GRIFFIN|自らのスタイルを貫きつづけて──ジェフ・グリフィンインタビュー
GRIFFIN|グリフィン
自らのスタイルを貫きつづけて
アウトドアやミリタリーなどタフなユーティリティウェアを、コンテンポラリーに解釈し独自のアーバンスタイルへと生まれ変わらせる「グリフィン」。そのデザイナー、ジェフ・グリフィンに今シーズンのテーマ、とりわけ“アーカイブの参照”について話を聞いた。
Text by OPENERSPhoto by TAKADA Mizuho
顧客からのフィードバックもまたブランドを進化させる
──グリフィンのウェブサイトは充実していると聞きます。そこではエンドユーザーとのかかわりが深まっているそうですね。
以前はパリでキャットウォークショウをやっていたんですね。その際に心配だったのは、バイヤーとインターナショナルなプレスとしか、コミュニケーションする機会がないのではないかということでした。そこでインスタレーション形式に変えたのですが、消費者側にもっとアプローチできるようになったと思います。そしてウェブですが、そこにネガティブな要素があるとは思いません。ウェブショッピングというのは“リテール(小売り)”としての役割よりも、消費者に近いところにあるという意味が重要なのだと思います。
ウェブでは、現在ムービーを載せたりしていますよ。ショップへ行くと服だけを見て買うかどうかを判断することになりますが、ウェブでは言葉の壁も越えて、素材の開発や服の背景などを感じてもらえます。窓口も広がっていいことだと思っています。
私自身、インターネットについてはフェイスブックやツイッターなどソーシャルネットワーキングの活用をしています。ブログも並行してやっていますしね。自転車をデザインしているので、それについての動画をサインアップしてくれたひとには、抽選で自転車をプレゼントしてるんです! コミュニケーションの幅は広がっていますね。そうそう、自転車プレゼントの件はアメリカのファッション系サイトに取り上げられて、1日のヒット数がものすごいことになりました。
インターネットが広がる前には、大きな広告予算をもっているメガブランドと、どう“戦って”いくかも課題でしたが、インターネットが一般化してくれたおかげで、そうしたブランドとも対等に渡り合うことができるようになったのはいいことですよね。
──今回のコレクションではアーカイブからの“復刻”が大きく取り上げられていますが、その意図するところはどこにあったのでしょうか。
ウェブサイト上でのフィードバックあってのことなんです。もう10年以上も前からグリフィンを買いつづけてくれている顧客から、「もうあのデザインはやらないのか?」と以前に出したデザインをリクエストされることが何度もありました。私としては前に進むということも重要だと思うのですが、これだけ長くやっていると一度振り返ってみて、過去のものを掘り出してみるのもまた面白いんですね。
日本のマーケットはいまドメスティックなブランドが強いのではないですか。そんななかで、イタリア生産の高いクオリティといった、私たちのブランドの良さを思い出してほしいということもあります。
服の背後にある“ストーリー”というものが大事です。消費者の目が肥えてきたという意味では、価格も重要なポイントになってきています。ただ、ものの価値と見合ったプライスをもつ、バランスの良い商品を世に出していくことが大切なのではないでしょうか。消費者は決してバカではありません。偽物はいらないのです。本物のストーリーをもった商品ならば欲しいと思うはずです。
──具体的にはどのようなアイテムが復刻されたのでしょうか。
たとえば、アーチバックトラウザーズはグリフィンの製品としては、10年前にはじめて日本に紹介されたものですが、いま見てもじゅうぶんすばらしいと自負しています。当時は登山にはまっていたのでこのデザインが生まれたかたちですが、今回はイギリスでウォーキングの際に身に着けられることの多い、コーデュロイをマテリアルとして使ってみました。
しかし伝統的なコットンコーデュロイではありません。イタリア生産のナイロンを裏に貼ることで、2色使いの効果を生み出せます。それをつくっているのはハイブランドを多く手掛けているクオリティの高い工場なのですが、そこでストリートの匂いのするカジュアルをつくっているわけです。私はいつも“両極”をミックスするということをこころがけているので、このアイテムはそうしたスタンスを代表するアイテムと言えると思います。
10年前に発表したときにはコピーが多く出回ったので、いったん生産を取り止めたのですが、いまではコピーも見かけなくなったので、もう一度コレクションにくわえてみました。私たちのウェブでこのパンツを穿いたときの様子を載せているので、ぜひ一度見ていただきたいですね。
USMCというパンツも人気があって、今回再登場させています。このパンツはシェイプがすばらしい。アイディアソースになっているのは、アメリカ海軍の作業着である“つなぎ”です。だから股上が深くなっています。
日本ではドメスティックブランドの人気が高いということですが、それはおなじようなものが多いということことだとも言えるのではないでしょうか。そんななかでは、現状をフォローするのではなく、私のスタイルはこれだと強く主張して、自らのアーカイブから掘り起こしたものを自分のスタイルとして紹介していきたいのです。
Jeff Griffin|ジェフ・グリフィン
1967年生まれ
1988年 - 1990年 セントラル セント マーチンズ スクール オブ アート、ファッション デザイン科に在籍、アートの修士号を取得
1990年 イタリア、GMV Gian Marco Venturi を手がける
1991年 - 1992年 リトルイタリーファミリー、T/Aボヤージ、GIAN MARCO VENTURE、VALENTINO、18-18、フェレ、アメリカニーノの仕事を手掛ける
1992年 ロンドンに戻りVoyageを手がける
1993年 GRIFFINをスタートさせる
スタイル
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