祐真朋樹|かっこいい男の定義 第4回 ファッションフォトグラファーNick Knightを語る
祐真朋樹|かっこいい男の定義
第4回 ファッションフォトグラファー ニック・ナイトを語る
はじめてかっこいいなと思った写真集
──第3回の操上和美さんのコメント、とてもすばらしかったですね。内容に感動したので、知り合いのスタイリストに「ぜひ読んで」とメールしてしまいました。
祐真朋樹 本当にありがとうございました。うれしい。励みにします。
──さて、次の「かっこいい」はなににしましょうか。
祐真 う~ん、なにがいいかなぁ。
──せっかく操上さんにコメントもいただいたので、写真つながりってどうですか。
祐真 写真ね、写真集を見て初めてかっこいいなと思ったのはアービング・ペンかな。18、9歳の京都時代ですよ。高校を卒業してアルバイトをしていた先のクラブに美大の学生がいたんですよ、スタッフとしてね。それでヨーゼフ・ボイスの話なんかしているわけ。当時83年ぐらいですよ、ボイスやジャン・ミッシェル・バスキアなどを筆頭に、パフォーマンスアートとかコンセプチュアルアート、グラフィティアートが注目されていた時代で、まだ「パフォーマンスする」みたいな言葉の使われ方をしていたころです。
それで、ちょっと気になって本屋へボイスの本を買いに行ったら、その横にいくつか写真集が並んでいて、「こっちのほうがカッコイイじゃん」と買ったのがアービング・ペンの写真集。
──どこに惹かれたんでしょうね。
祐真 まず表紙に惚れました。なかのページからもファッションが伝わってきた。それだけですよ。
──それから写真集は買いましたか。
祐真 21歳の時に東京に出てきて、ON SUNDAYSに行くわけですよ、足繁く。それできちんと買うようになりましたね。
「これ誰が撮ったんだろう?」って思わせる写真
──いま、気になるフォトグラファーって誰ですか?
祐真 いろいろいるけど、ニック・ナイトには憧れますね。写真そのものはもちろん、やっていることを含めてかっこいい。
──ニック・ナイトは、上の写真は「Paris Vogue」の特集ページですが、「Dazed & Confused」や「i-D」、「The Face」、「Visionaire」など恐ろしいほど活躍しています。祐真さんは雑誌を見るとき写真家のクレジットとかチェックします?
祐真 おっ、これ誰だ?というときは見ますね。だけどここ数年、ページをめくっていて目が止まるのはニック・ナイトが多いかな。
──どこにハッとするんでしょう。
祐真 まずあまりワンパターンじゃない。世に認められているファッション・フォトグラファーって、「この写真はあの人が撮ったんだな」というカラーがありますよね。ある意味、マンネリでわかる。
でもそれは撮影を依頼するクライアントやエディターたちも分かって使っている確信犯だからね。カラーがあるというのはオリジナリティが確立しているということでもあるし、確かにそれは偉いことなんだろうけど、言わせてもらえばマンネリだよね。それとこれだけ雑誌や広告など媒体が多いと、露出も多くなって、それほどありがたいと思えない。
──いわゆる大御所や巨匠は、「見ればわかる」という安定感はありますよね。クオリティが高くて常に安定しているというか。
祐真 その点、ニック・ナイトはすごいなと思うわけですよ。雑誌や広告キャンペーンを見ていて「これ誰が撮ったんだろう?」って思わせるからね。それで、「彼の中では、これもアリなんだ」って思わせてくれる。それもおもしろいね。
自分の私生活がすべて
──確かに、クオリティは高いのに、引き出しもすごい。
祐真 おなじことを繰り返していないし、被写体に対してどう自分を表現するべきかという部分を、彼はすごく紳士的に取り組んでいるような気がする。
──巨匠になると、スタイルがイコール、ビジネスになりますよね。
祐真 いや、それはビジネスになればいいんですよ。だけど日本で法外な値段でTシャツを売るとかね(笑)、そういうのはちょっとちがうんじゃないかって。
──まわりのスタッフの考え方もあるんでしょうけど。
祐真 でもそういうスタッフを選んだのも本人だから。
──そういう点でもニック・ナイトには、スタイル+ビジネスという匂いがあまりしない。
祐真 写真で勝負しようというのが伝わってくる。彼自身の存在や姿勢そのものがスタイルとなっているのが格好いい。
僕はよく言うけど、自分の私生活がすべてだし、よそいきの格好をしてそれがクリエイションになるとは思わないし。ニック・ナイトはそういう意味でもすばらしいですよ。厳しいひとだと思いますよ。