけど、今回はずっと東京にいられたので結構いろいろ見て回りました。で、荒士くんのJOHN LAWRENCE SULLIVANと尾花(大輔)くんのN.HOOLYWOODは今回で東コレは最後だ的な噂を耳にしたんで、それじゃぜひそのあたりの話を聞きたいな、と思いまして。で、今回のコレクション、僕すごく好きでした。
柳川 ああ、そうなんですか!
祐真 「今回は好きにやれました」と言ってたけど、今までは好きにやれなかったわけ?
柳川 ショーって、ずっとチーム組んでやってたじゃないですか。演出がいて、スタイリストがいて、ヘアメイクがいて……で、僕の洋服があって。みんなでミーティングしながらやってたんですが、デビューしてショーを重ねていくと、マスコミにも大きく取り上げていただけるようになって、そうするとだんだんなんて言うか「おもしろいことやらなきゃいけない」とか「変わったことをやらなきゃ」とか、そういうのが自然と先行していったような気がするんですよね。もちろんやってるそのときはテンションも上がってるしそれでいいんだけど、時間がたって振り返ると、本当に自分が今シーズン伝えたかったことって何だったのかな〜って思うシーズンも多かったんです。なので、思い切って本音だけで勝負したらどういう気持ちになれるのか、っていうところを探りたかった。まぁ、僕の要素をちょっと多くしてもらった、っていう感じなんですけど。……「僕の要素」って……何ですかね(笑)。
祐真 謙虚ですね。「多くしてもらった」って(笑)。つまりこれまでは、ショーってものは柳川さんが仕切ってリードするっていうよりは、「チームで作り上げていく」っていう意識が強かったんですね。
柳川 そうですね。スタイリングはともかく、ヘアメイクとか演出っていう部分は任せる部分が多かったと思います。でも今回は、できるかぎり自分の要素を強く出せるようなショーをやりたいと思ったんですね。
祐真 なるほど。だからよく見えたのかなぁ。
柳川 ですか?(笑)
祐真 僕は基本、「ショーは服だ」と思ってるんですよ。服しか期待していないっていうか。ま、ジョン・ガリアーノとかマックイーンみたいに凝った演出を見せてくれるショーにもすごく感動しますけど。でも基本的には服。果たしてその服がいいのかどうなのか、ってことだけ思っていっつも見てるんですけど、やっぱり今回のJOHN LAWRENCE SULLIVANはすごくよかった。「着たいな〜」と思えるものがすごくたくさんあった。
柳川 ありがとうございます。本当ですか?(笑)。そう言っていただけるとホッとします。毎回、いろんな評価があるんでね。
祐真 多分、ショーを見たのは3回目なんですよね。最初に見たのはファーストかなぁ? 2回目かな?
柳川 セカンドですね。あのとき、祐真さんがバックステージに来てくれたの、覚えてます。
祐真 で、あとはあの寒い、雪待ちみたいな状況で見たやつ(笑)。
柳川 こないだの秋冬ですかね(笑)。 すみません、あれ寒かったですよね。
祐真 あのときは寒すぎて記憶が薄くなってる(笑)。まぁほかも全部録画で見せてもらってますけど、確かにほかのショーと今回のショーは趣がちがう。これまでより、なんて言うか、服に集中しているように思えた。
柳川 なんか、自分たちの会社の規模でああいうこと、つまり大きな会場で大がかりな演出で、っていうショーをつづけていくことが本当に正しいことなのかなって、すごく疑問に思うようになっていたんですよね。
祐真 使いすぎたってこと? お金。
柳川 そうですね(笑)。それもありますし、服をもうちょっとシンプルに見せたい、根本に帰りたいっていうのがあったんです。祐真さんに見ていただいた2シーズン目とか、ああいうのが身の丈に合ってたのかな、みたいな。
祐真 すごい良かったですよね。
柳川 ああいうのをやるべきなんじゃないか、と思った。あのときの気持ちをすごく引きずっていたのかもしれないですね。で、それからだいぶ回も重ねてきて、みんなスキルアップしたはずで、この状態であのセカンドシーズンのニュアンスでやったらどうなるんだろうな、って考えて提案しました。
祐真 おそらく、見に来た多くはその思いを共有したんじゃないかな。作る側も見る側も気持ちいい、っていうバランスになっていたと思う。そこにリアリティもあったしね。リアルな感じがないと、他人事ながら「あ〜あ、こんなことしてていいのか!? 大金使って……」って心配になっちゃったりするからね。
柳川 はい(笑)。そうですよね。
祐真 東コレの場合、とくにそう思うね。ミラノとかパリとかだと、「ああ、おもしれー。もっと騒げ!」とかって思うんだけど……日本の若手に対しては何か特別なシンパシーがあるのかもしれないです。
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日本人の体型を美しく見せる
ちょっとチャレンジングなテイラードが最大の魅力
祐真 (ルックを見ながら)ベージュとかパープルとか……きれいにできてますね。
柳川 難しい色だからこそ、素材がすごい重要だなと思って。このシーズンは素材に多く時間を割きました。ウールの生地もそうですけど、ここらへんのも、イギリスのジョンストンズっていう歴史のあるところに4カ月前からオーダーしてやっと届いた素材です。
祐真 きれいだったね〜、これ。(写真右|パープルのルックを見ながら)
柳川 それはウール100パーセントなんですけど、なんかカシミアとかアルパカとかが混じったくらいの柔らかさがあるんですね。で、日本で何度もこの「ホームスパン」ていう素材にはチャレンジしてるんですけど、どうしても固すぎて、なんかスーツっていうよりジャケットとかブレザーみたいに見えてしまう。でも今回はすごく柔らかく、落ち感があるように仕上がったんでよかった。この柔らかさは、やっぱりイギリスじゃないとできないんですよね。
祐真 僕も最近ホームスパンでスーツひとつ作ったんですよ。トム・ブラウンで。やっぱり柔らかいですね。
柳川 そうですよね
祐真 いいよね。ホームスパン。
柳川 僕も大好きな素材です。やっといい感じの柔らかさでできたかな。
祐真 (写真左|ブラウンのジャケットを見ながら)ジョンストンズってところがこの生地を作ってるわけですね。
柳川 スコットランドの生地です。もともとはカシミヤとか、高級素材が得意なところなんです。でもオーダーから到着まで4カ月かかる。だからオーダーが付いた分を作るのにまた4カ月かかるんですよね。これで納期がもう、すでに9月とか10月くらいになってしまう、っていう(笑)。
祐真 9月ならまだいいけど、10月だとつらいね〜。(祐真さん、着てみる)相変わらずひとつボタンにこだわってますね。
柳川 そうですね(笑)。 ひとつボタンだと、付ける位置が1センチでもちがうと全体の印象が全然ちがってくる。そこがおもしろいと思うんですよね。
祐真 ロンドンで作ると、ボタンから下が以上に長いんだよね、ひとつボタン。
柳川 ハンツマンのですか?
祐真 ギーブス&ホークスもそうだけど。結構あちこちで作ったんですけどね、すっごい長い。
柳川 そもそも着丈が長いんすかね。
祐真 『007』観てるとよく思うんだけど、やっぱ長いよね、基本的に。こう、おしりが隠れるくらいに長いよね。だからイギリス人みたいに腰の高いひとはいいけれども、ジャパニーズ向きじゃないんだよね、結局。ジャケットが歩いてるみたいになるんだもん、イギリスで作ると。
柳川 あ〜、そうですよね、分かります。ハンツマンって、僕が行ったときも、ひとつボタンの袖4つボタン、サイドベンツっていうのが定番だったんですよ。自分がつねに定番にしてたのとまったくおなじだったんで、すごいうれしかった(笑)。
祐真 ハンツはひとつボタンの代名詞的なテーラーなんじゃない? ひとつボタンならハンツへ行け、っていう。で、JLSのひとつボタンは、着丈もそんなに長くなく、いいんじゃないですか? 東洋人向きになってて。
柳川 日本人に合うバランス、というのは、やっぱりすごく意識してますね。やっぱりジャケットが一番売れるブランドなんで。
祐真 ここで言っていいことなのか分からないんだけど、外人モデル使うじゃない。そうするとさ、そういう思いは上手く表現できるもんなんですか? 東コレ見てると、やっぱりサイジングがね、ケツがきつそうだなと思うことが多いんだよね。ケツとジャケットの腰まわり、きつくねーか? といつも思うんですよ。
柳川 いま祐真さんが言われているようなことは、自分も気づいていて、いやだったんですよね。正面から歩いてくるのを見てる分にはいいんですけど、ターンして帰るときがすごくいやなんですよ。ジャケットの背中が、なんかこう悲鳴あげてるっていうか。で、ケツもプリップリですし。なので今回は、オーディションの時点で徹底的にモデルのサイズをチェックしました。
祐真 あ、そうなんだ。だから気にならなかったんだね、今回は。きれいだなーと思って見られた。
柳川 本当ですか? ものすごい気にしました。サンプルは2サイズ作っているんですが、モデルへのフィッティングを徹底したし、ベルトの位置とかにもこだわりました。
祐真 ランウェイってやっぱりそういうのがすごく大事だよね。スッと回転するときの見え方っていうのは、気になるからね。ミラノとかパリのショーを見ると、やっぱりこう、フッと動きがあるでしょ。そういう差って、すごく無意識のうちに感じるよね。……まぁそんな話はどうでもいいや(笑)。
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今回のコレクションのアイデアソースはジム・ジャームッシュの映画。
色の使い方も映画に影響されたことのひとつ。
祐真 オレンジ、結構これ印象強かったんすけど、最後の。今回、オレンジ以外にも色がいっぱい使われてますけど、全体の構成のなかで何か特別なイメージはあったんですか?
柳川 いつもコンセプトはあんまり言わないんですけど、今回最初にいいな、って思った世界観はジャームッシュの映画でしたね。
祐真 ほう。
柳川 『ストレンジャー・ザン・パラダイス』とか、まぁそこらへんの映画はずっと観直していて、そのつながりで『ドラッグストアカウボーイ』とか『ランブルフィッシュ』とかそういうものも観たりしてまして。……『ランブルフィッシュ』、モノクロだけど最後のほうで、闘魚のところだけオレンジが出てくるじゃないですか。
祐真 あ〜、出てくる出てくる。
柳川 あれがもう、自分のなかでは本当に衝撃的で。ああいう色の使い方って、もしかしたらよくあることなのかもしれないけど、好きな映画のなかでも出てきてるし、これはひとつ取り入れてもいいのかな〜って思ったんですよね。で、まずホームスパン作るときに、あのコンクリート感とかまだら感っていうのを意識したんですけど。
祐真 うーん、なるほど。『ランブルフィッシュ』ね。ミッキー・ローク、かっこよかったねぇ。
柳川 かっこいいですね! ツイードのジャケット着てますもんね、バイクで。
祐真 何をどうまちがって今みたいになっちゃったんだろうか。
柳川 レスラーですね、今(笑)。
祐真 ひとは変わるね(笑)、 変わんないと思っても。『ランブルフィッシュ』って、映画の存在そのものが不良だったよね。コッポラの『アウトサイダー』観た?
柳川 観ました。
祐真 『ランブルフィッシュ』は『アウトサイダー』の余ったフィルムで作った、っていう説があったよね。
柳川 そうなんすか? すごいいい映画ですよね。
祐真 金をかけなかったほうがコケなかった、みたいな。評価が高かったというか。
ショーが好きで好きでたまらない荒士さんが
ショーをやめるという決断にいたるまでの、至極ストイックな理由。
祐真 今回のコレクションは、一応、東コレ最後ということもあって、ちょっと原点回帰的要素が強かったような気がします。
柳川 そうですね。洋服を突き詰めたかった、時間をかけてやりたかったっていうのがあるんですよね、ひとつひとつ。細かい修正なんですけど、やっぱりボタン位置を1センチ下げたいなとか、そういう最終的な仕上げの部分に、いつも時間がかけられなかったんですよ。ショ―は、「おっきくやろう」「たくさん見せよう」「40体見せよう」……なんてことになってくるとどうしても最終の詰めが甘くなる。そこを今回はなんとかしたくて、一応30体くらいで、というのでスタートして、結局27体でしたね。
祐真 思い切りましたね。デザイナーっていっぱい見せたがるのが普通だもんね、みんな。色ちがいも全部出して、みたいになっちゃうでしょ。そういうところから今回は脱皮した、っていうと言い方よくないか。ちょっとこう、変わったわけですね。
柳川 そうですね。
祐真 服を良く見せるためには絞り込んだほうがいい、っていうのは明快ですね。で、そんな段階に入りつつ……東京終わっちゃうんですか?
柳川 コレクションはちょっとお休みしようかな、と。お休みっていうか、コレクションはアレかな、と思って。実際問題、今のルーティンだとパリの展示会が終わってからの2カ月、ウェイティングの期間が入っちゃうわけで、その時間があまりにも勿体ないなと思うんですよね。1月の末でもう終わってるわけじゃないですか、パリ。ある程度の世界観はそこで作っておきながら、その後の2カ月はなんかこうショーのためにゆっくり使ってるってのが勿体ないなと思えてきたんです。そこを有効に使いたい、っていうのが東コレをやめる一番の理由なんですよね。
祐真 そうすると、パリでコレクションをやる、ということでもないの?
柳川 いや、それはまだ全然……未定です。
祐真 展示会は今まで通り?
柳川 はい。ちょっとパリで頑張ってみたいなと思いますね。
祐真 そっかぁ……でもやりたくなるんじゃない? ショー。
柳川 いや〜、なると思いますね。ショー、めちゃめちゃ好きな人間ですから。今もう既に寂しい気持ちありますよ。もうやんないのか〜……とか。自分のショーが終わった後に、ひとのショーを2本観たんですけど、そんときにもうなんか、切なかったです。ああ、いいなぁ〜みたいな。
祐真 でしょ? やっぱりショー好きだもんね、荒士くん。ショーの最後、エンディングの出方で分かるよね(笑)。ああ、このひとは好きなんだな、って。
柳川 (笑)元ボクサーっていうのも、あるんですかね。
祐真 あれ、かなり、“Winner” 的な挨拶だよね(笑)。チャンピオンベルトで出てきそうな。
柳川 「やるなよ!」って言われるんですけどね。「最後はやるなよ!」って。
祐真 今回はストールが最後に落ちちゃったのが残念だったね。気がついた? あれ。
柳川 気がつかなかったです。
SUKEZANE Tomoki|祐真朋樹
個人的にも「欲しいもの」盛りだくさんだった今回のコレクション。
興味のあるアイテムについて、あれこれ詳しく訊いてみた。
祐真 (写真右|ルックを見ながら) これはおもしろい組み合わせですね。ブルゾンと、クロップト。ちょっとジョッパー?
柳川 はい、サルエルみたいな感じですね。
祐真 で、ハンドウォーマー。
柳川 これはもう、完全にマスミ(注:スタイリストの坂元真澄さん)の提案ですね。これは、いま祐真さん目に留めてくださったけど、結構闘ったコーディネートなんですよ。僕は今回はひとつも嫌なルックがないようにするっていうか、すべて自分自身納得したルックでいきたい、って思ってたんで。
祐真 もめたの?
柳川 もめたっていうか、意見の食いちがいですね。でも最終的には納得して使ってもらいました。
祐真 こうやって見ると、オレンジきれいだね。印象に残ります。靴はどこで作ってるの?
柳川 国内です。あ、ジョージ・コックスとのコラボレーションもあって、それはイギリスですけど、ほかはもう、ほぼ国内で作っています。最初にオリジナルの木型を作ったんですね。で、そのイギリスの型を使いながら、ソール替えたりアッパーにキルト付けたりデザインを替えたり……。
祐真 元のラストは、イギリスで作ったの。
柳川 いや、ちがいます。僕の一番好きな古い靴を持って行って、それを抜いてもらいました。ちょっとそれも甲が低すぎるんで、日本人用に直してもらったりして。
祐真 それ、エドワードグリーンとか、そういうとこの?
柳川 ちがいます。靴屋さんに訊くと結構有名な昔の木型だとは言ってましたけど、僕も知らない名前でしたね。タッセル付きのスリッポンだったんですけど、すっごいシャープでワイズも狭くて、細長いんですよ。
祐真 へえ。このコートは?(写真右|ルックを見ながら)
柳川 これはナイロン。
祐真 へえ。でもナイロンっぽくないっちゅうか。
柳川 形はさっきの、フラノでやってたやつと一緒なんですけど。
祐真 これも良かったね。で、なんかボトムのアクション、多いじゃない? そういうのはなんか考えてのことなんですか?
柳川 まぁ、うちはジャケットが多いんですが、テーラードってなかなか制限もあるし、ダイナミックにやってもおもしろさってなかなか出せないじゃないですか。で、僕なんかはもう自分の好きな格好が「細いパンツにジャケットスタイル」っていうのなんで、それを毎回入れながら、それにどう変化をつけていくかってことを考えるわけです。するとクロップト丈なのか、スパッツみたいに極端に細いものなのかみたいなところの勝負になってくるんで、なんかこう、思い切りの良さを下半身で出したほうがいいかな、と思って。
祐真 ショー全体では何パターンくらいのボトムを作ってるの? 5種類くらい?
柳川 クロップトも入れて、5〜6種類くらいかと思います。サルエルとか入れると、6種類くらいかな。
祐真 多いね。パンツが多いとスタイリングしやすいよね。
柳川 そうですよね。で、今まではもっと多かったです。
祐真 コートの上にベルトっていうのも好きなの?
柳川 まぁこれなんかはボリューム感がありすぎるので、ちょっと絞ってもらいたいってことなんで付けたんですけど。これは「ボロックス」ていう、後ろにスラングみたいなのを入れて……。
祐真 「ボロックス」ってどういう意味?
柳川 「ボロックス」って悪い言葉で「睾丸」の意味らしくて、ロンドンの若いやつらが使うみたいです。そういうのを、トレンチコートの真面目そうなモデルに着せてやるのがおもしろいなって。
祐真 真面目だよね、トム。フランス人。で、これは前開けてるんだね。
柳川 多分シャツ見せたかったんでしょう。ちょっとね、写真がいいのがなかったんですよね。
祐真 ああ、なるほど。キャメルとグレーというのは……好き?
柳川 好きです。とくにキャメルはすごい好きなんですけど、なかなか受け入れてもらえないですね、セールス的には。
祐真 ずっと言ってるよねー。
柳川 でもず〜っと、やっぱり作りつづけていますね。トーンひとつで全然変わってくるじゃないですか、キャメルも。すごくおもしろかったのが、壮一郎(注:soeデザイナー・伊藤壮一郎さん)もキャメルのチェスターフィールド作ってるんですけど、彼は赤寄りなんですよ、キャメルが。で、僕はグレー寄りなんです。これは決定的なキャラクターのちがいだなと思って。「あ〜、こっちの色出すんだ、こいつは」って思って。でも彼の展示会でトータルに見ると、やっぱり赤寄りのキャメルで正解なんですよ。なんかキャメルっておもしろいなーって思って。
祐真 キャメルはいいですよね、今の時期のスプリングコートとかとくにね。まぁトレンチもふくめてね。ダークスーツの上でもね。キャメルは着たほうが格好いいんだよな。……これも(キャメルのコートに、黒革パンのルック)、ずいぶん思い切って、革パンでキテますね。胡散臭くならないようにしてあるんですね。(ラックに掛かっているトレンチコートを見て)あ、あるじゃん、キャメルコート。これ、バーバリーだね、生地。
柳川 そうですね。バーバリークロスって言って、バーバリーとおなじような織り方をした高密度のギャバジンをそういう名称で売ってるんですよね。
祐真 一緒だもん、これ。俺がロンドンのバーバリーで作ったのとおなじ生地だよ。いっくら言っても袖を細くしてくんなかったやつ。「この太さじゃないとバーバリーである意味がない」って。
柳川 へえー。かっこいいですね、そのこだわり。
祐真 スーツの上に着なきゃダメだから、細くしちゃダメだって。(トレンチコートを着てみて)いいね。
柳川 定番の形です。素材と色を変えて、毎年出してます。
祐真 うん、いいじゃん。
柳川 バーバリーでも、キャメルっていうかこのベージュ、結構いっぱいありますよね。
祐真 ある! ものすごい種類があり過ぎて、選ぶときに分かんなくなる。
SUKEZANE Tomoki|祐真朋樹
ひとまず東コレの舞台からはさようなら、のJOHN LAWRENCE SULLIVAN。
でも今後の活動からは、ますます目が離せません!
祐真 6月にはまたパリで展示会やるんだよね。
柳川 はい。そう考えてます。しっかりやるのか、インスタレーションとかができるようになってからやるのか、継続でやってくのか……やり方が固まっているわけじゃないんですが、でも1回穴あけると、もうパリの場合は売れなくなる可能性もあるわけで、がんばって継続したいとは思ってますが。
祐真 なるほどね。まぁ、詳細は考え中、ってことですね。
柳川 時間ないんですけどね、6月末ですから。いちばんここがタイトなところです。ここをスキップして次をしっかりやるというチョイスもあると思うし。
祐真 なるほど。じゃあ今何やってんの?
柳川 今、2011年の春夏の生地の仕込みをやってます。とりあえず6月末に行く予定で動いてるんで、GW前までに全部出さないと。
祐真 頭ん中はすでに来年の春夏なわけね。
柳川 ですね。まぁ秋冬好きですけどねー。やっぱいろんな素材、いろんな糸から作れるんで。春夏はやっぱ、難しいですね。毎回思いますけど。
祐真 なんかあんまり、洋服のこと考えないもんね。春とか夏って(笑)あんまり暑くなると、もうどうでもよくなるもんね。
柳川 同じようなもの着るようになってきますもんね。
祐真 だよね〜。で、次のシーズンの具体的なイメージとかってありますか?
柳川 やっぱり春夏なんで、快適な洋服作りっていうのはすごく考えてます。着やすさとか軽さとか。今まではあんまりそういうことを考えて物作りしてこなかったんですけど、来春夏はそういう要素を少し入れてますね。後はJOHN LAWRENCE SULLIVAN「らしい」、なんというか、スポーツテイストとテイラードのミックスみたいなものを、ちょっと強く押し出せればいいかなーと思ってます。
祐真 なるほどね。東京でのショーがなくなるのは寂しいけど、それもまたJOHN LAWRENCE SULLIVANに取っては一歩前進、ってことなんですよね。6月のパリ、楽しみにしてます!
柳川荒士|YANAGAWA Arashi
1975年3月17日広島生まれ。4年間プロボクサーとしてリングで活動後、独学でデザイナーを志す。
2003年 JOHN LAWRENCE SULLIVANスタート
2007年SSシーズンより、東京にてランウェイショーを発表
2008年2月 東京・中目黒に、フラッグシップショップをオープン
2009年SSシーズンより、パリへ進出