中田英寿、ジョンロブの職人と対峙する|JOHN LOBB
フランソワ、「祇園ない藤」で装履(草履)をオーダーする(4)
「草履は“場を作る履きもの”です。日本は靴を脱いで家に上がる文化で、玄関で草履を見ると何の用事で来たのかがわかる、今日はどっちが主役かがわかる履きものです」と、「祇園ない藤」5代目主人の内藤誠治さん。「だから、うちの好みではなく、誰がどんなときに履くのかを聞いて、私たちが提案します。フォーマルな場で履きたいなら、それにふさわしいものをつくりますが、お客さまも丁寧に大事にしたい気分が出てくるものです」。
フランソワ、「祇園ない藤」で装履(草履)をオーダーする(3)
世界最高の靴をつくるジョンロブの職人と、日本最高の草履(ぞうり)をつくる「祇園ない藤」の内藤誠治さんを、僕が仲介することで、なにかあたらしい出会いになれば ── 日本の47都道府県をめぐる旅を通じて、日本には世界に誇れる技術や文化があることを再発見した中田英寿さんならではの思いが実現したのが今回の京都訪問だ。
フランソワ、「祇園ない藤」で装履(草履)をオーダーする(2)
ジョンロブの“マスターラストメーカー” フランソワ・マドニーニ氏と中田英寿さんが訪れた京都「祇園ない藤」の足の採寸は、客と職人が対話を始める大切な準備で、その採寸から生まれるのは、“足裏が酔う”フィット感 ── 普段は足の採寸をしているフランソワが、今日は逆の立場になって、素足を採寸台にのせる。
フランソワ、「祇園ない藤」で装履(草履)をオーダーする(1)
中田英寿さんの橋渡しによるフランスと日本の職人の出会いがいよいよ実現 ── ジョンロブの“マスターラストメーカー”フランソワ・マドニーニ氏が大阪でのビスポークオーダー会を終えた翌日に訪れたのは、京都を代表する老舗履きもの匠「祇園ない藤」。はじえて京都に来たフランソワ。5代目の内藤誠治氏がにこやかに出迎えてくれた。
1863年にプリンス・オブ・ウェールズのために靴を製作し、1866年にロンドンに店をオープン。そして1902年にパリに進出し、1976年にエルメスグループに入ったジョンロブ。既製靴(レディーメイド)の工場はイギリス・ノーサンプトンにあるが、誂え(ビスポーク)はすべてこのパリのアトリエで製作される。
150年以上にわたってビスポークの靴を作りつづけているジョンロブ。その伝統的な技術は、今日にいたるまでビスポークにはもちろん、既製靴(レディーメイド)にも脈々と受け継がれている。とくにビスポークは、1足の靴を作るのに、高い技術をもったパリのモガドー通り32番地にあるアトリエの職人たちが、約50時間をかけて創り出していく。
舞台は東京からパリへ──パリの中心部、モガドー32番地にあるジョンロブのビスポークアトリエで、中田英寿さんのビスポークの“トライオンシューズ”のフィッティング(仮縫い)がおこなわれた。日本でのメジャーメントから約2カ月。通常のビスポークよりかなり早いタイミングだが、中田さんの「ぜひ、パリのビスポークアトリエが見てみたい」という希望と、スケジュールを調整することで実現した。
パリの中心部にあるジョンロブのビスポークアトリエで、中田英寿さんのビスポークの“トライオンシューズ”のフィッティングがおこなわれた。フィッティングに沿って作成された仮縫い状態のトライオンシューズを実際に履いて、さまざまな角度からチェックされ、最後に「ステッチは黒に」と注文してトライオンを無事に終えた。
現役を引退後、世界約90カ国、150以上の都市を3年間かけて巡ったという、中田英寿さん。そして彼は、“ReVALUE NIPPON”と称して、日本全国を巡る旅をスタートさせた。旅を通じて、職人の手仕事を目の当たりにし、日本には世界に誇れる技術や文化があることを再発見した中田さんが、「場所はちがえど、職人のものづくり精神の根底にあるものはおなじ」と、前々から興味を抱いていたジョンロブのビスポーク(フルオーダーシューズ)に挑む。
中田英寿さんの左足親指の骨がもつ特徴にたいして、ジョンロブの“マスターラストメーカー”であるフランソワ・マドニーニ氏も、同様の悩みをもっていたことで、理解が早かった。採寸を終えて、次なるステップは、デザインの決定だ。今回のビスポークに臨むにあたって、「ジーンズに合うきれいなローファーが欲しい」と、中田さんは語った。
ジョンロブ・パリのビスポークアトリエにいる、約20名の職人のなかでも、3人のみがもつ“マスターラストメーカー”をあたえられたフランソワ・マドニーニ氏。日本国内で年3回おこなわれる「ビスポークオーダー会」のために来日する。
ジョンロブ丸の内店でのビスポークのメジャーメント(採寸)が一通り終わった。「トライオン(仮縫い)は、パリの工房でお願いできませんか。ジョンロブの工房を実際に見てみたいし、職人たちの顔も見てみたい」と中田英寿さん。ジョンロブのマスターラストメーカーであるフランソワ・マドニーニ氏にも興味をもち、「彼と日本の職人をつなげる役割を果たしたい」と語る。
ジョン ロブ ジャパン
Tel. 03-6267-6010
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