“イギリスの歴史といま”を携えてトム・ディクソンが来日|TOM DIXON
DESIGN / INTERIOR
2015年8月6日

“イギリスの歴史といま”を携えてトム・ディクソンが来日|TOM DIXON

TOM DIXON|トム・ディクソン

日本初のオンリーショップをオープンしたデザイナー

“イギリスの歴史といま”を携えて来日したトム・ディクソン

イギリスを代表するデザイナー、トム・ディクソンのオンリーリーショップが東京・青山にオープンした。個人客だけでなく、建築家やコーディネーターの利用も想定したショップは、イギリスの歴史といまを感じさせる、非常に洗練された装いで来店者を迎える。オープンに合わせて来日したトム・ディクソン氏に、自身のクリエイションについて話を聞いた。

Photographs by JAMANDFIXText by SUZUKI Joe

欧州のデザイントレンドを牽引するブランドがはじめて日本に出店

現代のイギリスを代表するデザイナー、トム・ディクソンが日本初のブランドのオンリーショップを東京・青山にオープンした。イギリスの伝統をモダンなかたちで昇華させた彼の家具や照明は、ロンドンのハロッズのカフェなど、最先端の商業施設やパブリックスペースなどでも使われる。

TOM DIXON|トム・ディクソン

TOM DIXON|トム・ディクソン

そうした状況も踏まえ、「日本で最初の店舗なので、一般の方々だけでなく、建築家やコーディネーターの利用を想定した店づくりにした。内装はイギリスの歴史といまを意識している」とディクソン氏は説明する。

異色の経歴をもつヒットメーカー

実はこのデザイナー、経歴が相当に変わっている。1980年代はプロのミュージシャンとしてナイトクラブを経営。クラブでパフォーマンスとして、ステージで金属を溶接し観客の前で椅子を製作していたことが評判となり、デザイナーとして認識されるようになった。こうして生まれた手づくりの椅子は、MoMAのパーマネントコレクションにもなっている。イギリスの家具デザイナーは、大学で建築を学んだ者が大多数だが、独学の彼は異色の存在として紹介されることが多い。

TOM DIXON|トム・ディクソン

そんなトム・ディクソン氏を、即興や才能で家具をつくる人物とおもったら大間違い。1990年代後半は、ヨーロッパの大手家具チェーン「HABITAT(ハビタ)」のクリエイティブディレクター就任し、「実業の世界から大いに学んだ」という。「例えば、椅子だけを売るのは難しいし、キャンドルホルダーだけでも同じだ。ところがそれらが同じ店に並べられると、人は興味をもつんだ」と語る。

このHABITATをはじめ、さまざまなメーカーでビジネス経験を経て、2002年に家具からホームアクセサリーのデザイン、製造、販売までを手掛けるブランド、「Tom Dixon(トム・ディクソン)」をスタートさせた。「それまでのデザイナーは、大企業にデザインを提供するだけだったから、僕の行動は、あたらしいビジネスモデルとして認識され、追随者を生んでいる」と話す。

「トム・ディクソン」ブランドの代表作に、「Wingback Chair(ウイングバックチェア)」がある。「伝統的なイギリスのジェントルマンズクラブで使う椅子のデザインを頼まれたのがそもそも」だったとか。

背もたれの頭の両側が羽のように張り出した椅子はいかにも英国的。ただしフォルムはモダンだ。しかも、倒れそうで倒れない絶妙なバランスが面白い。

TOM DIXON|トム・ディクソン

ヒット作の照明「Beat Light(ビートライト)」シリーズは、彼がインドに出かけた際に目にした、真鍮をハンマーで打って成形する、伝統的な技術をもちいたもの。「インドはかつて、大英帝国の一部だった。デザインをする際は、イギリスらしさも意識する」と言う。その背景にあるのは、流行にとらわれず、家具や照明を何十年も使用する同国のライフスタイルだろう。

TOM DIXON|トム・ディクソン

TOM DIXON|トム・ディクソン

トム・ディクソン“デザイン”の本質がわかるオンリーショップ

いまやディクソン氏の事務所は、95人ものスタッフを抱える大所帯。近年は家具デザインだけでなく、インテリアを手掛けることも多い。昨年開業したロンドンのモンドリアンホテルは、船会社の施設として使われた歴史にイギリスの伝統を加味した内装で、大きなニュースとなった。

TOM DIXON|トム・ディクソン

TOM DIXON|トム・ディクソン

オープンを前にしたレセプション時には、おなじ英国ブランドでもあるロールスロイスの“トム・ディクソン”特別仕様車も登場。また、デザイナーの奥山清行氏もレセプションに駆けつけ、「トム・ディクソン氏のプロダクトは、素材の魅力を最大限引き出しているのが特徴。そんなブランドを存分に味わえるショップがここ東京にできたことを嬉しく思う」と、ディクソン氏への想いを語った。

彼の東京のオンリーショップのオープンは、これまで元ロックミュージシャンとして紹介されることの多かった、いまの英国を代表するデザイナーの本質に目を向けさせる契機となることだろう。

TOM DIXON|トム・ディクソン

Tom Dixon|トム・ディクソン
1959年生まれ。ミュージシャンとして活躍する傍ら、独学で溶接技術を取得し、廃品などを使った家具やオブジェを製作し、20代で注目を集める。イタリアのカッペリーニに見出され、優美なS字曲線を描く鋼鉄の支柱をもつ「Sチェア」を発表。1990年代にはプラスチック素材の可能性を追求し、ポップな作品を多く発表した。以降、世界的なデザイナーとして活躍をつづけている

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