ボーダレスなデザインを目指して(前編)
BROWN BUNNYデザイナー家森政昭インタビュー
ボーダレスなデザインを目指して(前編)
アンダーウェア ブランドとして、ひとつの時代を築きつつある“ブラウンバニー(BROWN BUNNY)”。
現在はアンダーウェアだけではなく、いままでなかったスタイリッシュでリラックスできるルーム ウェアやヨガ ウェアなども展開し、その着心地の良さから多くのファンをとりこにしている。
ブランド設立3年目を迎えた2009年、ブラウンバニーは今後どこに向かうのか?
デザイナーの家森政昭さんに、ブランドコンセプトやオリジナルの生地の開発、そして今後の展開などについてお話をうかがってみた。
Text by OPENERSPhoto by Jamandfix
ブラウンバニーのデザインコンセプトを教えてください。
ご存知の通り、もともとはアンダーウェアからスタートしたブランドなんです。
2006年の春夏がスタートなのですが、当時はいわゆる「ITバブル」が終わってしまったあとで、ストリート系の人気ブランドも淘汰されはじめ、ディオール・オムなどのハイブランドの人気もすこし落ち着いてきて、ファッション業界全体で閉塞感が感じられてきた時期だったんですね。だから、なにかたがう新しいことがやりたかった。
ただ単純に洋服を売っていくよりも、新しい切り口でいこうと思ったんです。
立ち上げ当時27~28歳だったんですが、年齢的にも一通り洋服も経験していて、物質的な満足度よりも、内面的な豊かさを求めはじめた時期だったんですね。
それで次に世のなかにどんな流れが来るのかな?って考えたときに“アンダーウェア”だ、と思ったんです。ファッション的な切り口でやりながら、なおかつ機能性が高いという、ありそうでなかったアンダーウェアを中心としたブランドをやろうと思ったんですよ。
そのときに、肌に一番近いアンダーウェアから、生活に密着した身のまわりのものすべてを心地いいものにしたい、心の豊かさを身近なものから求めたいと思い、ブランドコンセプトを“The Love of Life”としました。
コンセプトを間口を広いものにして、あとからも要素をつぎ込める感じにしようと思ったんです。シャープでスタイリッシュな印象で、なおかつ男性的でもなく、女性的でもなく、それいて清潔感のあるブランドを目指しました。
当時のアンダーウェア業界は、資本力のあるブランド一辺倒な時代から、少しずつドメスティックブランドが出はじめた時期でした。ただ、どのブランドも派手目で、インパクトのあるデザインのものがほとんどでしたね。
だから、ボクらはシンプルだけれど、着心地が良く、普遍的なデザインで、という方向性でやっていこうと思ったんです。
個人的にドコドコのブランドを着ていると思われるのがすごくイヤだったので ──、ブランドロゴを主張するというよりも、ちょっと引いた目で着心地と縫製の良さで勝負しようと思ってはじめました。
最近では柄もののアンダーウェアも増えてきましたが、上品で清潔感を感じさせる、という基準を設け、そのなかで遊ばせてもらっています。
最近はジャージなどの“ルーム ウェア”的なものや、アウターなどもやられていますが、デザイン的に気をつけていることはありますか?
やはり、デザインを主張しすぎないという点ですね。
主張をしすぎない主張というか、できるだけ性別や年齢も関係なく、誰もが着られるボーダレスなデザインを意識しています。その究極が『無印良品』だと思いますね。『無印』のアイテムは、普通なんですけれど洗練されている。でも、それだとあまりにも特色がないモノになってしまいがちなので、シーズンごとに自分なりのトレンド感はとり入れています。
また、ルームウェアとして、着心地の良さ、動きやすさと、着たときのシルエットの美しさの両立には気を使っています。
大げさにいえば、ミリ単位で、シルエットへのこだわりは毎シーズンすごく気を使っていますね。いかにも部屋着って見える服ってあまり必要ないと思うんです。インドアとアウトドアのあいだのボーダーのないデザインを心がけています。女の子が着ててもイケるし、若い男の子から、おじさんが着てもイケる。そんな風に老若男女を網羅できるブランドってあまりないと思うんです。
着ている人自体の個性を引き立てて、結果的にココロの豊かさというか、その人の内面的な部分が引き出るデザインができればいいなと思っていますね。
基本的にノープリントですよね。まずはその部分が誰でも着れるという感じがします。
“着心地の良さ”という部分で、生地はどのように選ばれているのでしょうか?
一番大事にしているのは、肌に触れるときの心地の良さと伸縮性のある素材という点。
アンダーウェアやジャージ等の素材は編み立ての段階から、工場さんと綿密に打ち合わせをしたオリジナル素材を使用しています。
正直、着心地の良さを前面に出しすぎて、コスト的にはまったくハマらない生地ばかりですよ。ただ、それ以上に、やはりお客さんへ妥協した商品を出したくない、出せないという思いのほうが強いですね。
今シーズン(09春夏)からは、チノパンなどの布帛ものも出してみました。それにもポリウレタンを混紡させて、さらにウォッシュをかけることによって、よりストレッチ感を強めた生地を使用しています。
ナイロンブルゾンなどは素材的に伸縮性があまりないので、肩の部分にアクションプリーツを入れたり、可動部に伸縮性のある素材をはめ込んだりして、ブランド全体で動きやすさを意識した商品づくりを心がけていますね。
ニットもカシミア素材の心地よさは捨てがたいのですが、デイリーに着るアイテムとして、はたして最適なのか?と考え、たとえば上質なウールをマーセライズドし、チクチク感をなくして、縫製のないホールガーメント製法で編んだりと、素材だけでなく、技術面でもこだわったモノづくりをしています。
やっぱり、毎日身につけるアンダーウェアからスタートしてるんで、デイリーウェアだからといって、着ていてすぐにダメになってしまうのは避けたいんですよ。
だから、耐久性のある素材で、なおかつ触り心地のいい生地や素材を選ぶようにしています。
家森政昭(いえもり まさあき)
BROWN BUNNYデザイナー
1978年生まれ。
2006s/sシーズンより、アンダーウェアを中心としたリラックスウェアブランド「BrownBunny」を立ち上げる。