ボーダレスなデザインを目指して(後編)
Fashion
2015年1月29日

ボーダレスなデザインを目指して(後編)

BROWN BUNNYデザイナー家森政昭インタビュー

ボーダレスなデザインを目指して(後編)

いままでなかったスタイリッシュでリラックスできるルームウェアやヨガ ウェアなども展開し、その着心地の良さからおおくのファンをとりこにしているアンダーウェアブランド“ブラウンバニー(BROWN BUNNY)”。
ひきつづきデザイナーの家森政昭さんに、ブラウンバニーの今シーズンの特徴、そして今後の展望についてお話をうかがったインタビューの最終回。

Text by OPENERSPhoto by Jamandfix

今シーズン(09年春夏)の特徴を教えてください。

今シーズンは、"light,light,light(ライト、ライト、ライト)"というテーマを設けてやっています。

昨年(08年)の8~9月くらいから世界情勢も含め、どんよりしてきているので、なるべく気持ちの部分で暗いイメージは避けたいかな、と。

心の豊かさという意味で、気持ちの部分で明るい気分にさせるのも洋服の要素のひとつだと思っているので、軽量で(light)、色合いが明るく(light)、なおかつ軽やかな着心地(light)の洋服によって、気持ちの部分で明るくなるのもありなんじゃないかなと思ってデザインしてみました。
だから、ナイロン素材のアイテムや麻素材のアイテムも出しているのですが、麻は素材にバイオウォッシュをかけてさらに軽量化させ、とろみ感を出して、軽さと柔らかさを出しています。

ナイロンに関して言えば、色が派手な感じのものが多いですよね。シルバーや青の光沢素材を使用していたり。

そうですね。
ジャージの明るいものはなかなか着にくいですが、アウターとして着るものとしては明るくてもいいかなと思って、色を選んでいます。

ブランド立ち上げ時にボクサーパンツの色数を多くした理由も、色が精神に与える影響をすごく意識していたんですよ。"明るい色を着たら明るい気分になる"という心理学的な考え方なんですけれど、それをウェアにも取り入れてみようと思い、色数を増やしたんです。

ちなみに光沢感があるナイロン素材のコートは撥水加工を施しているので、春先に降る軽い雨程度だったらそのまま着ていられる明るいレインコートというイメージで作りましたね。

初期の頃から比べるとかなりカラフルになりましたよね。デザインも増えていったと思います。
デザインを増やしていくことに関して抵抗感というのはありましたか?

すごくありましたね。正直なところ、いまもあります。
自分のなかでは、ずっとジャージとアンダーウェアでいくのがウチらしいとは思うんですけれどね。

定番モノもマイナーチェンジは、どんどんされていますよね。

表面的な大きな変化よりも、どんどん深く、快適になるような改良は毎シーズン続けています。ただ定番モノとしての新型も出していきたいと思っていますよ。2~3年経ったら着られなくなってしまうものではなく、ずっと愛され続けるもの──ボク自身、最初のシーズンのジャージをいまでも家で使用しているのですが、あらためて着用感や、耐久性、普遍的なデザインに、自分でもいい物を作ったな、と思いましたよ。

前シーズンのモノだからとか、そういう部分を感じないのって必要ですよね。

それが"BrownBunny"の良さだと思うんですよね。もちろん、ボクらもシーズンごとに新しいアイテムを増やした時のお客さんの反応を見てみたいという欲求はあります。ただ、アイテムが増えてもブランドコンセプトを揺るぎないよう固めているので、その枠内であれば、基本的にはシーズンレスでボーダレスなアイテムになると思っていますね。

いまもそうですけれど、今後もより、スポーツとファッションとが密接になっていくと思うんです。動きやすさとか、着心地の良さというのは、今後より大切なエレメントになってくると思いますね。ファッションの世界ではモードがスポーツに近づいてきているなとすごく感じますし、逆にスポーツがモードに近づいている。

僕らは、その中間みたいなところでやっていければいいかなと思っています。

生地に化学繊維を使用することに抵抗感を覚える人がいると思うのですが、そういう人たちに向けた新たなアプローチは考えていますか?

ブランド立ち上げ時は、機能性(伸縮性)とミニマムなデザインを同軸上で表現したいという思いから、あえてポリエステルにポリウレタンが入った化学繊維のアンダーウェアの素材でスタートしたんです。吸水速乾性に優れ、蒸れにくいという売り文句があったのですが、最初は抵抗感を持たれましたよ。いま、取引させていただいているディーラーの方々の中にも、話をさせていただいたときは「化繊はうちのお客さんは違うんですよね」ってなりましたしね。化繊を受け入れるディーラーさんも少なかったです。

でもアンダーウェアなんて、やりつづけてリピーターを付けていくことだと思うんですよ。購入していただいて、実際に着用してみて「いいものだ」と判断すれば、次も絶対購入していただけると信じていましたので、受け入れられるまでにしばらく時間が掛かるだろうとは思っていました。ただし、一回でも着用していただければ、リピート買いしていただける! という絶対の自信はありましたね。

いま、ようやくそうなり始めていて、ディーラーさんからディーラーさん、お客さまからお客様へという感じで口コミで広がりはじめてきたと思います。だけど、そうなってくるとボクも天の邪鬼なので(笑)、次のシーズンからは綿100%のTシャツを展開することにしました。

それは『giza45』というエジプト綿の中でも希少種とされる超長綿の一種で、世界でも最高級コットンのひとつなのですが、それがウチらしいプレミアムな素材じゃないかな、と思ってその綿を使用したんです。

“スーピマ”とか“スビン”とか良い綿はまだあるのですが、光沢感という面に気品があったので、化学繊維の光沢感というつながりがある方が、ユーザーにとってもスムーズに受け入れてもらえるかなと。小売りさん側の反応もやはり良くて、やって良かったと思いましたね。

それだと年齢幅がひろがりますよね。

アンダーウェアなのでより広い層に受け入れられて、履いてもらって、みんなに愛されてナンボだと思うんですよね。09秋冬からは、綿がメインのアンダーウェアも出していこうと思っていますし、ようやく生産体制とお客様のネットワークがひろがってきて、受け入れられる土壌が出来始めたところだと思いますね。

でも、3年前にBrownBunnyのアンダーウェアを買ってくれた知り合いの方なんて、「そろそろ新しいのを買おうかな」と言ってくれて、「3年ももつのか!」って思いましたよ(笑)。

モノとしての耐久性ももちろんですけれど、普遍的で、長く愛着を持って着れるものを今後も作っていきたいですよね。気に入っていただいて、また購入していただいたときに、「あれっ?こないだのより良くなってる」と思われるアイテムを増やしていきたいです。そうするには、ひとつひとつのアイテムをもっともっと深く掘り下げていかないといけない。

ジャージにしても、アンダーウェアにしてもまだまだ発展途上だと思っているので、もっと深化させていかなくちゃいけないし、一朝一夕でできることではないですけれども、お客様の意見を元にぼくらもモノもどんどんアップデートしていければいいなと思っています。

それは今後の展望も含めての意見ですか?

そうですね。
ボクは"iPhone"の思想には共感していて、それは──初期に買った人も、最近買った人も、ハードはすべて一緒なんです。

例えば、従来の携帯電話は、発売後、半年の間にソフトがバージョンアップしたら、バージョンアップされたソフトが最初からインストールされているじゃないですか? だけど、“iPhone”はそうじゃないみたいなんですよ。

いつ買っても、最初のソフトはバージョン1.0で、つねに新しいバージョンをインストールしたら最新のモノになっちゃう。ハードはいっさい変わらなくても、ソフトがアップデートされれば新しいモノなんだ、という発想に共感できるんです。

BrownBunnyも似たような感じで見た目は一緒に見えるけれど、サイズ感とか素材、混率、色を少しづつ変えていっているんですよね。アップデートによって、どんどん着心地良く、なおかつその時代にフィットさせながら、今後ももっと深化し続けていきたいと思っています。

(おわり)

家森政昭(いえもり まさあき)

BROWN BUNNYデザイナー
1978年生まれ。
2006s/sシーズンより、アンダーウェアを中心としたリラックスウェアブランド「BrownBunny」を立ち上げる。

BROWN BUNNY

           
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