ミラノ国際博覧会 日本館内ギャラリー空間と16のプロダクトをデザイン|nendo
DESIGN / PRODUCT
2015年6月26日

ミラノ国際博覧会 日本館内ギャラリー空間と16のプロダクトをデザイン|nendo

nendo|ネンド

ギャラリー空間のタイトルは「colourful shadows」

ミラノ万博 日本館内ギャラリー空間と16点のプロダクトをnendoがデザイン

10月31日(土)まで開催している2015年ミラノ国際博覧会(ミラノ万博)日本館内ギャラリー空間「COOL JAPAN DESIGN GALLERY(クールジャパン デザインギャラリー)」と、そこに展示する16のプロダクトをnendoがデザイン。展示プロダクトは、日本各地の伝統工芸師などとコラボレーションした作品として注目されている。

Text by KAJII Makoto (OPENERS)

不思議な遠近感をつくりだす食卓の風景

ミラノ万博 日本館内のギャラリー空間「クールジャパン デザインギャラリー」は、約11×3mという細長いスペースに、展示台として黒くて長いダイニングテーブルと黒い椅子が24脚設置されている。このテーブルと椅子はギャラリーの奥に進むほど上に引き伸ばされたような形状になっていて、不思議な遠近感をつくりだすとともに、ギャラリーの入口からテーブル上のすべての作品を俯瞰できる。

テーブル上の16のプロダクトは、ミラノ万博のテーマ「Feeding the Planet, Energy for Life」を踏まえて、テーブルウェアやキッチンツールなど“食”にまつわるものだが、ディテールまでは見えにくいので、来場者が興味を抱くことで自発的に展示に近づき、さらに近くで見たい場合は椅子を脚立のように使い、椅子に登って鑑賞することができる。

nendoの佐藤オオキ氏は、「全体としては食卓の風景でありながら、テーブルと椅子の関係の再解釈することで、個々のプロダクトをちがう角度や距離感で見ることができる展示空間となることを考えた」と語る。

nendo|ミラノ万博

nendo|ミラノ国際

繊細な魅力を伝えるため展示品の色をすべて黒で統一

16種の展示プロダクトはすべてあらたにデザインされたもので、それぞれ異なる日本各地の伝統工芸や地場産業とコラボレーションして制作。いずれも素材、質感、仕上げなどの繊細さに、日本のものづくりならではの丹念なプロセスや技術力があらわれている。

「cs001(常滑焼)」は、本六古窯の一つとして知られる常滑焼を焼き上げるときにもみがらで燻(い)ぶして黒くし、吸水性の高い素地の特徴を活かしてコースターをデザイン。質感は砂糖菓子の落雁に似て、型にはめて成形するという製造プロセスも共通することから、落雁によく見られる形をモチーフにしている。

「cs006(高岡銅器)」は、富山県高岡市でアルミニウムをウレタンを焼き付けることでコーティングしたカトラリーで、丸、四角、三角という幾何学的で抽象的であり、シンボリックな形にして、もち手の断面もそれぞれ丸、四角、三角に。こうすることでカトラリースタンドに立てたときもどれなのかがわかりやすい。

nendo|ミラノ国際博覧会 日本館

「cs001(常滑焼)」

nendo|ミラノ国際博覧会 日本館

「cs006(高岡銅器)」

見れば見るほど陰影のなかには極彩色が宿る

「cs014(美濃焼)」は、岐阜県・美濃焼に伝わる割れた器を修復するため糊漆で繋ぎ合わせる「金継ぎ」と呼ばれる伝統的手法と、戦後の日本の高度成長期を支えてきた「現代の匠」の技術を融合することで、まったくおなじ形状の3色の器をカットして繋ぎ合わせ、パターンが異なる3枚の皿に生まれ変わらせた作品。

焼成した器を寸分たがわぬ位置でウォータージェットでカットし、接合のため全体をサンドブラスト加工し、最後に漆で継ぐ。通常の「金継ぎ」は漆の上に金をまきつけるところを、黒漆のみで仕上げていることで、釉薬を塗り分けるのとはまったくちがう佇まいが醸成された。

「cs015(山形鋳物)」は、山形鋳物でつくった急須とカップのセットで、飲むものの温かさを手で感じられるように、把手が器のなかから伸びたテーブルウェアをデザイン。通常は木を組み合わせるなど熱が手に伝わりにくいように工夫するが、発想を転換して素材の特徴をプラスのものと捉えている。

nendo|ミラノ万博

「cs014(美濃焼)」

nendo|ミラノ万博

「cs015(山形鋳物)」

佐藤オオキ氏は、「谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に羊羹(ようかん)を暗闇のなかで食べることで味覚が研ぎ澄まされる話が出てくるが、この展示でも色の情報を削ぎ落とすことで観るひとの意識を色以外の要素に向けたいと考えた。見れば見るほど陰影のなかには極彩色が宿り、まだまだ世界では知られていない日本のモノづくりの魅力に光を当てられるのではないか、という想いから展示作品を『colourful shadows』とした」とコンセプトを説明する。

2015年ミラノ国際博覧会(ミラノ万博)
開催期間|2015年10月31日(土)まで
開場時間|10:00~21:00
会場|イタリア・ミラノ市郊外
ローフィエラ駅(RHO-FIERA)近く
ミラノ国際博覧会 日本館「COOL JAPAN DESIGN GALLERY」

2015年ミラノ万博
http://en.expo2015.org/

2015年ミラノ万博 日本館
http://www.expo2015.jp/

nendo
http://www.nendo.jp/

           
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